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【102歩目】胡蝶の夢を読む ① - 夢とうつつ -

今回から「胡蝶の夢」について。


1.胡蝶の夢を読む。


❝昔者莊周夢為胡蝶,栩栩然胡蝶也,自喻適志與。不知周也。俄然覺,則蘧蘧然周也。不知周之夢為胡蝶與,胡蝶之夢為周與。周與胡蝶,則必有分矣。此之謂物化。❞

➙ その昔、私こと荘周は夢の中で蝶になった。 夢の中で蝶としてひらひらと心地よく空を舞っていた。自分が荘周であることなんてまったく意識になかった。

 やがて、ふと目が覚めると、現実の荘周にもどっていた。

 その時、自分が夢を見て蝶になっていたのか、それとも、蝶が荘周を夢見ているのか分からなくなった。

 荘周と蝶との間には、形の上では確かに区別があるはずである。 このような変化のことを「物化(ぶっか)」と呼ぶのである。

『荘子』斉物論 第二

『荘子』と言えば「胡蝶の夢」です。

 

池大雅「胡蝶の夢」

 日本でも古くから愛され、現在の日本の教科書にも載っている、荘子を代表するお話です。この「胡蝶の夢」というのは、非常に短い文章ですが、さまざまな切り口がありまして、それをいくつかご紹介しようかと思います。今回はまず「夢とうつつ」という観点で。

2.胡蝶の夢の3ステップ。

 今回もステップを踏んで読んでみようと思います。この胡蝶の夢は3ステップに分けることが可能でしょう。すなわち、

① 現実の荘周
② 夢の中で蝶として空を舞う荘周
③ 現実にもどって②を振り返る荘周  です。

 ①の荘周はいわゆるノーマルな荘周です。日常生活を送っている、何の変哲もない普段の荘周です。

 ②の荘周は、夢の中の荘周です。この時の荘周は夢の中で蝶として空を舞っています。文中にもあるように、①の現実の荘周の存在をすっかり忘れて、夢の中を生きています。

 ③の荘周は、①②を経て再び現実に戻った荘周です。そして②を振り返った時、荘周は「荘周が夢を見て胡蝶になったのか」、「胡蝶が荘周になった夢をみているのか」の区別がつかなかったとしています。

 ここから、一般的な解釈として「夢と現実(うつつ)には明確な境界線がない」というものがあります。

3.夢とうつつの相対性。


太極図

 夢というのは不思議なもので、夢の中では我々は夢の世界を現実として生きています。「胡蝶の夢」では、荘周は蝶として空を舞っている夢の中で、「これが夢だ」と自覚しているわけではありません。ステップ②の夢も、夢の中の荘周にとっては現実なんです。
 こう考えると、①のノーマルな荘周も、実は夢を見ている可能性を排除しきれません。我々が今あるとしている現実も、実は、夢の中なのかもしれないわけです。にんべんに夢と書いて「儚い(はかない)」と読みますが、現実だって同じように「儚い」可能性は十分にあるわけです。

4.大いなる目覚めは大いなる夢から。


❝夢飲酒者,旦而哭泣。夢哭泣者,旦而田獵。方其夢也,不知其夢也。夢之中又占其夢焉,覺而後知其夢也。且有大覺而後知此其大夢也,而愚者自以為覺,竊竊然知之。君乎,牧乎,固哉。丘也,與女皆夢也。予謂女夢,亦夢也。是其言也,其名為弔詭。萬世之後,而一遇大聖知其解者,是旦暮遇之也。❞

➙ 酒を飲んた夢を見た者が、朝目覚めて泣き叫ぶことがある。逆に、夢の中で悲しく泣き叫んでいた者が、朝目覚めて狩りに出かけることもある。 夢を見ている最中は、自分が夢を見ているとは気づかない。夢の中でさらにその夢の占いをすることさえある。目覚めて初めて、あれは夢だったと知るのである。

 そして、いつの日か『大いなる目覚め(大覚)』を迎えて初めて、この現実の人生そのものが『大いなる夢(大夢)』であったと知るのだ。それなのに、愚かな者たちは自分が目覚めていると思い込み、知ったかぶりをして『これは君主だ、これは牧畜の奴隷だ』と人を区別している。なんと頑迷なことだろう。

 実のところ、孔子も君も、みな夢を見ているのだ。そして、私が君を『夢を見ている』と言っている、この私自身もまた夢を見ているのだ。このような事柄を世間では『弔詭(ちょうき:奇妙で矛盾した言葉)』と呼ぶ。 万代ののち、たった一人でもこの意味を理解できる大聖人に巡り合えたなら、それこそ朝か夕方にすぐ出会えたような幸運なことだと思うのだよ。」

『荘子』斉物論 第二

 荘子は孔子のような賢人も含めて、人々は「大きな夢(大夢)」をみているのだと言います。人々は斉しく自分では気づかない大きな夢を見ているのだと。そこだけを読むと救いようのない話のようにも感じますが、そのうえで、荘子はこの「大きな夢(大夢)」から「大きな目覚め(大覚)」が訪れる、つまり、夢は大いなる目覚めのための苗床ともなりうるのだともしています。

❝So long ago... was it in a dream, was it just a dream?
I know, yes I know
It seemed so very real, it seemed so real to me

Took a walk down the street
Thru the heat whispered trees
I thought I could hear (hear, hear, hear)
Somebody call out my name as it started to rain
Two spirits dancing so strange❞

➙ ずっと昔のこと…… あれは夢の中だったのだろうか、それとも、ただの夢にすぎなかったのだろうか。 分かっている、そう、僕には分かっている。 あれは僕にとって、あまりにも、あまりにもリアル(現実)に思えたのだ。

 通りを歩いていくと、熱気をはらんだ木々がサラサラと囁(ささや)く。 聞こえたような気がした(聞こえた、確かに) 雨が降り出すなか、誰かが私の名前を呼ぶ声が。 奇妙に踊る、ふたつの魂。

'#9 DREAM' 
written by John Lennon 

あなたも私も夢を見ている。

というわけで、夢見るために今日はここまで。続きは次回お会いしましょう。それでは、I'll see you in my dreams!!


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