防災の日を前に実施した「社内宿泊型防災体験」レポート
9月1日は「防災の日」。
防災について改めて考えたり、日頃の備えを見直したりするきっかけとなるこの時期。みなさんは「もし今、大きな災害が起きたら?」と考えたことはありますか?
防災用品を準備したり、避難場所を確認したり。
「災害に備えよう」と思っていても、実際に災害が起きたとき、
どんな状況になり、どのように過ごすことになるのかまで具体的に想像するのは、意外と難しいものです。
そこでキングジムでは、社員の防災意識を高め、災害発生時に自ら考えて行動する力を養うことを目的に、「社内宿泊型防災体験」を実施しました。
一般的な避難訓練とは異なり、非常食の試食やライフラインの停止を想定した防災用品の試用、グループでの避難判断ワークショップなど、実際に被災した際に起こり得るさまざまな状況を想定したプログラムを用意。
災害時の生活や、普段は気づきにくい「困ること」「備えておきたいこと」を考える機会となりました。
今回は、その宿泊企画の様子と、実際に体験してみて感じたことをご紹介します。
「社内宿泊型防災体験」とは?
今回の「社内宿泊型防災体験」は、
2026年7月3日(金)~4日(土)にキングジム本社の共創スペース「Meets(ミーツ)」で実施しました。
参加したのは、広報・開発・総務の社員8名です。

災害が起きたとき、必ずしもすぐに帰宅することが安全とは限りません。
特に大きな災害が起きた場合、交通機関が止まるなどして、
会社に待機したほうがよい場合もあります。
では、実際に会社で一晩過ごすことになったら、
どのような状況になるでしょうか?
「飲み物や食べ物はある?」
「トイレはどうする?」
「帰宅する判断はいつする?」
「安心して就寝できる?」
普段なら当たり前にできていることも、
災害時には思うようにできなくなるかもしれません。
「もし今、大きな災害が起きたら?」
頭の中で想像するだけではなく、実際に体験しながら考えてみる。
それが今回の「社内宿泊型防災体験」です。
さらに今回の体験では、各プログラムの実施後に「良かったこと・役立ったこと」「困ったこと」「今後やってみたいこと」などを付箋に書き出し、参加者同士で共有しました。
体験したからこそ気づけたことや、今後の備えにつながるアイデアなども多く、一晩を通してさまざまな学びが積み重なっていきました。

DAY1|プログラム一覧
開会式・社内の防災体制の共有
まずは開会式からスタート。
今回の体験でどんな状況を想定するのか、
どんなプログラムを行うのか、1泊2日の流れを確認しました。
その後は、社内の防災体制についても確認。
社内の防災規定や災害時の対応についての資料を見たり、
備蓄品がどこに保管されているのかを確認したりしました。

普段働いている会社でも、改めて確認してみると、
「こんなルールがあったんだ」
「備蓄品ってここに置いてあるんだ」と、意外と知らないこともあります。
通常時では意識しづらい「会社の防災」について知るところから、
今回の体験が始まりました。
MY防災ポーチ紹介
続いては、参加者それぞれの「MY防災ポーチ」を紹介。
今回は、キングジムの「災害常備ポーチMore」をベースに、
「自分だったら何を追加したいか?」を考えて、それぞれ持ち寄りました。

中身を見てみると、常備薬に加えて、
生理用品やメイク落としなどの衛生用品、現金、タバコなど、追加したものはさまざま。
選んだ理由を聞いてみると、普段の生活で必要としているものや、
「もしものときにこれがあると安心」という、それぞれの考えが見えてきました。
同じポーチでも、入れるものを少し変えるだけで、
自分の生活に合った備えになります。
実際に中身を見ていく中で、開発担当の社内防災士からも、
備えについてこんなアドバイスがありました。

・女性の場合は、生理用品を数枚入れておくと、非常時だけでなく普段の外出時にも役立つ。
・子どもと一緒に出かけることが多い場合は、家族の連絡先などを記入した「連絡カード」を用意して、普段から一緒に確認しておく。
・普段から食べ慣れている賞味期限の長いお菓子を入れておくのもおすすめ。
・ポーチの中身は夏と冬に見直し、冷感シートやカイロなど季節に合わせて中身を入れ換えるとよい。
「防災用に」と特別なものを揃えるのではなく、
普段の生活を考えて、自分に必要なものを選ぶ。
そんな視点でポーチの中身を考えてみるのもよさそうです。
防災食を使った夕食
夕食は、自社・他社の防災食を実際に食べてみました。

