完璧だったら、何も始まらなかった
「もっとできていたら」 「なんで自分は、またこうなんだろう」
そんな声が、ふと浮かぶことがある。
ちゃんとやろうとするほど、ちゃんとできない自分が目について、気づけば、自分を責めている。
その繰り返しに、少し疲れた。
でも、思い返してみると──
心が動いた物語は、いつも完璧じゃなかった。
葛藤があるから、続きが読みたくなる。
痛みがあるから、心が揺れる。
語り尽くされていないからこそ、自分の気持ちを重ねられる。
足りないから、続きを望んでしまう。
それでも、人は完結した物語を求める。
ピリオド。
ハッピーエンドは美しい。
ただ、すべてが語り尽くされたその先には、もう、何ひとつ紡がれるものはない。
けれど、本当は知っている。
完璧に見える終わりの後も「つづき」があることを。
コップが満たされきった瞬間に、溢れ出す新しい物語。
はじまりの時も、きっと同じだった。
生まれたばかりの宇宙は、どこまでも均一で、どこを見ても変わらない。歪みも濃淡もなく、そこには、まだ星の気配さえなかった。
やがて、ほんのわずかな「ムラ」が生まれる。
そのささやかな揺らぎが、引力を呼び、星を灯していく。
そこから広がった無数の光が、空を満たし、いま、私たちが見上げている、ゆたかな空へとつながる。
「完璧」のままなら、そこには何も起きなかった。ほんの少しの綻びから、世界は始まった。
だとしたら──。
うまくできなかった今日も。 言えなかった、あの一言も。まだ整理できていない、この気持ちも。
それは欠けているものではなく、何かが動き出す前の、静かな余地。
不足を感じるその場所から、次の何かが、生まれようとしている。
希望は、ヒビから漏れる光のようなもの。
不完全さこそが、あなたがあなたである理由。
この感覚を、もう少しゆっくり味わいたい方へ。
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気になった時に、手に取ってもらえたら嬉しいです。
連休が終わり、また日常が静かに動き出します。
そのはじまりが、少しだけ明るく、やわらかくありますように。
やさしい時間が、そっと続いていきますように。
音伊紅芳
《 あわせて読みたい、愛おしい不完全さに寄り添うエッセイ 》
完璧を求めようとするほど、動けなくなってしまう心へ。 未完成のまま、途中のままで生きることの 静かな安心感をそっと手渡してくれる3編です。
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✦何かを終わらせなきゃ、ちゃんとした自分にならなきゃと、区切りを前に焦ってしまうときに。人生のほとんどを占める「途中」を、未完成のまま連れていくことの、自分への深い優しさに出会えます。
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