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夏帆②

次は動物について考えてみる。

******ここから先はネタバレを気にせず書くのでご注意願います******





物語には、以下の動物が出てくる。

アリクイ:夏帆が最初に出逢う動物。奥さんと夫の二匹。夏帆を守ろうとする。

シロアリ:アリクイの夫婦の好物。食べ物。

ジャガー:アリクイの子ども2匹を食い殺した。ジャガーはアリクイ夫婦のことも狙っている。アリクイ夫婦はジャガーを排除したい。

シロアリの女王:若いシロアリに女王の地位を奪われ夏帆の世界に来た。夏帆のお母さんを乗っ取る。

マイナーな登場動物:

オーストラリアにいる蜘蛛:とても大きい。ゴキブリを食べるから家に歓迎される。佐原の話の中で出てくる。18ページに出てくるんだけど、蜘蛛→受け入れるもの、ゴキブリ→拒否をするもの、という構図が物語の最初にも出てくる。家は自分の世界。

象、蜘蛛、馬、ありくいの夫婦:自分の顔を探す少女の話の中に出てくる。この時点でありくいの奥さんは夏帆に、凶暴なジャガーに気をつけるように言っている。

象のお母さん:象の卵を盗んだミソラを追いかけてくる。怒ったお母さん象は怖いけれど、ミソラをその世界から出してくれる存在。

ホル:夏帆たちが飼っていたねこ。ある日突然いなくなる。夏帆はホルが境界線を越えたと思っている。

スカーレット・ヨハンソン:ミソラの物語の中に出てくる猫。ホルに似せて描いているから、ホルにそっくり。物語の中から夏帆の世界に現れる。夏帆の中の物語と夏帆の現実世界との境界が曖昧だとわかる。

動物はこんなものかな。たぶん。

今日私が考えたのは、アリクイとジャガーとシロアリの女王について。

物語の中では、アリクイは善、ジャガーとシロアリの女王は悪、というそういう印象で書かれている。
実際、ジャガーはアリクイの子ども2匹を食い殺しているし、シロアリの女王は自分が女王だったころは随分酷いことをした、と自覚もしている。でもアリクイの夫婦も他人のことは言えない。だって、アリクイ夫婦はシロアリの子どもたちを食べていたし。シロアリがまた生まれるように意図的に女王は食べないでおいたし。シロアリの巣を農場化してた。それは善なの?アリクイがシロアリを食べることは、子どもを食べたジャガーがやったことと変わらない。だけど、ジャガーは排除されるべき存在で、アリクイは排除する側。アリクイは自分のことを棚に上げ過ぎじゃないかい?もしかしたら、シロアリの女王にアリクイも酷いことをされたことがあって、その報復にシロアリの巣を定期的に総ナメにしていたのかもしれない。でもシロアリは主食で、シロアリの味が大好きで、食べられないと元気がなくなるくらい大好きってことは、女王に何かされてもされていなくてもやっぱり食べたんじゃないの?とも思う。だってアリクイだし。

善も悪も境界が曖昧だと私は思ったんだよ。そしてわざとそう書いてあるのだと思う。

それで、私がアリクイ夫婦ってどうなの?って思った件がもう一つあって、それは、夫婦が夏帆を「使う」という点。シロアリの瓶詰を取りに行くのもそうだし、ジャガーを排除するのも夏帆にやらせた。なんかさ、アリクイが夏帆を動かしてたら、夏帆の物語というか、アリクイの物語にならない?

シロアリの女王についても悪口がものすごい。見た目がグロテスクだの、醜いの極致だの。性格が酷いだの。アリクイはその女王の子ども食べてるんだよね?シロアリの女王が何をしたか知らないけど、めちゃくちゃディスられながら、子どもを食料として食べられるって、え、もうそれ女王って奴隷じゃんって思うしアリクイ性格悪いよやっぱり。でもアリクイは良い奴?私は納得しないなー。ということで、私はアリクイを非常に怪しい奴らだと疑っている。

完璧な善も完璧な悪もどこにも存在しないから。そういう感じの話が流れてきたら、それは何かがおかしい。

またすぐそっち方面に行ってしまうんだけど、三者がそれぞれ、夏帆、とぎやのおっちゃん、夏帆の母親の影だったとしたらどうだろう。

アリクイが夏帆の中に元々いた影だとして(その可能性もあるという風なことを書いてあったと思う)、アリクイが影として象徴するものは何?

