夏帆①
夏帆を読んだ。日曜日にたまたま立ち寄った本屋さんで見つけて買った。
たくさん考えることがある。たくさん書きたいことがある。
******ここから先はネタバレを気にせず書くのでご注意願います******
村上さんスピってる。スピってるに語弊があるなら、量子力学的と言えばいいのかな。
想念。バイブレーション。引き寄せ。とか。そういう言葉を聞くと、意識フィールドのことを考える。
でも、物語は「念じたら叶います」みたいな自己啓発の話ではない。そんなわけない笑
まず最初に、この物語全体を通して何度も示唆される「境界」について考えたいと思う。
-夏帆と初めて会った時の佐原。
図々しくも易々と人と人の間の境界線を超えて踏み込んでくる。
-足立区の花畑と埼玉県の見えない県境。
10分歩けば県が変わる。でも住所が埼玉から東京に変わっただけで、夏帆は自分の人生が変わったような気になる。
-夢と現実、幻想と現実
夏帆がアリクイの奥さんと意思疎通をはかるようになったのは夢の中、または白昼夢のようなものの中だった。でも物語にはそれは夢でもなく白昼夢でもないと書いてある。それは「何かの作用を受けて一時的に質感を変更された現実の一部」だって書いてある。つまり夏帆の現実に現実ではありえないものが追加されたというか現れたというか、夏帆の現実の一部が変わって、その境界線がアリクイの世界の境界線と一致して繋がることができるようになったのか。そんな感じだと理解してる。両者の波動が合ったから会えた、みたいな。全然違うかもしれないけど笑
-「とくべつな刃物」について。
本にはこう書いてある。「刃物は根元あたりはかなり太いが、先にいくほどぐんぐんと細くなり、尖った先端はほとんど無と化して空間に消えている」これも境界の曖昧さを表した部分だと私は理解した。そもそも私たち人間を含めどんな物体でも、小さく小さく見て行けば、どこまでがその物体、或いは自分自身であり、どこからがそうでないのか、その境界は曖昧だと思う。この刃物もどこまでが刃物でどこからが空間なのかわからない。その曖昧な境界を持っているからこそ、人間の体に突き刺しても、体は壊れないのかもしれないし、ピンポイントで刺したい対象が持つ境界に刃物の境界が合って、対象を刺すことができるのかもしれない。
そしてこの刃物についてもうひとつ、アリクイの爪はこの刃物の形に似てないかな。夏帆ちゃんが刃物で刺す。アリクイの爪に似た刃物で。ふーむふむ。
-曖昧な境界について、登場人物の人格にもそれは起こっている。
どこまでが自分で、どこからが外部から入って来たものなのか。外部から(または内部から)入ってきて(浮き上がってきて)、自分の中に定着して長い時間が経つと、それも元から存在していた自分と統合される。そして何が自分なのかわからなくなる。結構あると思うこれは現実でも。
この人格の中の境界の曖昧さは夏帆のお母さんの例が一番わかりやすい。
シロアリの女王がお母さんの体を乗っ取って、女王とお母さんが一つの体の中で共存するんだけど、時間が経つにつれ、お母さんの人格と女王の人格が統合されて、分離が難しくなっていく。私たちも、他人から言われ続けて演じているうちに、本来自分ではなかったものが自分の一部になっていたり、流行りを追いかけているうちに、自分が何を求めているのかわからなくなったり。自分の意見としてもっともらしいことを言ってみたら、それはどこかで誰かが言っている意見のコピーだったり。自分だと思っていたけど自分じゃなかったっていうことは結構あるんじゃないかと思う。でもこれは自分をよく観察して(厳しい目で)分析してみないと「自分」を特定することは難しいんじゃないかって思う。
物語を通して、境界に関しては他にもあちこちで触れられている。猫のホルの話はわかりやすい。
物語では見えない境界、曖昧な境界を越えた結果、自分の世界が違う世界になってしまうという話だった。
夏帆も越えた。たぶんホルも越えた。ミソラも越えたし。逆方向で考えると、ジャガーもシロアリの女王もアリクイもみんな境界を越えてそれまでの世界と違う世界に来た。そしてその世界でたまたまみんなが会った。
いや、違う。そもそも物語の中心は夏帆。夏帆の物語は夏帆が作っている。
だから、境界を越えて世界を変えたのは夏帆だけだ。
夏帆が世界を作っているということは、夏帆に取り憑けば、シロアリの女王は夏帆の世界のルーラーになれる。また自分の世界を作れる。え、そういうこと?シロアリの女王が元々は夏帆を狙っていた理由って。
こんなことをアリクイの奥さんは言ってる
これはあなた自身の(夏帆の)世界の物語です。あなたが必然的にその世界の中心となります。
そして善なるものも悪しきものも、善でも悪でもないものも、等しくあなたのもとに押し寄せてきます。あなたが引き寄せるのです。そしてあなたは押し寄せてくるそれらのものたちの中から、あるものは進んで受け入れ、あるものはきっぱり排除しなくてはなりません。それは中心人物であるあなたが引き受けなくてはならない責務なのです-諾か否かを判別し、それを善き物語へと導いていくこと、それがあなたの役割になります。
夏帆は夏帆が引き寄せたもの、現実に登場させたものから良いものを選んで、その世界、物語を善い物語へと導き語らなければならないってこと。アリクイもジャガーもシロアリの女王も。佐原も夏帆が作った絵本の物語の中の登場人物たちも。全部夏帆が夏帆の世界に登場させてる。その中から夏帆はジャガーを排除し、シロアリの女王を排除した。自分の世界に受け入れるもの、受け入れないものを判別した。でも私は夏帆はジャガーにもシロアリの女王にも手を出さない方が良かったと思う。特にシロアリの女王には。これはまた今度書こうと思う。
でもでも、シロアリの女王を排除しておかないと、もし夏帆が女王に乗っ取られたら、夏帆の世界に何をもたらし、何を排除するのか、女王が決めることになる。シロアリの女王は自分の前の女王の地位を乗っ取り、自分の巣を得た。乗っ取りのプロ。夏帆の世界(巣)も乗っ取られる可能性はある。排除しておかないとっていうロジックはわかる。
でもでも、シロアリの女王はお母さんの中にいる存在なんだよね…。親子でもそこ踏みこんで良いの?と、母と自分の境界線をはっきり引いている私は思ったりもする。思考がぐるぐるしてきた。
もしかしたらお母さんは二種類いるのかもしれない。
夏帆の世界の中のお母さんと、お母さんの世界の中のお母さん。
そして夏帆の世界のお母さんの中には夏帆はシロアリの女王を認めない。だから排除した。でも、もしかしたらお母さんの世界の中のお母さんはシロアリの女王を排除したいとまでは思っていなかったのかも。物語の最後曖昧だよやっぱり。お母さんは刺されることを自分で望んでいるようだけど、夏帆には後悔が残っている様子だし。この点についてももっと考えてみようと思う。
今日は境界の曖昧さについて考えてみた。
次は動物たちについて考えてみたいと思う。

