セッション定番曲その148:Yesterdays
ジャズスタンダード曲。とてもブルージーな雰囲気があります。実はあまりセッション現場でリクエストされているのを見たことがないので、人気曲なのかどうかは分かりません。
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:「Yesterday」ではない
ビートルズの「Yesterday」が有名になり過ぎて、影が薄くなってしまったジャズスタンダード曲「Yesterdays」。1933年に書かれた古い曲で、ブルージーな雰囲気がジャズミュージシャンに人気なのか、「ジャズアルバムの中の登場率が高い曲」のひとつのようです。
Billie Holiday、1939年録音
まだ24歳だった彼女の瑞々しい歌唱。
ポイント2:Jerome Kern
作曲者はJerome Kernで、ジャズ曲を書いたのではなく、1910-30年代にミュージカル向けの曲を大量に書いて、それが順次ジャズスタンダード化したという流れです。古い譜面集を見るとミュージカル用の曲のまま採譜されたものが掲載されている場合もあり、現在出回っているジャズ用の譜面と大分違う場合もありますので要注意。
有名な曲だと「All the Things You Are」「Smoke Gets in Your Eyes」「The Way You Look Tonight」「The Song Is You」「I'm Old Fashioned」「The Last Time I Saw Paris」など。実は「Ol' Man River」もこの人が仕立て上げた曲のようです。
ポイント3:ジャズの基本はブルース
細かい音楽的な系譜はともかく、ジャズの底流にはブルースがあって、特にジャズボーカルの場合にはそこを避けて通れないというか、より深いジャズ的な表現の為には絶対にブルースを歌えた方がいいと思います。
日本の場合だとリスナーとしての「ジャズファン」と「ブルースファン」はあまり重なっていないし、アマチュアのジャムセッションの場も「ジャズセッション」と「ブルースセッション」にきっぱり分かれていて、参加者も分かれている場合が多いので、「ジャズボーカルやっています」という人でもブルースを歌ったことの無い人もいます。もちろんプロのジャズ歌手に「ブルース歌えません」なんて人はいないはずですが。
この曲はそんな「ブルースフィーリング」を身に付けるのに最適な曲のひとつです。形式としてはいわゆるブルース進行ではありませんが、曲の雰囲気とメロディはブルース風味たっぷり。構成は16x2の32小節ですが、テーマの時だけ最後に1小節付け加わるのがちょっと罠(アドリブは16/32小節で回す)。

ポイント4:色々な歌唱/演奏を聴いてみよう
Ella Fitzgerald、1963年録音
Nelson Riddleらしいゆったりとしたラテンアレンジ。一時期流行った無国籍な南国イメージ?
Dianne Reeves、1987年録音
現代的なリズムアレンジが凝っています。
Marianne Faithfull、1987年録音
すっかり嗄れた声で重々しく歌っています。人生に色々あった人が歌うと説得力がありますね。
Helen Merrill、1954年録音
ジャズの基本はやっぱりブルースだというのが分かりますね。
Clifford Brown With Strings、1955年録音
Lee Konitz with Miles Davis、1951年録音
Bud Powell、1950年録音
Tito Puente、1959年録音
途中からいきなりラテンアレンジ展開です。
Anita O'Day
YesterdayとYesterdaysのメドレー。これもよくあるパターンです。
ポイント5:歌詞のポイント
Yesterdays, Yesterdays
複数になっているので「昨日」という特定の日ではなく「過ぎ去った日々(を振り返る)」という意味になります。
Days I knew as happy
Sweet sequestered days
「sequestered」は見かけない単語で「隔離された」「人里離れた」という意味。解釈は色々ありますが、ここではこの後の「Olden days」と関連付けて「遠い記憶の日々」と訳すことも、「2人だけで過ごした甘い日々」と訳すことも出来そうです。
Then gay
Youth was mine
And truth was mine
Joyous free and flaming life
Forsooth was mine
「Forsooth」は見慣れない古語で「不信(感)」という意味のようです。
主人公は若い日々は喜びや燃えるような情熱に溢れて、それが真実だと思い込んでいました。ただし、ある時は恋人に対する不信感が忍び寄ってきます。
Sad am I, Glad am I
For today I'm dreaming of Yesterdays
ここは倒置法で感情を前面に出した感じ。
浮き沈みの多かった日々、それですらは今は思い起こして懐かしんでいます。
短い歌詞ですが、要は「喜びと苦悩、色々あった過去だが、今では懐かしい」と歌っています。若い歌手が歌う時とベテランの歌手が歌う時で、込める感情も違うし、聴く側の印象も変わりますね。年配になっても違和感無く歌える曲です。
◼️歌詞
Yesterdays, Yesterdays
Days I knew as happy sweet
Sequestered days
Olden days, Golden days
Days of mad romance and love
Then gay
Youth was mine
And truth was mine
Joyous free and flaming life
Forsooth was mine
Sad am I, Glad am I
For today I'm dreaming of
Yesterdays