自分を棚に上げて他者を批判すること?他人を使って自分の目的を達成したり、自分を守ったりすること?夏帆は誰の批判もしていないから、おそらく後者なのかなって思う。他力本願なところはあると思う。
それは絵本の中の登場人物を救う夏帆の姿にも見て取れる。登場人物は自分の力で自分を救うのではなくて、夏帆の力によって救われる。同じように、夏帆自身がシロアリの女王と向き合った時、夏帆は誰かが自分を助けてくれなくてはいけないと考えていた。困ったら自分で自分を救うという発想ではなく、困ったら誰でも良いから誰かが自分を救うべきはずだと。他力に頼る思考回路。でも、それとは逆に事は進んで行って、結局自分で自分を救わなければならなくなる。

あと、なんかアリクイってめちゃくちゃ良い奴って印象も悪い奴って印象もなくて、ふんわり、まあ良い奴なんだろうなくらいの善よりのニュートラルな位置をキープしてる。悪ではないけど目立ちすぎない善。夏帆の生き方と同じ。manipulativeと言えばそうだし、うまく生きてると言えばそれもそう。いやアリクイはmanipulativeだと思う。特に奥さんは。

奥さんのシロアリの女王の話も、もしかしたらバイクの男(佐原のこと)と女王が繋がっているかもとかそういう話も、なんでする?そんな話。佐原はアリクイの奥さんと夏帆を引き合わせたって言ってるから、アリクイの奥さんは佐原のことを知ってるはず。なのに何でわざわざ女王と佐原が繋がってるかもとか言う?え?繋がってたの?佐原は性的関係は否定してたけど、連絡くらいはしてたってこと?書いてあった?ここちょっと読み直さないとわからない。

それで、ジャガーについて。ジャガーはとぎやのおっちゃんの体の中に入っていた。夏帆や夏帆のお母さんと比べるとあまり情報はない。とぎやのおっちゃんには家族はいない。だから自分が変化してもわかりにくい。おっちゃんは刃物を作ることができる。刃物はパワーの象徴。推測でしかないけれど、もしかしたらおっちゃんの中にジャガーのような支配欲とか暴力性が影としてあったのかもと思う。おっちゃんの場合はその影を排除できて良かったのかも。

最後にシロアリの女王が夏帆のお母さんの影だとして考えてみる。

夏帆のお母さんは、地主の娘として生まれた。人生の最初の方はお金持ち。そこからお父さんが投資に失敗して、家族が落ちぶれていく。お兄さんは一橋大学を出て、国税庁に就職した。そして今はどこかの税務署の署長をしている。夏帆は母親の兄に良い印象を持っていない。伯父は自分より地位が上であるか下であるか、自分が命令される側なのか命令する側なのか、そういった基準でしか相手と接することができない人物だと、そういう風に思っている。それでも、夏帆のお母さんは、自分の兄のことを無条件に誇りとしている。

夏帆のお母さんは、地元の名もなき短大を卒業して、東京で就職した。お母さんの時には、家族にはもう東京の大学に娘を進学させられるほどの経済的余裕はなかったらしい。夏帆の推察によると、お母さんが医師であるお父さんと結婚したのは、お父さんの人柄に惹かれたとかそういうのではなくて、社会的階層のランクアップを期待してのことらしい。医師の妻ってやつ。兄はエリート。夫は医師。ここまで考えてみると、夏帆のお母さん自身は特に豊かになっているわけではない。自分の兄がエリートというのは、その兄のスペック。自分の夫が医師っていうのも、その夫のスペック。夏帆のお母さんのスペックではない。でも、お母さんはそうやって近くにハイスペックを置くことで、自分のスペックも上がると思ってる。たぶん。そして、そのハイスペックを夏帆にも求めてきた。だから、夏帆が学業でなく、美術で優秀な成績を取っても夏帆を褒めたことがない。いくら美術の世界でうまくやっていても、夏帆はお母さんにとっては「医者になれなかった不出来な娘」に過ぎないのだと夏帆はそう思っている。

