飲み会の断り方を6つに固定して5年、管理職になりました。可愛がられてはいません
今日、役員との飲み会を断りました。使ったのは、この一文だけです。
「1ヶ月前から予定を入れてしまったので」
(「飲み会の断り方を5年やって、今日、役員に嘘をつきました」から来てくださった方へ。ここから数段落は、あちらと同じ日の話です。重複が気になる方は「具体的な理由は、相手に『取っ手』を渡してしまう」から読んでください。)
やりとりは、これで終わりました。理由も聞かれていませんし、日程を動かそうかとも言われていません。
先に言っておきます。この一文だけを真似しても、たいていうまくいきません。
今日の私が、まさにそうでした。あれは嘘だったからです。嘘でも今日は通りましたが、通ったのは今日だけです。
飲み会を断るときにきついのは、断る瞬間ではありません。
断ったあとに始まる、交渉です。
「一次会だけでも顔出して」
言われた経験があると思います。相手は悪気なく、親切として、あなたの理由を解決してくれる。そこから始まるのは、行くか行かないかの話ではなく、どうやりくりすれば参加できるかという交渉です。
交渉が始まった時点で、もう負けています。
だから必要なのは、勇気ではありません。交渉を発生させない技術です。
私は5年かけて、それを6つのルールに固定しました。歓迎会でも、忘年会でも、打ち上げでも、誰に誘われても、返す形は同じです。考えることは、ほとんどありません。
そして5年断り続けた結果がどうなったかは、タイトルに書いたとおりです。管理職にはなりました。可愛がられてはいません。
隠すつもりがないので、先に書きました。この記事で書くのは、その結果ではなく、そのあいだ何を払っていたかのほうです。
可愛がられない人間の評価が、なぜ下がらなかったのか。私はその埋め合わせを、夜ではない場所で払っています。どこで、何を払っているのかを、後半で全部書きます。
もうひとつ、断っておきます。
私はいま管理職で、誘う側でもあります。
だからこの記事は「上司に断り方を教える部下」の話ではありません。私は、誘う側に回って、誘わないほうを選びました。なぜそう決めたのかも書きます。誘う側が声をかける前に何を数えているかが分かると、断り方の力の入れどころが変わります。

この記事について
こういう人向けです
上司や役員からの誘いを、角を立てずに断りたい
飲み会を断りたいが、断ったあとの押し問答で毎回消耗している
断ると評価が下がるのではないかと思って、断れないままでいる
断ったあとに残る罪悪感を、毎回そのまま我慢している
その場で言い訳を考えているので、毎回言うことが変わってしまう
向きません
飲み会が楽しくて行きたい人
職場の人間関係を広げることを最優先にしている人(この記事はその逆をやります)
有料部分で答えていること
断り方をルールにすると、なぜ相手は聞くのをやめるのか(6つのルール全文)
役員と同僚では、どちらのほうが粘るか。答えは意外なほうです
全員の前で誘われたとき、「確認します」の代わりに何と言って即答するか
部下から誘われたときだけ、変えていること
出るしかない席で、翌朝を守るために席に着く前にやること
冒頭の嘘について。前の週に何を置いておけば、私は嘘をつかずに済んだのか
可愛がられない人間の評価が、なぜ下がらなかったのか。私が夜の代わりに払っている場所
その代償を払わずに断るとどうなるか。私がいちばん警告したいのはここです
【早見表】13の場面に、そのまま使う一文(スマホのメモに貼れる形)
断るのがつらいのは、断った「あと」があるからです
5年前、管理職になる前の私は、飲み会に誘われて、具体的な理由を言って断りました。
何と言ったかはもう覚えていません。覚えているのは、返ってきた言葉のほうです。
「それなら、○○すれば来られるよね」
相手は、私の理由を解決してくれたのです。悪気なく、親切として。
結局その日は行きませんでした。でも終わったあとに残ったのは、安堵ではありませんでした。
こんなやりとりが、不毛だ。
私は行かないと決めている。
それなのに何往復も言葉を交わし、相手にも気をつかわせている。断ること自体より、断るまでの手続きのほうがはるかに消耗する。
具体的な理由は、相手に「取っ手」を渡してしまう
なぜ交渉が始まるのか。理由がはっきりしているほど、相手がそこに手をかけられるからです。
「お金がない」 → 「今日は俺が出すよ」
「家族と過ごす」 → 「じゃあ来週にしよう」
「疲れている」 → 「一次会だけでも顔出して」
「明日が早い」 → 「早めに解散するから」
どれも、相手は親切のつもりです。だからこそ厄介です。善意で差し出された解決策を断るには、二度断らなければならない。一度目より二度目のほうが、はるかに気まずい。
ここで、冒頭の話に戻ります。
今日、私を誘ったのは役員でした。この4つを全部、実際に実行できる立場の人です。奢ることも、日程を動かすことも、「顔だけ出せばいい」と言うこともできる。
ちなみに「断るなら『お金がない』がいちばん効く」という説をよく見かけます。理屈は分かります。お金は本人の努力ではどうにもならない事情に見えるからです。
でも、少なくとも私が試した役員には効きませんでした。出す側に回れる人だからです。お金は、相手が動かせる変数なのです。