食べてみると、「防災食って意外とおいしい」という声がある一方で、
実際に食べてみたからこそ気づくことも。
例えば、水で戻したものとお湯で戻したものでは、食感や食べやすさが全然違います。
「やっぱり温かい方がうれしい」
「もう少したんぱく質がほしい」
「カトラリーがないと食べられない」
など、食べているうちにさまざまな意見が出てきました。
そして今回は、電気を消して暗闇で食事をするという体験も。

照明を落として食べてみると、普段の食事とはまったく違います。
「思ったより食べづらい」
「何を食べているのかわかりにくくて、おいしさも半減する」
「自然と会話が減る」
など、実際に体験してみないと気づきにくいこともありました。
明かりがない中では、
スマホのライトとペットボトルを使って簡易的なランタンを作ったりと、
それぞれ工夫しながら食事をする場面も。

普段なら何気なくしている「食べる」ということも、
災害時に環境が変わるだけで、思っていた以上に不便になる。
実際に食べてみたことで、防災食そのものだけでなく、
「災害時に食事をする」ということについても考えるきっかけになりました。
避難体験ワークショップ
食事を終えたあとは、
災害時に起こり得る状況を想定した「避難体験ワークショップ」を行いました。
まずは、携帯トイレを実際に使用してみることに。

使い方自体は、水などを使って事前に確認していたものの、
実際に自分でやってみると、思っていたよりも難しいことが分かりました。
「本当に凝固剤で固まるの?」
「袋が外れそうで不安」
など、実際に使ってみることで出てくる疑問や不安もあります。
使い方を知っているだけなら、
なんとなく「これなら使えそう」と思いますが、
実際にやってみると、そう簡単ではありません。
特に災害時は、停電などで明かりがない状況で使うことも考えられます。
普段なら当たり前にできることでも、環境が変わると難しくなる。
だからこそ、災害が起きてから初めて使うのではなく、
何も起きていないときに、一度でも実際に使っておくことが大切だと感じました。
そして、東日本大震災を経験した社員からは、当時の体験談も聞きました。

中でも印象的だったのが、「靴」の話です。
当時、電車が止まり、歩いて帰宅した社員からは、
「革靴やヒールで長時間歩いて、足が痛くなった」という話がありました。
なかには、あまりの足の痛さに途中で靴を脱ぎ、裸足で帰った人も。
その経験から、会社にスニーカーを置くようになった社員もいます。
防災というと、水や食料などを思い浮かべがちですが、
「もし歩いて帰ることになったら?」と考えてみると、靴も備えのひとつです。
携帯トイレも靴も、普段はあまり意識しないものですが、
実際に使ったり、経験談を聞いたりすると具体的に考えられるようになりました。
帰宅判断ワークショップ
続いては、勤務中に災害が起きたときに
「帰宅するか、会社に留まるか」を考えるワークショップを行いました。

グループに分かれ、それぞれ異なる状況が書かれたケースをもとに、
「自分たちならどうする?」を話し合い、判断理由を発表。
最後に、防災士から講評をもらいました。

例えば、「震度6強の地震が発生し、電車は運転見合わせ。自宅までは徒歩で約2時間半、気温は40℃」というケース。
「歩いて帰れそう」と思う一方で、
暑さや余震、会社の備蓄状況なども考える必要があります。
別のケースでは、大雨の中で震度5弱の地震が発生し、道路も大渋滞している状況が設定されました。
同じ「帰宅するか、待機するか」という判断でも、
天候や交通状況、自宅までの距離、家族との連絡状況など、
条件が変わるだけで判断は大きく変わります。
実際にグループで話し合ってみると、参加者の意見もさまざま。
最後に防災士からは、「災害時に正解が1つとは限りません」という話がありました。帰宅するか待機するか。同じテーマでも、天候や交通状況、家族との連絡状況などによって判断は大きく変わります。
今回のワークを通して、災害時の判断は知識だけではなく、普段から考えておくことも大切なのだと改めて感じました。
就寝スペースの設営
続いては、防災テントやマット、着る布団などを使って、就寝スペースを設営しました。
会社で一晩過ごすことを想定して、それぞれ自分のスペースを作ります。

