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今日を諦めた私を許した夜

夜の街は、いつもより静かだった。
耳を澄ませば、遠くで車が滑る音が聞こえるだけで、
世界が一度息を止めたような気がした。

今日は――どうしても進めなかった。
パソコンに向かっても、白紙のまま。
仕事の連絡を返す気力も、誰かに弱音を吐く勇気もなかった。

そんな自分を責めながら、
無意識に家の前のベンチに腰を下ろしていた。

冷たい風が、ほんの少し頬を撫でていく。
その感触が、「もう無理だ」って言った自分を
ひとつ、静かに肯定してくれた気がした。


人は、諦めた日の自分を嫌いになる。
でも本当は、諦めるほど頑張っていた証拠なんだろう。

頭ではわかっていても、
胸の奥には重たい石が沈んだままで、
しばらく動けなかった。

それでも、ふと見上げた夜空の端で、
雲の切れ間から小さな星が顔を出した。

たった一粒なのに、
その光は驚くほどまっすぐで、
私は思わず、深く息を吸い込んだ。

「……ああ、まだ大丈夫かもしれない」

そう思えた理由は、星の光そのものよりも、
自分の中に微かに残っていた“前に進みたい”という気持ち
気づいたからだった。


今日を諦めても、
明日が消えてなくなるわけじゃない。

ひとつ呼吸を置いて、
ひとつ心の荷物を下ろして、
ひとつだけ灯りを見つけられたら――
それで充分なのかもしれない。

私がそうやって自分を許した夜、
なぜだか胸の奥に、小さな余白が生まれた。
その余白に、ほんの一滴だけ優しさが落ちる。

その優しさは、
明日の私を起こすための目覚ましではなくて、
眠れなかった今日を静かに抱きしめてくれる毛布のようだった。

もしあなたにも「もう無理だ」と思った日があったなら、
どうかその夜だけは、何も責めないでほしい。

大丈夫。
動けなかった日は、ちゃんとあなたを守っていた日だから。


夜が深くなり、街灯が少し滲んで見える。
それでも、さっきより息はしやすい。

明日のことは、明日でいい。
今日は、もう静かに終わらせよう。

この夜が、あなたのどこかを
そっと許してくれますように。

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