キャラクターを好きになってもらいたければ、魅力を説明するな。発見させろ

チョリーッス!北嶋です。
前回は、魅力的な設定をたくさん足せば、魅力的なキャラクターになるわけではない、ということを書きました。
でも、中には、「どうして? 別にいいんじゃない?」と思われた方もいるかもしれません。
もちろん、趣味で作ったキャラクターなら、どれだけ好きな設定を盛ってもいいんですよ!
創作にルールはありません✨
ただ、誰かに読んでもらう、遊んでもらう、観てもらう作品を作るなら、作者の頭の中でキャラクターが魅力的に完成しているだけでは、まだ足りません。
作者の頭の中では、そのキャラクターが生き生きと動いている。
どんな人生を送ってきたのかも知っている。
何に怒るのか。
何に傷つくのか。
どんな顔で笑うのかも知っている。
だから作者にとっては、もう十分に魅力的なんです。
でも、受け手はそれを知りません。
作者の頭の中にあるものを、作品を通して受け手が体験できる形にしなければ、その魅力は届かない。
前回、「魅力は、知らせるものではなく、体感させるものです」と書いたのは、そういう意味です。
では、キャラクターの魅力を受け手に届けるためには、何を設計すればいいのでしょうか。
今回は、「どんなキャラクターを作るか」ではなく、「受け手にそのキャラクターをどう知ってもらうか」という視点から考えてみます。
好きは、設定を知った瞬間には生まれない。
作品は、良くも悪くも創作物です。
キャラクターも、世界も、出来事も、全部作者が作ったものです。
作者が、
「この人は世界最強です!」
と決めれば、その瞬間から世界最強にできます。
「誰からも恐れられています!」
と書けば、そういう設定にもできます。
つまり、なんでもできます。
だからこそ、受け手に、「作者がそう決めただけじゃん」と思われた瞬間、一気に作り物っぽくなります。
これはキャラクターの魅力についても同じです。
それは、ただ作者によって決められた「魅力的な設定」なのか。
それとも、その作品世界の中で、本当にその人物の魅力として存在しているのか。
ここには大きな違いがあります。
私たちは物語を見るとき、作品をずっと「外側」から眺めているわけではありません。
物語を見ているうちに、
「この世界では何が普通なのか」
「何が特別なのか」
「何が恐れられているのか」
「何が尊敬されているのか」
といった、その世界なりの“ものさし”を無意識に身につけていきます。
そして、そのものさしを使って、
「この人って、この世界ではこんな立ち位置なんだ」
とキャラクターを理解していきます。
だから、
「この人は世界最強です」
と作者から説明されるのと、
その世界を体験してきた結果、
「え、この人……この世界では、とんでもなく強いんじゃない?」
と自分で気づくのでは、同じ設定でも受け取り方がまったく違うんです。
つまり、設定として魅力的な要素を作るだけでは足りない。
その魅力が、作品世界の中で本当に魅力として機能している必要がある。
そして、もう一つ。
それを受け手が発見できるようにする必要があるんです。
魅力は「説明」ではなく「発見」させる
前回、外見・内面・物語が一本につながったとき、キャラクターデザインそのものが魅力になる、という話を書きました。
今回の話は、その続きです。
キャラクターの魅力は、
「この人はこういう魅力的な人ですよ」
と説明するのではなく、受け手自身に発見してもらう。
そのための体験を作る。
ここが重要なんじゃないかと思っています。
実際の作品を例に見てみましょう。
今回取り上げたいのは、海外ドラマ『メンタリスト』の主人公、パトリック・ジェーンです。
ジェーンは、CBI(カリフォルニア州捜査局)に捜査協力をしているコンサルタント。
人間を観察し、心理を読み、ときには巧みに相手を操りながら事件を解決していく、非常に頭の切れる人物です。
そして面白いのが、ジェーンというキャラクターは、企画段階から「人を惹きつける人物」として設計されていたということです。
『メンタリスト』の企画・脚本を手がけたブルーノ・ヘラーは、放送開始当時のインタビューで、ジェーン役について次のように語っています。
“Somebody who moves and looks graceful, because those guys -- mentalists and psychics -- they have to be people you’d want to get close to because that’s what they are trying to do with you.”