私が役員に言ったのは、これだけです
「1ヶ月前から予定を入れてしまったので」
何の予定かも、誰との予定かも言っていません。
中身を言わなければ、優先度も比べられないし、動かせるかどうかも判断できない。相手にできることが、何もなくなります。
ただし、この一文が使えるのは、後ろに本物の予定がある人だけです。
私は今日、それを持っていませんでした。だから嘘になりました。
正直に言えば、嘘をついたこと自体は、行儀のいいやり方ではないと思います。
ただ、「中身を言わない」という形そのものは、5年やって、これがいちばん相手にも負担をかけないという結論になりました。
理由を言えば、相手はそれを解決しようとしてくれます。こちらはそれを断る。相手はまた別の案を出す。お互いに気をつかい合った結果、二人とも消耗する。中身を言わないほうが、双方の時間が短くて済みます。
これが、私が5年かけて固定した6つのルールのうちの1つ目です。有料部分では、これに「相手が食い下がってきたときに返す一文」を足したうえで、残り5つを全部書きます。いちばん効いているのは、1つ目ではありません。
飲み会1回で、私は2日ぶん止まります
そこまでして断る理由も、書いておきます。
私は5年前から、定時に帰ることを続けています。続いたのは、意志が強いからではありません。仕組みにしたからです。
なかでも効いたのが、これでした。
出社前に、帰宅する電車の時間を決める。
「〇時〇分の電車に乗る」と決めた日は、私の場合、たいてい乗れます。決めていない日は、たいてい乗れません。締切がないと仕事が終わらないというだけの話かもしれませんが、私にはこれが効きました。
ただし、これには一つだけ条件があります。それは後半で書きます。
この仕組みは、自分で組んで、自分で守れます。電話を減らすのも、午前中にメールを見ないのも、全部こちらの裁量の中にあります。
飲み会だけが違います。
飲み会は、他人が外から持ち込んできます。しかも「今日は遅くまで働け」という形ではなく、「約束」という顔をして来ます。
会社の人がいて、日程が決まっていて、断りにくい。自分で置いた約束より、社会的な強度が高い。
だから飲み会に行くというのは、その日の帰宅が遅くなるという話ではありません。
帰る時刻を決める権利を、その日だけ他人に明け渡すということです。
しかも、壊れるのはその日1日ではありません。ここは私の実感なので、データの話ではないと断っておきます。
当日 — 帰宅時刻の基準が消える。何時に帰ったかを自分で決めていないので、翌日の設計ができない
翌朝 — 起床が遅れる。午前がいちばん生産的な時間帯なので、ここが削られるとその日の総量が落ちる
翌日の夕方 — 落ちた分を取り戻そうとして、定時を越える。帰る電車の約束が、2日連続で崩れる
1回の飲み会で、2日ぶん止まる。

そして本当の損害は、時間ではありません。「このルーティンは、例外を入れてもいいものだ」と自分に教えてしまうこと。これが一番大きい。
習慣が壊れるのは、例外の回数ではありません。
例外を許す設計になった瞬間です。
一度でも「今日は特別だから」を通すと、次に断る根拠がなくなります。
ここまでが診断です。
あなたの断り方がうまくいかない理由は、勇気でも人間関係でもありません。相手に取っ手を渡しているからです。
ただし、取っ手を渡さない一文を持っているだけでは足りません。今日の私がそうでした。持っていて、それでも嘘になった。一文の後ろに何を置いておくかが決まっていないと、二回目で崩れます。
二回目、というのは同じ相手から二度目に誘われる日のことです。一度目は、誰でも断れます。私が5年のあいだに崩したのも、崩れかけたのも、ほぼ全部が二度目でした。最初の1年は、二度目でつい違うことを言って、そのたびに一からやり直していました。3回目まで持ちこたえられるようになったのは、そのあとです。
一度目と二度目で違うことを言った瞬間、相手の中では「この人は条件次第で来る人」に戻ります。そこからは、また一からです。
この記事の有料部分は、二度目・三度目のためにあります。
ここから先は、その置き方です。
最後に、5年でこの断り方が私に何を残して、何を持っていったかを書きます。可愛がられなくなったことは、隠さずタイトルにも書きました。ここで書くのは、それでも評価だけが動かなかった理由のほうです。冒頭で「夜ではない場所で払っている」と書いた、その場所の話です。
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