見出し画像

がんだった私に届いた母の祈り――卒園文集に込められた、勇気づけの言葉

3月になると、空気が少しだけやわらぐ感じがします。
卒業の歌が流れ、「別れ」と「はじまり」が同時にやってくる季節です。
そんな時期になると、私はあるできごとを思い出します。
今日は、なつかしい思い出について書いてみたいと思います。


1.母からのメッセージ

12年前のことです。
暮れの片づけをしていたとき、
小さなダンボール箱の中から、
歴代の卒業アルバムや、なつかしいノートなどが出てきました。

1番古かったのは、幼稚園の卒園文集。
ガリ版刷りの、手書きのページ!
そこには、母が5歳の私に宛てたメッセージがありました。

葵月代 おめでとう
夢のように過ぎ去った昨日までは、
使い古したカレンダーです。

病気で苦しんだことも
悲しく泣いたことも
みんな忘れて、春の雪どけとともに
希望と期待で、1年生になるでしょう。

冬の寒い吹雪の日も
また照りつける夏の暑い日も
それはみんな今日の試練なのです。

キラキラと光る大空にはエネルギーがいっぱい
葵月代の小さな体には
如何なることにも耐える弾力が潜んでいることを
母は信じたい。

祈る——
強く正しく朗らかに、美しく明るい花のごとく

母より

このメッセージを書いたときの母は、40歳。
5歳の私は、とても体が弱く、
よく病院に通っていました。
小学校生活をちゃんと送れるか、
医師が心配するほどだったそうです。

そして、この文章と再会した年、
私はがんの手術を受けていました。

何十年も前に書かれた母の祈りが、
時間を越えて、静かに私の胸に届いた瞬間でした。

涙が止まりませんでした。

2.「信じたい」という言葉

今になって思うのです。

母は「あなたは強い」と断言したのではなく、
「信じたい」と書きました。

そこには、
願いと祈りと、少しの不安と、
それでも信じるという、母なりの
決意があったのだと思います。

今の私は、あの頃の母より年上になりました。
母がどんな思いでこの言葉を書いたのか、
ようやく少しわかるようになりました。

そして、気づいたのです。

あのとき母が信じてくれた「弾力」は、
今は私が自分に向けて信じ直す力になっているのだと。

3.祈りは、内側に残る

セルフ・コンパッションの考え方に出会ってから、
私はよく、自分にこう問いかけます。

「もし母が今ここにいたら、
どんな言葉をかけてくれるだろう?」

すると、不思議なことに、
責める声ではなく、
静かなまなざしが浮かびます。

それは
「ちゃんとしなさい」ではなく、
「あなたの中には弾力がある」と信じるまなざしです。

私たちは、
誰かに信じてもらった記憶を、
意外なほど深く体の中に持っています。

そしてその記憶は、
困難なときに、
神経の奥で私たちを支えてくれることがあります。

4.卒業は、終わりではなく「受け取り直す」こと

卒業の季節。
何かを終える人も、
何かを始める人もいるでしょう。

もし今、心が揺れている人がいたら、
少しだけ思い出してみてください。

あなたを信じてくれた、誰かのまなざしを。
祈ってくれた言葉を。
あるいは、まだ気づいていないけれど、
確かに注がれていた愛情を。

そして今度は、
そのまなざしを、
自分自身に向けてみる。

「私の中にも、弾力がある」
そう信じてみる。

母の祈りは、
今も私の中で生きています。

きっと、あなたの中にも、
大切にしまわれている
言葉があるかもしれません。

【著書のご案内】
物語を通して、心理学をより身近に感じてもらいたくて書きました。
amazonで試し読みもできます。
📚『ココロ・キングダムⅠ ~物語で学ぶ、しなやかな心の育て方~自己受容と希望の旅』は、amazonからペーパーバックと電子書籍で発売中です!

電子書籍版は、Kindle Unlimited でもお読みいただけます。
💫すでに会員の方は、追加料金なしで今すぐご覧いただけます。

いいなと思ったら応援しよう!

佐高 葵月代 最後までお読みいただきありがとうございます。 心理学をわかりやすく伝え、ホッとしてもらえるひとときをお届けしたいと思っています。 もしこの記事があなたの心に寄り添えたなら、応援してもらえると嬉しいです。