(筆者訳)
動きや見た目に優雅さがあり、人を惹きつける人物が必要だった。メンタリストや霊能者は、人から「近づきたい」と思われる人物でなければならない。彼らが相手にしようとしているのは、まさにそういうことだからだ。
ジェーンは、人を観察し、懐に入り込み、心理を読み、ときには巧みに操る「メンタリスト」です。
つまり、
メンタリストという役割
↓
相手の心理に入り込む必要がある
↓
そのためには、人が近づきたくなる人物でなければならない
という形で、
キャラクターの役割から、必要な魅力が生まれているんです。
では、そんな「人を惹きつける人物」として設計されたジェーンを、ドラマでは実際にどう魅力的に見せているのでしょうか。
第1話を見てみましょう。
※ここから『メンタリスト』第1話のネタバレを含みます。
視聴者は、ジェーンを少しずつ「発見」していく
第1話は、ジェーンが殺人事件の被害者宅を訪れているところから始まります。
ところがこの男。
勝手に家に上がる。
勝手にサンドイッチを作る。
勝手にお茶を飲む。
自由すぎる。
そこへ被害者の母親が現れます。
当然、最初は警戒されます。
ところがジェーンは会話をしながらあっという間に相手の懐へ入り込み、事件の核心に迫ってしまいます。
ここで、
「ジェーンは非常に頭が切れる人物です」
「自由奔放な性格です」
「人の心理を読むことが得意です」
なんて説明はされません。
視聴者は、ジェーンの行動を見ながら、
「何この人?」
と思う。
なんでそんな自由なの?
なんでそんなことが分かるの?
この人、いったい何者なの?
これが、ジェーンに対する最初の認識になります。
そして事件を追っていくうちに、少しずつ別の情報が出てきます。
ジェーンは、過去に霊能者を名乗って人気を集めていた。
そしてどうやら、その過去には触れられたくない何かがある。
さらに、「レッド・ジョン」という連続殺人犯の名前が出た瞬間、それまで飄々としていたジェーンの様子が変わります。
夜も寝ずに捜査をする。
捜査官たちの手を借りず、自分だけで犯人を罠にかけようとする。
命の危険すらある無謀な行動を取る。
ここで視聴者の疑問が変わります。
最初は、
「何この人?」
だった。
それが、
「この人、何を抱えてるんだろう?」
に変わる。
やがて明かされるのが、ジェーンの妻と娘がレッド・ジョンに殺されたという事実です。
しかも、そのきっかけの一つになったのは、霊能者としてテレビに出演していたジェーン自身が、レッド・ジョンを挑発したことでした。
ここで、それまでのジェーンの行動の意味が変わります。
レッド・ジョンへの異常な執着。
眠らずに捜査すること。
命を危険にさらしてまで犯人を追うこと。
でも、第1話はそこで終わりません。
事件を解決したジェーンは、自宅へ帰ります。
そして、何もない部屋に置かれた粗末なベッドに横になる。
その真上にあるのが、レッド・ジョンが犯行現場に残した、血で描かれたスマイルマークです。
ジェーンは今でも、妻と娘が殺された家に住んでいる。
しかも、その殺害現場で眠っている。
ここで、それまでバラバラに見えていた情報が一本につながります。
ここで視聴者は、
「ああ、この人はまだ、あの事件の中にいるんだ」
と強く実感する。
誰かが説明してくれたわけではありません。
視聴者自身が、それまで見てきたジェーンの言葉、行動、過去、そして最後の風景をつなげて、その人物を理解するんです。
もし、全部説明してしまったら?
では、同じキャラクター設定を、最初から全部説明したらどうなるのでしょうか。
試しにやってみましょう。
※以下は実際の『メンタリスト』のセリフではありません。「もしキャラクター設定を全部セリフで説明したら?」という例として、私が作った架空のシーンです。
『メンタリスト』を見たことのない方のために補足すると、ジェーン以外は全員捜査官。リズボンはチームのリーダーです。
【CBI・捜査室】
ヴァンペルト「本日付で配属になりました、グレース・ヴァンペルトです。よろしくお願いします!」
リズボン「よろしく。こっちはチョウ、リグスビー。それから……」
ジェーン「パトリック・ジェーン。僕は捜査官じゃない。コンサルタントだよ」
ヴァンペルト「コンサルタント?」
リグスビー「こいつ、人の顔を見ただけで考えてることを当てるんだ。嘘もほとんど見抜く」
チョウ「以前は霊能者を名乗っていた。実際には観察力と心理操作だ」
ヴァンペルト「霊能者……!」
ジェーン「別に大したことじゃないよ。君だって今朝、家を出る前に母親と電話しただろ?」
ヴァンペルト「えっ!? どうして分かったんですか!?」
ジェーン「秘密」
リズボン「調子に乗らないで。頭はいいけど、この人は勝手なことばっかりするんだから。この前なんて犯人を挑発して、危うく捜査を台無しにするところだったのよ」
ヴァンペルト「でも……どうして警察の捜査に?」
リズボン、リグスビー、チョウたちに一瞬緊張が走る。
チョウ「……レッド・ジョンだ」
ヴァンペルト「レッド・ジョン……連続殺人犯の?」
リグスビー「ああ。ジェーンの妻と娘は、レッド・ジョンに殺された」
ヴァンペルト「……ごめんなさい」
ジェーン「謝ることじゃないよ」
ヴァンペルト「それで、犯人を追っているんですね」
ジェーン「ああ。僕は必ずレッド・ジョンを捕まえる。そのためなら何だってする」
リズボン「本当に“何だって”するから困るのよ。レッド・ジョンの手がかりが出たら、三日寝ないことだってあるんだから」
リグスビー「こいつ、普段からほとんど眠れてないしな」
ジェーン「眠ると嫌な夢を見るからね。……さあ。湿っぽい話は終わり。事件を解決しよう」
……はい。
ちゃんと説明されてますね!!🤣
頭がいい。
元霊能者。
自由奔放。
妻と娘を殺された。
レッド・ジョンを追っている。
眠れない。
全部分かる。
設定資料としては問題ありません。
でもドラマとして見ると、
どっかで見たことある!既視感!!
