記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

夏帆④

夏帆を読んでから、少し時間が経ってしまった。その間に一回風邪で寝込んで、久しぶりに本当に一日中寝た。自分にまだこんなに寝られる体力があったなんてって驚いた。寝るのにも体力がいるって、ちょっと年を取らないとわからない感覚かもしれない。

夏帆については、もう1つだけ書いておきたいことがある。

*****ここから先ネタバレ注意*****




振り返りみたいになるんだけど、思い出すために書いてみる。夏帆の中で語られていたことの中に、自分の物語の中心は自分で、ありとあらゆる物事が自分に引き寄せられてくる、その物事の中から、自分は善き物語を紡ぐために、善き物を受け入れて(悪い物を拒否する必要がある)って話があったと思う。それで、夏帆はシロアリの女王に乗っ取られかけているお母さんを「悪いもの」、「自分の物語にふさわしくないもの」と判断して取り除くことにしたんだよね。判断したのはアリクイの奥さんだったのかもしれないけど。

シロアリの女王がお母さんのシャドウだってことはわかりやすい話だと思うんだけど、アリクイの奥さんが夏帆のシャドウだってことは、なんで?ってなる人もいるかもしれない。私は前の記事にも同じ事を書いたのかもしれないけど、夏帆は自分は誰かに救われるべき存在だと思ってる。アリクイの奥さんってさ、自分たちも同じようなことをしていながら、自分たちのことは棚に上げて、さも完全に被害者です、自分たちは悪くありません、みたいな感じで話してて、さらに色々とうまいこと言って、夏帆を使って自分が達成したいことを達成してるじゃない?それ夏帆が望んでいることと同じじゃない?夏帆自身も自分が、自分が思う母親像だけが正しいと思っている。そう思ってなければ排除したりしないよ。それに夏帆も問題が起こると誰かにどうにかしてほしいって思ってる。しかも、あの最後、お母さんと対峙するシーンで、お母さんもこう言った「私の犯した多くの過ちをあなたが正すのよ」って。私はそれを読んで最初は「なんで娘がしないといけないんだ。自分でやれよ母」って思ったよ。思ったんだけど、その母も夏帆が内側から映し出してる母ならば、納得。物語で語られているように、自分が中心にいて、自分が引き寄せて受け入れているもので自分の世界が成り立っているとしたら、夏帆の世界は夏帆が選んでいるもので成り立っているんだよね。お母さんも夏帆バージョンのお母さんであって、実際のお母さんではないのかもしれないでしょ。だから夏帆の要素が入った「無茶ぶりしてくる母」として夏帆の世界に出てきてるのかも。

それで考えてみた。

夏帆の世界にいる、夏帆が作ったお母さんという人。お母さんの世界にいる、お母さんが作った自分。この二者は完全には同一人物にはなり得ない。この二者が重なる部分、人物像が一致する部分はある。その一致する部分だけがお互いが一緒に見ているその人。その二者の間にはとても繊細でとても曖昧な境界がいくつもある。今、この瞬間は、本人と他者が見ている自分は一致するかもしれないけれど、次の瞬間は一致しないかもしれない。ここからここが自分とか、ここから先は他者が持つ自分のイメージとか、はっきりした境界がない世界。ふわふわしたものが混ざりあっててはっきりしない、何が本当のその人なのかわからない世界がそこにある。

夏帆は、その自分が作ったバージョンと一致しない部分のお母さん、自分が映し出したバージョンではないお母さんを理解していない。まぁ別に理解しなくても良いと私は思うんだけど。とにかく夏帆は自分の知らなかった、お母さん側で作られたお母さんという人物(シロアリの女王というシャドウが表に出てきてるお母さん)を理解しようとせず、排除した。自分の世界を守ろうとした。

夏帆が後からこう思ってる場面がある。「実際にこの人(母親)を殺してしまったのかもしれない」って。夏帆が排除したのは、シロアリの女王に乗っ取られた母親のはずなんだけど、排除した後の母親は夏帆が思っていた母親とは少し違う母親だった。シロアリの女王を排除してもお母さんが元のお母さんに戻った感じはしない。だから、自分が本当に殺してしまったのかもと感じているんだと思う。もしシロアリの女王を刺した後、お母さんが夏帆の知っている元のお母さんに戻っていたら、夏帆はお母さんを救ったと感じることができたのかもしれない。

どういうことなのかもう少し考えてみた。

ここには2種類の「母親」がいる。
夏帆が作った母親と母親が作った自分の2種類。
夏帆が作った母親をA、母親が作った自分をBとする。
ABの2種類の母親(のイメージ)は夏帆と母親の間で重なる部分がある。
ある時、Bの影がその重なる部分に侵食していった。
AとBが重なる部分に影が来たことで、Aの母親しか知らない夏帆にも影の存在が確認できるようになった。Bの影が侵食した母親の部分を夏帆は受け入れられない。夏帆はその受け入れられない部分のみを刺して取り除いた。その後、夏帆の母親はAに戻るかと思われたが(思ったのは読者である私)母親はAには戻らず、またBの影が侵食してきていた状態の母親でもなかった。Bの影はないようだけれど、Aの母親でもない。でも全然違う人でもない母親。でも思ってたのとも違う母親。だれ?

私が思ったのは、結局、夏帆が刺して取り除いたのは、Aの一部。Bの影がAB重なる部分に侵食してきてる時点で、Bの影はAの一部でもある。夏帆は自分の物語の中にいる母親Aのことしか刺せない。お母さんの物語の中にいるB(母親自身)のことは排除できないし、Bの中にいるシロアリの女王も排除できない。夏帆が排除できるのは、Aの側にいるシロアリの女王だけ。で、夏帆が刺したのはそのシロアリの女王。だから、なんていうか、Aというお母さんから、一部を削り取る形になった。削り取ったのが、Bからやってきたシロアリの女王。お母さんを刺した後に夏帆が違和感を感じたのは、お母さんが、元々夏帆が知っていたAのお母さんでも、シロアリの女王がリードしてるBの影が侵食してきた「A+Bの影」のお母さんでもない、「A−Bの影」みたいなお母さんだったからだと思う。意味わかんないよね。読んでる人わかるのこれwww自分でもわからなくなってきたわ。

結局、お母さんの影(シロアリの女王)を取り除く(っていうか統合)できるのは、お母さん自身だけだと思う。とぎやのおっちゃんが作ってくれた刃物は丁寧にしまわれたわけだけども、私は夏帆が自分の中のアリクイ(夏帆の影)を探し出してアリクイがそんなに良いものではない(だから自分の善き物語にふさわしくない)と気づかない限り、これからもその刃物を誰かに向けて使い続けることになると思う。自分の物語が悪くなる責任を他に求めることをやめなければいつも誰かを刺していないといけない。アリクイの言いなりになってはいけない。いつかはいなくなるって書いてあるけど、向き合って統合しないといなくならない。ミソラが自分で道を切り拓かない限り、アリクイはまた戻る。本当に排除しなければならないのは夏帆の内側にある。


とりあえずこれで夏帆のことを考えるのは一回終わりにしようと思う。
本を開けばいくらでも色んなことが考えられるから本も開かない笑。
普通に物語を読んで楽しめば良いものを、よくもまあこんなにあることないこと考えて書いてって、はい、自分でもそう思います。でももう無理なんです。普通に物語自体を楽しむことが…。できることなら何にも気づかず、何にも引っかからず、物語を楽しみたいです。でももう戻れないんだと思う。とにかく村上さんの物語を読みすぎたよね私…。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集