第3回「成長を促す生成AI活用とは何か?」
【1】「壁打ち相手」としての生成AIの可能性
第1回と第2回では、生成AIの「堕落リスク」や「依存傾向」について、自身の経験をもとに考察してきました。今回はその逆に、生成AIが人間の「知の成長」を促す可能性に注目してみたいと思います。
私がChatGPTを「思考の相手」として意識するようになったのは、「年代×時代」という視点から社会構造を分析するテーマに取り組んだときのことです。たとえば「2010年・2025年・2040年にそれぞれ65歳を迎える人々」は、同じ年齢であっても、社会背景やITリテラシー、健康観がまったく異なります。こうした仮説をChatGPTに整理してもらうと、曖昧だった構想が一気に可視化され、そこからさらに議論が発展していきました。

視覚化+対話による思考の整理——これは人との対話にも似たプロセスですが、ChatGPTは「構造的かつ即時的」にフィードバックを返してくれるため、頭の中のもやもやがスッと整っていく感覚があります。人間同士の対話では、自分の枠を超える意見に出会うことが刺激になりますが、ChatGPTとの対話では、自分の中にまだ気づけていなかった視点や思考のクセに気づかされる感覚が強いのです。
【2】質問力が、自分の知的レベルを映し出す
最近はnote執筆に関わる問いを投げかけることが多くなりましたが、それと並行して、教育現場での生成AI活用に関する問いも増えてきました。たとえば、学生に与えた課題にChatGPTを使ってどう答えるか、評価された内容をもとに再提出させたらどう変化するか。さらには、教員と学生がそれぞれ生成AIで問題を作成した場合、どれほど類似してしまう可能性があるのか。そんな問いが浮かび、ChatGPTと対話を重ねています。
このような問いは、単なる「生成AIの活用法」にとどまらず、日本の教育が生成AI時代においてどれほど適応できるのかという根源的なテーマにもつながります。結果として、教育現場だけでなく、自分自身の問題意識や価値観とも向き合う機会になっています。
ChatGPTとのやり取りは、その人の「問いの質」をそのまま反映します。だからこそ、自分が何に関心を持ち、どれほど深く考えようとしているのかが、使えば使うほど浮かび上がってくるのです。
【3】プロンプトは「思考の筋トレ」になる
ChatGPTを活用するうえで欠かせないのが、プロンプトの工夫です。私の記録では、2025年4月以降のスレッド開始時のプロンプトの約8割が600字以上の長文であり、平均して5.2の構成要素(問題提起・目的・依頼内容・条件・背景・文脈など)を含んでいます。
これは単に丁寧に依頼しているのではなく、「自分の思考を言語化し、文脈を整理し、相手に明確に伝える」という知的活動そのものです。
プロンプト力を鍛えることは、「問いを立てる力」「情報を再構成する力」「論理的表現力」など、思考のあらゆる側面を強化するトレーニングになります。ChatGPTは、その場で反応を返してくれるため、自分の曖昧さや説明不足にすぐ気づくことができ、自然とプロンプトの質が向上していきます。
こうしてプロンプト作成力が上がると、生成AIとの対話そのものが、論理的思考と表現力を鍛える“思考の筋トレ”になっていくのです。
【4】仮説検証を支援する「思考補助装置」としての役割
私は疫学を専門としていますが、ChatGPTを用いて、既存データをもとにした仮説の整理や検証を試みることが多くなっています。たとえば、「特定の年代・時代の組み合わせにおいて、ある健康行動がどう変化するか」といった仮説に対して、ChatGPTは関連研究の紹介、分析の枠組み、さらには反証のための論点まで示してくれます。
もちろん、出された情報の事実確認は必要ですが、議論の選択肢を広げてくれる意味で、思考補助装置として非常に頼もしい存在です。
教育現場でも同様に、ChatGPTとのやりとりから、生成AIの限界や強み、学生の使い方の傾向などが可視化されてきます。結果として、自分の中の「設計力」や「問いの鋭さ」まで試されているように感じる場面が増えてきました。
【5】「成長型AI活用」の3原則(仮)を考える
生成AIは、間違いなく今後の社会を支えるインフラになります。しかし同時に、使い方を誤れば人間の思考や判断力を低下させる危険性も持っています。だからこそ、自分の成長につながるような使い方を模索することが必要だと感じています。
これまでの経験を踏まえて、以下の3つの原則を(仮)として提示したいと思います。
① 本当に生成AIに任せるべきかを自問すること
自分でできることまでAIに任せてしまうと、思考の筋力が衰えます。全体の中で、どこまでを補助に委ね、どこを自分の手で担うのかを意識的に決めることが重要です。
② 背景・意図を伝えるプロンプトを作成すること
単なる指示ではなく、その作業の意味や目的まで共有することで、生成AIの出力の質が変わります。これは、人に仕事を依頼する際にも通じる基本的な姿勢です。
③ 粘り強く対話を続けること
一度で思い通りの答えが返ってこなくても、やりとりを重ねることで見えてくるものがあります。このプロセスを通じて、生成AIの限界と可能性の両方を知ることができるのです。
ChatGPTとのやり取りは、部下を育てるような気持ちで、根気強く丁寧に接することで、自分自身の「問い方」や「伝え方」の質が向上し、それがそのまま、自分の成長にもつながっていくのではないか——そんな感覚を、今私は持ち始めています。
👉 次回(第3.5回)では、成長を促す生成AI活用の実践として、実際のChatGPTとの対話を紹介します。
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