となる。
なぜでしょうか。
情報が足りないからではありません。
むしろ情報は十分すぎるほどあります。
違うのは、視聴者がその人物を発見する過程がなくなっていることです。
説明版では、「ジェーンとはこういう人物です」という完成した答えを、最初から渡されています。
一方、本編では違います。
「何この人?」
↓
「どうしてレッド・ジョンにだけこんな反応をするの?」
↓
「家族を殺されていたのか」
↓
「だからこんな無茶をするのか」
↓
「……この人、今でも殺害現場で暮らしてるの?」
と、物語が進むたびに、視聴者の中にある「パトリック・ジェーンという人物像」が更新されていくんです。

つまり、両者の違いは、「何を伝えたか」ではない。
ほとんど同じ情報を伝えています。
違うのは、「受け手に、どんな順番で、どんな認識を作ったか」なんです。
キャラクターの魅力ではなく、「魅力の認識」を設計する
ここまで分解すると、キャラクターを魅力的に見せるために設計するものが見えてきます。
キャラクター設定だけを作ればいいわけではありません。
「最初に、この人物をどう見てほしいのか」
「次に、何を発見してほしいのか」
「その情報によって、それまでの印象をどう変えたいのか」
「どこで『もっとこの人を知りたい』と思わせるのか」
「最後に、どんな人物として認識してほしいのか」
ここまで含めて考える。
つまり設計するのは、キャラクターそのものだけではありません。
そのキャラクターに対する、受け手の“認識の変化”まで設計する。
私は、ここまで含めてキャラクターの魅力設計なのだと思っています。
これは特に、分かりやすく強い“魅力属性”を持たせたキャラクターほど重要です。
たとえば、
美男美女!
頭脳明晰!
大金持ち!
実は王族!
世界最強!
盛れるだけ盛りました!!
強い。確かに強い。
でも、こうした魅力は見せ方によっては諸刃の剣でもあります。
同じ「天才」でも、
「すごい! かっこいい!」
になることもあれば、
「はいはい、また天才ね」
になることもある。
同じ「世界最強」でも、
「この人が来た……もう大丈夫だ」
と思わせることもできれば、
「作者が最強って言ってるだけでは?」と思わせてしまうこともある。
つまり、魅力的な属性そのものが、受け手の感情を決めているわけではない。
その作品世界の中でどう位置づけられ、
どんな出来事を通して発見され、
それまでの人物像とどうつながり、
受け手の中でどんな意味になったのか。
そこまで設計されて初めて、「設定」が「体験としての魅力」に変わるんです。
まとめ キャラクターを好きになってもらうために、何を設計するのか
キャラクターの魅力を受け手に届けるとき、「この人は魅力的ですよ」と説明するだけでは足りません。
その魅力が、作品世界の中で本当に成立していること。
そして受け手が物語を追う中で、
「この人って、もしかして……」
と、その人物を自分で発見できること。
説明は、完成した意味を渡すことができます。
一方、体験には、受け手自身が意味を完成させる余地があります。
だから、キャラクターを設計するときには、「どんな人物を作るか」だけでなく、受け手の中で、その人物への認識がどう変化していくのかまで考える。
何をきっかけに興味を持ち、何を知ったことで印象が変わり、どこで「もっと知りたい」と思うのか。
こうしたことは、キャラクターの設定表には書かれない部分です。
でも、ここまで含めて考えることで、キャラクターの魅力は「作者が決めた設定」から、受け手自身が体験した魅力へと変わっていきます。
良い物語は、情報を受け取らせるだけでなく、受け手に意味を発見させる。
そして、乙女ゲームではここからもう一段先があります。
キャラクターに興味を持ち、
もっと知りたいと思い、
その人物を少しずつ理解していく。
でも、それだけではまだ、「魅力的なキャラクター」なんです。
乙女ゲームで作りたいのは、その先にある、
「この人と恋愛したい」
という体験です。
では、「人物への興味」は、どうやって「恋愛」に変わっていくのでしょうか。
そこでは今度、キャラクター単体ではなく、プレイヤーとキャラクターの“関係性”の設計が重要になってきます。
それについては、また次回!