まぁ子どもに自分ができなかったことを託すっていうのはよくある話だと思う。今まで仕事柄、結構な数の親子を見てきたけれど、親と子はそっくり笑。誰が一番一緒に時間を過ごして会話をしているかによって子どもの思考や行動が誰に似てくるのかは変わると思うけど、大抵の家庭で、お母さんの影響は大きい。これは私の個人的な印象だけど。自分が本を読まないのに、子どもが本を読まないと悩んだり。自分が(または父親が)ずっとスマホをしているのに、子どもがスマホばかりで心配だと悩んだり。自分は勉強していないのに(勉強をする姿を見せていないのに)、子どもが勉強をしないと悩んだり。過去の自分はどうだったんだい?今の自分はどうなんだい?過去にできなかったことを今できるようになっているならばともかく、今でもできないこと、こうしたいと自分が思っているけれど、自分は行動に移さないこと、そういうことを子どもに投げていないかい?って言いたい…(って。え?言ってないのかwってね。言えないよそんなことw)

それで夏帆のお母さんに戻るんだけど、夏帆は思い通りのスペックにはならなかった。自分のスペックも微妙(だとわかってる。だから外側から補強しようとしてる)そう。お母さんはずっと外側から自分の内側の欠けを埋めようとしてる。でも内側は欠けたまま。スペースがある。私にはそういう風に見える。

そこにシロアリの女王が憑依する。内側が満たされていないから、入り込む隙がある。シロアリの女王はやりたい放題の女王なんでしょ?アリクイの奥さんのゴシップによると。巣ごと乗っ取りたいし。それが本能だし。自己顕示欲がすごい。繁殖もしたい。

夏帆が実家に帰った時に感じた母親の違和感はシロアリの女王、母親の影の部分が表に出てきてたからだと思う。服装が派手になり、下着まで派手になり、高価な化粧品、車も色んな機能が付いたハイスペックな車。また外側に何かを追加して、内側を満たそうとしてる。シロアリの女王は夏帆のお母さんの、虚栄心とかその辺りの影だよね。でも虚栄心を満たそうとしても内側の欠けは埋められない。虚栄心自体が他者の良い評価を伴わなければ満たされないものだから。

シロアリの女王は元々は夏帆をターゲットにしてた。でも、夏帆は難しかったらしい。シロアリの女王が夏帆に取り憑けなかった理由を考えてみた。

夏帆は学校が好きではなかった。美術以外は苦痛だった。でも学校生活をある程度楽しんでいるように振舞わなくてはいけないと自覚していた。それが自分の責務だと思っていた。でもなんでそんな風に思ったのかよくわからないと夏帆は言っている。お母さんからのプレッシャーがあったからじゃないの?と私は思う。勉強をしてほしいお母さんの期待に沿うように頑張ったんじゃないの。夏帆は、表面的にうまく自分を見せて、他人に抵抗なく受け入れられ、目立ちすぎることも、目立たなさすぎることもなく、学校生活を送ったようなことが書いてある。夏帆の名前の由来そのまま。ヨットがすいすい進むような名前。何にもぶつからず、すいすい避けて、すいすい進んでる。それで、夏帆は完全に内側が満たされていたというわけではないけれど、母親と比べると、はるかに安定した内側を持っていると思う。それはお父さんのお陰かもしれない。お父さんは安定してる。夏帆は母親の自分への期待に気づいている。またその期待に添えないことで母親の自分への評価が良くないものだということにも気づいている。そしてそのことに傷つきながらも、やっぱり自分が好きな絵の世界に進む。色々と雑音、雑念はあっても、最終的には自分の道を見失っていないと思う。ヨットだし。夏帆はお母さんとは違って、他人からの評価のために自分の道を選んだわけではない。自分が本当にしたいことをして内側から満たされてる。だから、服装だってそんなにこだわらないし、住むところも都心の高価でお洒落な所ではなくて、のんびりした武蔵境の古い一軒家だったりする。

1つめの投稿で書いたんだけど、私は夏帆はシロアリの女王やジャガーを排除しない方が良かったんじゃないかって思う。特にシロアリの女王。これは別の投稿で言語化してみようと思う。なんかもう今日は頭がぐるぐるしすぎて無理だ笑

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