長く続く夫婦の条件を、4つの研究から考える
「長く続く夫婦には、どんな共通点があるのだろう」
結婚した後、ときどき考える問いです。
よく話し合うこと。感謝を伝えること。喧嘩をしないこと。いろいろな答えが思い浮かびますが、一つの習慣だけで夫婦の将来が決まるほど、関係は単純ではなさそうです。
最初に分けておきたいのは、「関係が続いていること」と「二人が関係に満足していること」です。離婚しなくても苦しい関係はありますし、関係を終えることが本人の安全や尊厳を守る選択になる場合もあります。
この記事では、長期的な夫婦・カップル関係を扱った4つの研究を紹介します。そのうえで、研究から直接分かったことと、そこから私が考えたことを分けて書きます。
研究1:関係の満足度と強く結びついていたもの
Joelたちの2020年の研究は、43の縦断データを統合し、11,196組のカップルについて、関係の質を予測する要因を機械学習で比較しました。
現在の関係の質を説明するうえで強かった「関係特有の要因」は、次の5つでした。
相手がこの関係を大切にしているという認識
相手への感謝
性的な満足
相手も関係に満足しているという認識
葛藤
ここで大切なのは、相手の性格や客観的な条件よりも、「自分が二人の関係をどう経験しているか」という本人の認識が強い予測力を持っていたことです。
ただし、この研究が「この5つを増やせば必ず関係が続く」と証明したわけではありません。扱っている中心的な結果は関係の質や満足度で、離婚しないことそのものではありません。また、誰の満足度が今後上がり、誰の満足度が下がるかという変化は、ほとんど予測できませんでした。
満足している関係の現在地には一定の共通点が見える一方、関係がこれからどう変わるかは簡単には読めない。そこまで含めて、この研究の結果だと受け取りました。
研究2:外から来るストレスを、二人でどう扱うか
Falconierたちの2015年のメタ分析は、57の報告から得た72の独立サンプル、合計17,856人をまとめています。
焦点は「ダイアディック・コーピング」です。仕事、病気、家計、育児などのストレスに対して、片方だけの問題にせず、ストレスを伝え、支え合い、二人で対処する過程を指します。
分析では、二人でのストレス対処と関係満足度の間に、全体で r=.45 の関連がありました。心理学の相関として無視できない大きさですが、これも因果関係の証明ではありません。満足しているから協力しやすい可能性も、協力できるから満足しやすい可能性もあります。
それでも、「誰が悪いか」を決める前に、「二人の外から来た負荷をどう扱うか」と考える視点は役に立ちそうです。
研究3:続かなかった夫婦を分けた「幻滅」
Hustonたちの2001年の研究は、新婚期の夫婦を追い、その後13年間の満足や離婚との関係を調べました。
離婚へ向かった夫婦を分けたのは、単に否定的なやり取りが増えたことだけではありませんでした。愛情が弱まる、好意を表す行動が減る、相手は自分に応えてくれるという確信が下がる、気持ちの迷いが増える、といった「幻滅」の変化が特徴でした。
これは、愛情表現を増やせば離婚を防げるという処方箋ではありません。新婚期の変化が、その後の経過とどう結びついていたかを示した研究です。
また、続いたかどうかに近い結果を扱っていますが、対象や時代、文化の違いがあります。すべての夫婦へそのまま当てはめることはできません。
研究4:「話し方を直せば解決」とは限らない
夫婦関係については、会話の改善が万能の答えとして語られがちです。
Lavnerたちの2016年の研究は、431組の新婚夫婦を対象に、9か月間隔で4回、会話の様子と関係満足度を追いました。
同じ時点で比べると、満足度の高い夫婦ほど会話が肯定的で、否定性が少なく、効果的でした。しかし時間を追ってみると、「よい会話が後の満足度を上げる」「高い満足度が後の会話をよくする」という両方向の結びつきは一部にあったものの、どちらも強く一貫したものではありませんでした。
話し合いは大切です。ただ、話し方だけを整えれば、経済的な不安、長時間労働、病気、育児や介護の負担まで消えるわけではありません。会話を唯一の原因や解決策にすると、うまくいかない責任を二人の技量だけに背負わせてしまいます。
ここからは、研究を読んだ私の考察
4つの研究を並べると、続く夫婦は「喧嘩をしない夫婦」というより、二人の関係を共同で扱える夫婦なのではないかと思います。
意見が違うこと自体ではなく、違いが出たときにも、相手がこの関係を大切にしていると感じられること。
助かったことや、相手が担っていることが見え、感謝が言葉や行動に表れること。
仕事や家計、育児、介護などの負荷を、片方の弱さではなく、二人が向き合う課題として扱えること。
そして、いまのやり方が合わなくなったときに、決め方そのものを見直せること。
これは「いつも仲よく協力しよう」という精神論ではありません。疲れて話せない時期も、片方が多く支える時期もあります。関係の不調には、本人たちの努力だけでは変えにくい生活条件や社会的な負荷も影響します。暴力や支配がある場合は、関係を続ける努力より、安全の確保や外部への相談が優先されます。
研究が示しているのは、長続きするための必勝法ではなく、関係を見るためのいくつかの手がかりです。
「正しく話せているか」だけでなく、「相手が関係を大切にしていると感じられるか」「感謝が見えるか」「外から来るストレスを二人の課題として扱えているか」。
ときどき、この三つを確かめることが、二人の現在地を知る助けになるのだと思います。
参考にした研究
Joel, S., Eastwick, P. W., Allison, C. J., et al. (2020). “Machine learning uncovers the most robust self-report predictors of relationship quality across 43 longitudinal couples studies.” Proceedings of the National Academy of Sciences, 117(32), 19061–19071. https://doi.org/10.1073/pnas.1917036117
Falconier, M. K., Jackson, J. B., Hilpert, P., & Bodenmann, G. (2015). “Dyadic coping and relationship satisfaction: A meta-analysis.” Clinical Psychology Review, 42, 28–46. https://doi.org/10.1016/j.cpr.2015.07.002
Huston, T. L., Caughlin, J. P., Houts, R. M., Smith, S. E., & George, L. J. (2001). “The connubial crucible: Newlywed years as predictors of marital delight, distress, and divorce.” Journal of Personality and Social Psychology, 80(2), 237–252. https://doi.org/10.1037/0022-3514.80.2.237
Lavner, J. A., Karney, B. R., & Bradbury, T. N. (2016). “Does couples’ communication predict marital satisfaction, or does marital satisfaction predict communication?” Journal of Marriage and Family, 78(3), 680–694. https://doi.org/10.1111/jomf.12301
※この記事は研究論文を参照し、筆者の考察と区別して構成しています。文章の整理・執筆には生成AIを活用し、論文情報と数値は原文・書誌情報で確認しました。
