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【後編】世界屈指の産油国なのに、ガソリン代が世界一高い?~ノルウェーに7年半住んでわかった「豊かさ」の正体~

前編で、ノルウェーがいかに石油で潤っているかを話した。それを聞くと、「じゃあ、現地の人は安くガソリンを入れられて、悠々自適な生活をしてるんでしょ?」と思うかもしれない。でも、それは正反対。

石油は出る。
でも、生活にその恩恵がダイレクトに降ってくることはない。

今回は、そんなノルウェーの不思議な日常の話。



1. ガソリンスタンドで目を疑う「リッター400円」

ノルウェーの街を歩けば、ガソリンスタンドの電光掲示板に表示される価格に、毎回クラクラくる。

ロシアによるウクライナ侵攻の影響と、コロナ禍からの経済回復による需要の急増が重なったとき、リッターの価格が過去最高値となった。当時の為替レートで換算すると、リッター400超えだったと記憶している。

「産油国なのになんで!?」と、何度も叫びたくなった。

理由は、政府があえて高い税金をかけているからだ。

価格の約半分は炭素税や道路税などの税金で占められており、電気自動車(EV)への移行を強力に推し進める政策が背景にある。

つまり、政府は環境保護のために意図的に燃料税を高く設定しているというわけだ。

「石油で稼いでいるけれど、自分たちは石油に頼らない未来を作る」という、驚くほどストイックな国の方針が、この価格に現れている。

2.  テスラが「国民車」? 街中に溢れるEVの謎

そんな高いガソリン代を背景に、ノルウェーの日常はガラリと変わった。 私が住み始めたころ(2007年〜)、電気自動車(EV)はまだ珍しい存在だった。 ところが、そこからの変化がとにかく速い。

ノルウェーは、「2025年までに、すべての新車販売をEVや水素車にする」という世界初の目標を掲げ、本気で政策を動かした。

その結果、2019年3月には新車登録台数で、EVがガソリン車・ディーゼル車の合計を初めて上回った。 通年で逆転したのは2020年。 世界で初めて、「年間で売れた車の半分以上がEV」という国になったのだ。

そして昨年2025年、 年間のEV販売比率はついに 95.9%。 ガソリン車は、ほぼ市場から姿を消した。 ここまで来ると、街を走るテスラは“国民車”のような存在だ。

エンジン音のない街は驚くほど静かで、空気は澄んでいる。 石油大国とは思えないほどに。

「石油を売ったお金で、EVを買うための補助金を出し、自国では石油を燃やさない」 この潔さこそが、ノルウェー流。

いかがだろうか、この有言実行ぶり。


EVについては、まだまだ語りたいことがある。 充電インフラの話、冬の航続距離、補助金の仕組み、そして市民のリアルな声…。 そのあたりは、また別の投稿でゆっくり書こうと思う。

3. 「産油国」なのに、1,000円で牛乳2本も買えない

石油で潤う国に住んでいるのに、日常の買い物でいつも私の財布は痛んだ。

スーパーで牛乳を手に取ると、1パックが35クローネ前後。現地価格だけで日本の約2倍。私が住んでいた頃はギリギリ買えていたが、今の為替が加わると、1,000円札1枚で牛乳2本すら買えない。それが産油国ノルウェーの今の日常だ。

外食はさらに上を行く。ランチ一食で4,000〜5,000円は当たり前。コンビニのドリップコーヒー一杯でさえ500円以上する。日本の感覚でいると、何を買うにも「え、これで?」という瞬間が続く。

「石油で稼いでいるのに、なぜこんなに高いのか」

答えは単純で、その利益は個人の財布には落ちてこないからだ。国が貯めて、国が使う。それがノルウェーの仕組みだ。

4. 「豊かさ=消費」ではない世界

中東情勢の影響で原油価格が上がっても、ノルウェー人の個人の財布が急に潤うことはない。その利益はすべて、将来の年金や福祉を支える基金へと、淡々と積み立てられている。

産油国なのに、自分たちの生活にはあえて厳しく。

石油マネーでキラキラした生活を送るのではなく、質素で平穏な日常を美徳とする。7年半住んで気づいたのは、彼らが守ろうとしているのは「石油で買った贅沢」ではなく、「持続可能な未来」だということだ。

「豊かさ=消費」ではない世界を見せてくれたノルウェー王国。


私たちが今日選ぶ「豊かさ」は、未来の誰かを笑顔にするものになっているだろうか。



最後まで読んでいただきありがとうございました!

他にも、こんな物語を綴っています。
お時間ある時にのぞいてみてください。


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