実際に使ってみてまず感じたのが、
「自分のスペースがあるって、思った以上に安心する」ということ。
テントがあることで周囲と空間を分けられるので、
着替えたり、汗を拭いたりするときにもプライバシーが守られます。
避難生活では、こうした環境が心理的なストレスを減らすことにもつながるのだと感じました。
また、着る布団は、見た目から想像していた以上に肌触りがよく、
一晩着て過ごしてみても思った以上にぐっすり眠れました。

マットも、あるのとないのとでは寝心地が全然違います。
床にそのまま寝るのとは大きな差があり、「寝る環境って大事だな」と実感しました。

一方で、実際に一晩過ごしてみると、
普段なら気にならないような周りの音や環境音が思った以上に気になることも。
「音を立てないように気を遣う」という声もあり、
泊まってみたからこそ分かることもたくさんありました。
避難生活では「寝る場所を確保する」だけでなく、
プライバシーや周囲の音など、少しでも安心して過ごせる環境をつくることも大切なのだと感じました。
消灯
DAY2|プログラム一覧
防災食を使った朝食
翌朝は、防災食を使った朝食からスタート。

夕食に続いて防災食を食べてみると、
2日目ということもあり、少し味に飽きてきたという声もありました。
もちろん防災食を備えておくことは大切ですが、
今回実際に続けて食べてみて、
「どんなものなら無理なく食べ続けられるか」を考えることも大切だと感じました。
普段から食べ慣れている食品で、
長期保存できるものをいくつか備えておけば、
非常時でもあまり違和感なく食べられそうです。
「非常食だから」と特別なものだけを用意するのではなく、
普段の食事に近いものも取り入れておく。
そんな備え方も、長く続く避難生活では大切なのかもしれません。
防災商品レビュー
朝食後は、KOKOBOの「災害衛生セット」を、実際に使ってみました。
今回は、セットに入っている大判おしぼり(からだ拭き)、ドライシャンプー、歯磨きシートを体験。

まず、大判おしぼりとドライシャンプーは、
お風呂に入れない状況では本当に助かると感じました。

特に夏場は汗をかきやすいので、
体や髪をすっきりさせられるだけでも、一気に気分が変わります。
そして、個人的にすごくよかったのが歯磨きシート。
使う前は「シートでちゃんと磨けるのかな?」と思っていましたが、
意外としっかり歯を磨くことができました。
歯磨き粉や、うがいをするための水がなくても歯を磨けるので、
断水時にもかなり助かりそうです。
今回使ってみて改めて感じたのは、「清潔にできること」も、
被災生活を少しでも快適に過ごすための大切な備えのひとつだということ。
「これは備えておきたい」と思えるものが、
実際に使ってみることで具体的に見えてきました。
閉会式・全体振り返り
最後は、参加者全員で一晩の体験を振り返りました。
感想を共有している中で多かったのが、
「これは実際にやってみないと分からなかった」という声です。
印象に残ったプログラムは人それぞれ。
携帯トイレの使い方だったり、寝る場所の確保だったり、防災食の有難さだったり。
でも共通していたのは、実際に体験してみたことで、
これまであまり想像していなかった「災害が起きた後の生活」に目を向けられたことでした。

終わりに
今回、会社で実際に一晩過ごしてみて改めて感じたのは、
「知っている」と「やってみる」は全然違うということです。
例えば携帯トイレ。
使い方は知っていたつもりでしたが、
実際に試してみると「思ったより難しいな」と感じました。
頭では分かっていたつもりのことも、
体験してみると新しい気づきがたくさんありました。
災害への備えというと、どうしてもモノを揃えることに目が向きがちです。
もちろんそれも大切ですが、
備えた後に「実際に使ってみる」という経験も同じくらい大切なのかもしれません。
この記事が、「もし今災害が起きたら?」と考えたり、
防災用品を一度試してみたりするきっかけになればうれしいです。
KOKOBOはこれからも、「日常に寄り添った防災」をコンセプトに、
防災をもっと身近に、もっと続けやすくするヒントをお届けしていきます。
