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セッション定番曲その250:Angel Eyes by Matt Dennis

ジャズセッションの定番曲。自ら歌う人が作っただけあって、メロディも歌詞も魅力的です。あまりリクエストされないのがもったいないですね。
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:Matt Dennis

1954年録音。歌手、ピアニスト、作曲家として印象的な作品を残しました。「Everything Happens to Me」「Violets for Your Furs」「The Night We Called It a Day」「Let's Get Away from It All」など、もともとジャズ曲として楽団用に書かれたものが多く、ジャズスタンダードによくある「ミュージカル用に書かれたものがジャズ化した曲」とは一味違う緻密な作りの曲が特徴です。

この「Angel Eyes」もマイナーキーとメジャーキーを行き来する上に、ドラマの一部を切り取ったような歌詞がのっていて上質です。ボーカリストとしては派手なタイプではありませんが、上品な雰囲気。


ポイント2:Paul Desmond

1965年録音。西海岸を代表するアルトサックス奏者だったPaul Desmond、実際にすごく人気がありました。この曲もクールな雰囲気の抑えた演奏。Jim Hallのギターも終始クールです。


ポイント3:歌詞のポイント

Try to think that love's not around
But it's uncomfortably near

もう(本物の)愛はここにはない、と自分に言い聞かせようとするけど
実際にはまだすぐ側に残っていて、なんかキモい・・・

My old heart ain't gaining no ground
Because my angel eyes ain't here

俺の心は前に進めないままグズグズしている
俺の大事な「天使の瞳」ちゃんはもうここにはいないから・・・

出だしからなんか愚痴っぽい女々しい歌詞です。「uncomfortably near」だと感じているのは未練があるから。恋人のことを「Angel Eyes」と呼ぶなんてロマンチックだけど、ちょっとねぇ・・・。
「My old heart」は「My old friend」と同じで「ずっと付き合いがある」という意味。ものごころ付いたころから自分の一部である「心(気持ち)」だから当たり前ですね。

Angel eyes, that old devil sent
They glow unbearably bright

俺の「天使の瞳」ちゃん、それは「ずる賢い悪魔」が俺の元に送り込んだ小悪魔だったんだろうか?
その瞳は魅力的で抗えない輝き

「old devil」が背後にいると仮定して、自分の彼女のせいにしないようにと思い込もうとしているのかもしれません。
「unbearably」は「un-bear-abl-y」と分解して発音してみましょう。

Need I say that my love's mispent
Mispent with angel eyes tonight

俺の愛を「天使の瞳」ちゃんに注いだのは無駄だったかもしれない、それは俺も分かっているんだ

「mispent(またはmisspent)」は「無駄に過ごす、浪費する」。

So drink up, all you people
Order anything you see
Have fun, you happy people
The drink and the laughs' on me

俺の奢りだから、みんな何でも飲んでくれ
楽しくやって、嫌なことは忘れようぜ
俺の情けなさを笑ってくれよ

どうも主人公は酒場で愚痴をこぼしていたようです。
「(be) on me」は「料金は俺持ち」という意味。
「drink」だけでなく「laugh」も対象というのが面白いですね。

この「酒場」というのは単なるメタファーで、世の中の人みんなにこの歌で呼びかけている、という解釈もあり得ます。

Pardon me, but I got to run
The fact's uncommonly clear

もうここにはとどまっていられないので、ここで失礼するよ
「事実」は火を見るよりも明らかだ

Got to find who's now number one
And why my angel eyes ain't here
Oh, where is my angel eyes?

これから考えなきゃいけないのは、彼女にとって今だれが「ナンバーワン」なのか、彼女は何故去ってしまったのか、どこにいるのか・・・

最後まで未練タップリですね。どうも他に男の影があることを感じているようではありますが。


ポイント4:曲の構成

AABAの分かりやすい構成ですが、リズム的に攻めたりせずに淡々と演奏されることも多いので、盛り上がり所を意識して作る必要があります。

リードシート例(女性ボーカルキー?)


ポイント5:Sting

1996年の「Leaving Las Vegas」という映画のサントラの中でStingが歌っていて印象的でした。彼もジャズスタンダード曲を沢山歌っていますが、ジャズ専門の歌手とは違う、映像に自然に寄り添うような歌唱*が特徴。

*これは偏見ですが、ジャズ歌手の歌唱を映画やドラマに使うと、取ってつけたように悪目立ちしてしまう場合も多い気がします。それだけ「音楽としての主張が強い」のかもしれませんが。


ポイント6:様々なバリュエーションを聴いてみましょう

Julie London、1959年録音
重厚な演奏にのって気怠く歌うJulie London。いかにも「ジャズボーカル」って感じで好きです。


Kandace Springs、2020年スタジオライブ録音
ピアノを弾きながら、生々しい声で歌うKandace Springs。R&B風味もあって現代的な歌唱です。


Frank Sinatra、1958年録音?
朗々と歌うFrank Sinatra。この曲の物語に合っているかは少し疑問ですが。


Wes Montgomery、1961年録音


Oscar Peterson、1954年録音
出だしですぐに分かる華やかさ。過剰だと嫌う人もいますが、歌いながら自分に伴奏を付けているような演奏ですね。


The Modern Jazz Quartet、1956年録音
この曲の「色々な感情が入り混じりながら、最終的に女々しい感じ」を一番表現している演奏だと思います。


◼️歌詞

Try to think that love's not around
But it's uncomfortably near
My old heart ain't gaining no ground
Because my angel eyes ain't here

Angel eyes, that old devil sent
They glow unbearably bright
Need I say that my love's mispent
Mispent with angel eyes tonight

So drink up, all you people
Order anything you see
Have fun, you happy people
The drink and the laughs' on me

Pardon me, but I got to run
The fact's uncommonly clear
Got to find who's now number one
And why my angel eyes ain't here
Oh, where is my angel eyes?

Excuse me while I disappear



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