セッション定番曲その277:Yardbird Suite by Charlie Parker
ジャズセッション定番曲。ビバップ時代の代表曲のひとつですが、小難しいイメージとは違って意外と親しみやすいメロディ。もちろんアドリブでどこまで料理出来るかが鍵ですが、それを歌で表現している人達も沢山います。
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:Carmen McRae
まじはいきなりボーカル版から。ちょっとゆっくりしたテンポでテーマ(メロディ)〜フルートとのスキャット交換〜メロディフェイクと展開していまいす。短い録音ですが、こういう曲にボーカルで参加する際の要素が詰まっています。
張り切ってテクニックを見せつけようとしてしまうボーカリストが時々いますが、聴く側が期待するのはあくまでも「音楽として成立していて、楽しめるか」。その匙加減が大事。
ポイント2:Charlie Parker
ご本家。「Suite(組曲)」となっていますが、ごく普通のAABA/32小節の小曲です。このあたりは当時のジャズミュージシャン達特有の洒落。
3分足らずの短い録音ですが、テーマの後はビバップのお手本のような「スピード感があってメロディアス」なアドリブ演奏が続きます。参加プレーヤー全員に少しずつ出番があります。トランペットはマイルスだと思いますが、アドリブはまだ爆発力不足?実際のセッション現場ではこの何倍にも引き延ばされたインタープレイが行われていたはず。
Charlie Parkerのアドリブは研究され尽くしていますが、手癖+高速演算で生み出される圧倒的に音楽的に豊かな演奏。
譜面起こしした動画はこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=VjAIpqFo1K0
ポイント3:Karrin Allyson
1995年録音。現代的なボーカルテクニックに興味がある人なら必聴アルバムです。楽器奏者の演奏を徹底的になぞって練習した「楽器的なスキャット」のお手本、ユニゾンも余裕です。
自己満足のスキャットを延々と聴かされるより、こういう楽器との絡みの多い、構成されたアドリブがいいですね。おそらくライブではこの構造を使って長尺のスキャット〜4小節交換が行われていたはずです。
ポイント4:歌詞のポイント
色々なバリュエーションがありますが、後付けで書かれたものなので意味はそんなに深くないものが多いです。下記の例は「なかなか報われない悲哀」を歌ったもの。明るめのメロディとはミスマッチかもしれません。
平易な言葉の連続なので、メロディフェイクには向いているかもしれませんね。
It's hard to learn
How tears can burn one's heart
But that's a thing that I found out
Too late I guess, cause I'm in a mess
「learn」というと「勉強」をイメージするかもしれませんが「~であると分かる」「経験などによって身につける」という意味合いが強いです。
泣いているとさらに心が引き裂かれる
そのことに気づくとさらに辛いね
そして、気づくのも遅すぎた
もうドツボに嵌ってどうしたらいいのか分からない
どうにも絶望的な出だしですね。淡々としているので余計に怖い。
「guess」と「mess」だけ韻を踏んでいます。
My faith has gone
Why lead me on this way?
I thought there'd be no price on love
But I had to pay
「price I have to pay」は「自分が払わなければならない(何かの)代償」という意味で普通の会話でもよく使われます。日本語のニュアンスと近いですね。
愛という行為に値段があるなんて思わなかったけど、ツケを払わなくちゃいけない場面が来た、と。
If I could perform one miracle
I'd revive your thoughts of me
Yet I know that it's hopeless
You could never really care
That's why I despair
「despair」は「絶望(する)」。かなり強い言葉なので、歌う際もここは強調した方がいいです。
「revive」の発音は「riváiv」、短い中に「R」音、「v」音が連続して出てくるので頑張りましょう。この「v」が「b」音になってしまうと聴く側はちょっとガッカリです。
I'll go along hoping
Someday you'll learn
The flame in my heart, dear
Forever will burn
「flame」は「炎/激情」で、だから「burn」。
ここでも「learn」が出てきますね。「私が気付いたこと」との対比で「あなたが気付くはずのこと」を伝えています。
全体的に韻を踏んでいる箇所も少なく、捻った表現や比喩なども少なく、歌詞としてのレベルはそんなに高くないかもしれません。
ポイント5:曲の構成
AABA構成、覚えやすいメロディ。至るところに「2-5-1」が出てくるので、スキャットの際にはそれを活かしましょう。

ポイント6:詳細な解析動画
ポイント7:様々なバリュエーション
Roy Hargrove、1995年録音
ドラムレスのトリオによる歯切れのいい演奏。ピアノとベースの有機的な絡みが現代的。
Sonny Stitt、1966年録音
かつてはバードの後継者と言われた人ですが、ここではゆったりしたテンポで一味違うメロディアスな演奏を聴かせてくれます。ギターはJim Hall。
Tal Farlow、1956年録音
こういう曲がジャズギタリストの腕を聴かせるのに最適だったのが分かりますね。
Eddie Jefferson、1969年録音
「何でも歌っちゃうおじさん」のひとり。独自の歌詞を付けて歌っています。ミュージシャンのエピソード的な内容。
Ponpon、2026年録音
今注目のシンガー&ギタリスト。彼女も独自の歌詞で歌っています。ギターとユニゾンで口笛を吹いているのは彼女自身?
Cyrille Aimeé, Emmet Cohen、2021年スタジオライブ録音
現代のスキャット番長Cyrille Aimeéが暴れまくっています。リズムが狂うからとジャズシンガーに踊ながら歌うことを禁じる教室もあるようですが、是非これを観てください。
Veronica Swift, Emmet Cohen、2020年スタジオライブ録音
ピアノとのデュオ。自由でリラックスした雰囲気。崩したメロディラインに歌詞をのせるのが抜群に上手い。
◼️歌詞
幾つかある歌詞のバリュエーションのひとつです。
It's hard to learn
How tears can burn one's heart
But that's a thing that I found out
Too late I guess, cause I'm in a mess
My faith has gone
Why lead me on this way?
I thought there'd be no price on love
But I had to pay
If I could perform one miracle
I'd revive your thoughts of me
Yet I know that it's hopeless
You could never really care
That's why I despair!
I'll go along hoping
Someday you'll learn
The flame in my heart, dear
Forever will burn!
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別バージョンの歌詞
I sing this song
Hoping you′ll all find out
The man who wrote the "Yardbird Suite"
Leave you no doubt
Tell you about
Charles Yardbird Parker
Was his name, the facts
He carved his fame in history
A sax for his acts
His improvisation was miraculous
Mastermind of rhythm was he
He blew notes that nobody'd
Ever heard before ′til then
Blues they'd never been
So often true
As genius seems to do
He suffered his life through
But gave us the "Yardbird Suite"
