セッション定番曲その258:Old Folks
ジャズセッションの定番曲ですが、ド定番というほどコールされる機会は多くありません。が、この辺をレパートリーにしておくと「おっ」と思われるかもしれません。深い味わいのある歌詞です。
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:Charlie Parker
1953年録音。いかにもムード音楽という感じのコーラスの合間を縫ってバードのサックスがオブリを入れています。メインのテーマをコーラスに任せているので、自由さが際立ちますね。
もともとは1938年に書かれた曲で、Benny GoodmanやBing Crosbyなどもレパートリーにしていた古いジャズ曲でしたが、それ以降のジャズミュージシャンも好んで取り上げてスタンダード化しました。ジャズ曲の元ネタって、その時代時代の「最新ヒット曲」が多いので、「若い世代の恋愛や希望、悲哀」をテーマにしたものが多くて、この曲のように「老人」をテーマにしたものは意外と多くなさそうです。フォークソングにはよくありますが。
ポイント2:Miles Davis
1961年録音。この曲の一番有名なバージョンかもしれません。ミュートされたトランペットの枯れた音が、このちょっと古めかしいメロディに合っています。色々な意見はありますが、マイルスはこういう風に丁寧に、気を衒わずに吹いている時が一番良かったと思います。
サックスはHank Mobleyで、彼の抑えた演奏も良かったですね。
ポイント3:Etta Jones
1963年録音、1940年代から活躍していたEtta Jonesによる、やや古めかしい雰囲気のジャズボーカル。いわゆる「ジャズボーカル・ファン」が好きそうな歌唱だと思います。
ポイント4:Old Folks
Everyone knows him as old folks
「old folks」と複数形になっているので、「Gen Z」などと同様にある特定の層の人達を指す言葉だというのが分かります。厳密には「南北戦争(1861-1865年)に従軍した人達」らしいですが、転じて「時代遅れの古い世代の人達」に向けた表現。
彼(おじいちゃん)が「古い世代」の男だと近所の人達はみんな知っている
というところから歌詞の物語が始まります。
ポイント5:歌詞のポイント
Everyone knows him as old folks
Like the seasons he comes and he'll go
Just as free as a bird and as good as his word
That's why everybody loves him so
おじいちゃんのことを近所の人達は少し離れたところから見ています。もうとっくにリタイヤして自由気ままに生きているおじいちゃん。割といつも機嫌の良い人みたいで、みんなに好かれているようです。
Always leaving his spoon in his coffee
Tucks his napkin up under his chin
And his own corn cob pipe is so mellow, hits right
But you needn't be ashamed of him
ここからはおじいちゃんの仔細な描写。「コーヒーカップにスプーンを入れっぱなし」というのは多分ダサいのでしょうね。同じように「食事の時のナプキンを丁寧に顎の下にたくし込む」のもあまりカッコ良くない、愛用のコーンパイプは年季が入っている。でも、それがおじいちゃんのスタイル。
In the evening, after supper
What stories he would tell
How he held the speech at Gettysburg for Lincoln that day
I know that one so well
夕食の後でおじいちゃんがいつも話してくれる昔話は「俺がゲティズバーグでリンカーンに向かって(あるいは代理で)演説してやったのさ」というホラ話。もうボケているのかもしれませんね。
途中は略しますが、おじいちゃんのホラ話は続き、結局「南軍」だったのか「北軍」だったのかも曖昧なまま・・・
Oh, someday there'll be no more Old Folks
What a lonely old town this would be
Children's voices at play will be still for a day
The day that they take Old Folks away
やがて古い世代の人達はいなくなり、町はちょっと寂しくなります。お葬式の日には広場でいつも聞こえる子供達のはしゃぎ声も聞こえなくなります。
少しユーモアを交えながら、世代がゆっくりと交代していく様を描いた歌詞。しんみりしたバラードとして歌うのもよし、淡々とした物語として歌うのもよし、だと思います。これを歌う「若い世代」も、やがては「古い世代」と呼ばれるようになっていきますね。
ポイント6:曲の構成
典型的なAABA構成。同じ音程が続く箇所のあるメロディが朴訥とした雰囲気で、ノスタルジックな歌詞とマッチしています。

ポイント7:様々なバリュエーションを聴いてみましょう
Lou Rawls
渋い低音が魅力的な歌手。この歌詞の物語にピッタリですね。
Wes Montgomery、1958年録音?
この曲の枯れた感じの地味なメロディがギター向きなのかもしれません。
Carmen McRae、1976年ライブ録音
ストーリーテラーとしての彼女の魅力が溢れる歌唱
Christian McBride, Samara Joy、2025年録音
まだ若いSamara Joyが歌うのも面白いですね。
Chris Botti、2023年録音
現代的なヌケの良い録音。イケメン・トランペッターも年齢を重ねて、燻し銀の演奏をするようになってきました。
◼️歌詞
Everyone knows him as old folks
Like the seasons he comes and he'll go
Just as free as a bird and as good as his word
That's why everybody loves him so
Always leaving his spoon in his coffee
Tucks his napkin up under his chin
And his own corn cob pipe is so mellow, hits right
But you needn't be ashamed of him
In the evening, after supper
What stories he would tell
How he held the speech at Gettysburg for Lincoln that day
I know that one so well
Don't quite understand about Old Folk
Did he fight for the blue or the grey?
For he's so diplomatic and so democratic
Wе always let him have his way
Every Friday hе'll go fishing
Way down on Buzzards Lake
But he only hooks a perch or two, a whale got away
So we warm up the steak
Oh, someday there'll be no more Old Folks
What a lonely old town this would be
Children's voices at play will be still for a day
The day that they take Old Folks away
