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セッション定番曲その276:Good Morning Heartache

ジャズセッション定番曲。Billie Holidayのイメージが強くて「古臭いボーカル曲」と思われがちですが、近年でも様々な人達が歌い、インスト演奏もあります。少しマニアックなスタンダード曲としてレパートリーに入れておきましょう。
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:Billie Holiday

1946年録音。悲劇的な曲がやはり似合いますね。過剰に演じるのではなく、まさに「(自分に)語りかける」ような歌唱。今日的な基準からすると、聴きやすい録音でもないし、歌の真似をするには個性的過ぎるかもしれません。歌詞を捏ね回すような歌い方は好みの分かれるところ。

後述のようにBillie Holidayへのトリビュートアルバムを様々なミュージシャン達が制作していて、彼女のどこを評価/参考にしたかがぞれぞれ違うところが面白いですね。

ポイント2:Ella Fitzgerald

1961年録音。可愛い声で歌っていますが、時々出てくるフェイクはやはり個性的。こっちはバラード歌唱のお手本になるかもしれません。淡々としていながら、感情の昂りをここぞというポイントで強調。

ポイント3:Chris Botti, Jill Scott

2005年録音、リズムも含めて現代的なアレンジ。雰囲気のあるトランペットに続くJill Scottの軽やかなボーカル。こういう古い地味な曲でもこんなアレンジをすれば新しい感覚になるのだという証明。R&B、Hip-Hop、ポエトリーリーディングなどを経由している彼女が歌うジャズスタンダード曲はなんだか軽やかで、歌詞の意味も違って聴こえます。悲劇というより「Heartache」との関係を楽しんでいる余裕を感じます。

よりR&B色が強いライブ録音


ポイント4:歌詞のポイント

Good morning, heartache, you ole gloomy sight
Good morning, heartache, thought we said goodbye last night
I turned and tossed until it seemed you had gone
But here you are with the dawn

毎日毎日やってくる自分の心の痛み、それに語りかけている歌詞です。どうも主人公にはその姿が実際に目の前に見えているようです。

わたしの傷心、またやってきたのね、相変わらず辛気臭い姿で
昨夜もうお別れしたはずなのに、付き纏い続けている
ずっとベッドに入っても眠れない日々
もういい加減にしてよ

「ole」は「old」で「古い、いつもの、相変わらずの」
「turned and tossed」は「寝返りを打ち続けて安眠出来ない」様子

Wish I'd forget you but you're here to stay
It seems I met you when my love went away
Now everyday I start by saying to you
"Good morning, heartache, what's new?"

心の痛みと出会って、付き纏われるようになった経緯。いつしか挨拶までするようになってしまいました。それだけ愛のある暮らしから遠ざかっている、と。

Stop haunting me now
Can't shake you, no how
Just leave me alone
I've got those Monday blues
Straight through Sunday blues

嫌悪感を抱きながら、完全に突き放すことが出来ない複雑な心境。それが何故だが自分でも分からない。もしかすると唯一の話し相手なのかも。

ここでの「blues」は音楽のブルースではなく「憂鬱」そのものです。

Good morning, heartache, here we go again
Good morning, heartache, you're the one who knew me when
Might as well get used to you hanging around
Good morning, heartache, sit down

主人公はとうとう「自分の心の痛み」を受け入れてしまいます。まるで昔からの親友のようだと。次の恋の相手が見つかるまで、一緒にいるの相手は「heartache」だけだと。

「here we go again」は「やれやれ、まただ」とウンザリしながら状況を受け入れる時のフレーズ
「hanging around」は「気を抜いて一緒に過ごす」様子、緊張する相手ではない、と

自分の気持ち(傷心)を擬人化して、終始「独り言」で完結する歌詞です。擬態的な描写もほとんどないので、表現するのは自分の葛藤、緊張、弛緩、諦観。Billie Holidayが真っ先に起用された理由も分かりますね。


ポイント5:曲の構成

AABA 各8小節の合計32小節のバラード。音域/声域もそんなに広くないので、聴かせどころが難しい曲です。淡々と歌っていると、それだけで終わってしまいます。

リードシート例


ポイント6:様々なバリュエーション

Ray Bryant、1976年録音
少しずつ表情を付けながら歌メロを淡々と弾いています。


Cassandra Wilson、2015年録音
Billie Holidayへのトリビュートアルバムからの1曲。とんでもなく重々しいアレンジ。


José James、2015年録音
これもBillie Holidayへのトリビュートアルバムからの1曲。様々な歌唱スタイルを自分のものにしている彼が、敢えて声に良さで勝負した印象です。


Lou Donaldson、1973年録音
ジャズ受難時期の録音で、ブルーノート・レーベルにしては過剰な空間処理が気になりますが、ストレートにテーマ(歌メロ)を吹いています。


Ben Street, Bill Stewart, Lage Lund、José James、2015年録音
ギタートリオに意外と似合う曲だと分かります。


Gladys Knight、2006年録音
ジャズスタンダード集アルバムから。彼女のようにR&Bのイメージの強い人でも若い頃にはラジオから流れるジャズ(ボーカル)曲をい聴いて育ったということでしょうね。歌詞を物語として歌うのが抜群に上手いですね。


◼️歌詞

Good morning, heartache, you ole gloomy sight
Good morning, heartache, thought we said goodbye last night
I turned and tossed until it seemed you had gone
But here you are with the dawn

Wish I'd forget you but you're here to stay
It seems I met you when my love went away
Now everyday I start by saying to you
"Good morning, heartache, what's new?"

Stop haunting me now
Can't shake you, no how
Just leave me alone
I've got those Monday blues
Straight through Sunday blues

Good morning, heartache, here we go again
Good morning, heartache, you're the one who knew me when
Might as well get used to you hanging around
Good morning, heartache, sit down



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