ジュニアサッカー指導者の苦境

こども達の技術レベル、戦術的な思考能力は非常に高いレベルになってきています。
前回の記事では、そんな中で指導を行う難しさを書いてみましたが、この問題について、そもそも指導者側の力量、少し丁寧に言うと指導者の指導、支援環境に問題があるのではないかというのが私の考えです。

私は小学校1年生からサッカーをはじめ、小学生年代は少年団、中学校と高校の部活を経て、大学は体育会のサッカー部で一応、全国大会のメンバーに選ばれることもできました。プレイヤーとしては、いわゆる普通のサッカー人生を歩んできたレベルです。
〇〇選抜や〇〇代表のようなものとは縁がなく、地域の仲間とサッカーで友情を育んできた、そんなレベルですから、自分が指導を受けた指導者といってもそこまで数は多くありません。
多くないもののいろいろな方がいました。とにかく昭和で恐ろしく、サッカーが嫌いになりかけた方、サッカーの奥深さを知りサッカーにもう一度はまるきっかけをくれた方、サッカー感が合わずたびたび衝突した方、などなど、いろいろな指導者の方の指導を受け、今の自分のサッカー感があると思います。今となってはすべての指導者の方たちから得た学びは私の財産です。
日本サッカーのレベルの高まりは、ジュニアサッカーの発展あってのものです。いわゆる少年団とはいっても、非常にレベルの高い選手もいます。
選手たちに私が選手として得た経験だけで練習、指導をしても前時代的な感覚を持ちます。それは選手の反応からひしひしと伝わってきます。
原因はおそらく練習メニューというよりはこども達への接し方に因る部分が大きいのではないかと最近は考えています。
様々な指導者の方たちがYouTubeなどで指導メニューの動画などを出していますが、そこに特別なメニューがあるようには思いません。メニュー自体ではなく、私たちが小学校高学年で取組んだメニューも低学年から取り組んでもいいのかなという印象を受ける程度です。
しかしながら、選手たちへの伝え方、指導の仕方には大変参考なる面があります。
こども達は真っ先に答えに辿りつくことが正解であると疑いません。その気持ちは大切で、その気持ちがあるから競争するメニューに取り組むときには本気度が違います。
しかし、思考しながらプレーすることは苦手なのだろうというのはひしひしと伝わってきます。
いつも一番を目指し、ドリルメニューも一番前、あいさつなども先陣を切る選手がいますが、思考しながら動く、ボールに触るメニューでは体が停止します。この選手が最も象徴的ですが、そういったことが苦手な選手に対し、指導者がどのように伝えていくか、この点が私としては最も現代の指導者の活動環境が過酷になっているという面を表しているように感じます。

こういったこども達に少しずつヒントを与え、導いてあげ、思考能力を高める、しかも土日の練習の時だけ、これはもう無理難題です。
翌週になれば小学校低学年のこどもです。先週の困難などほとんど記憶にない子が大半ではないでしょうか。
どれだけ真剣に向き合っても、なかなかそれが成果として結びつかない、学校の先生でもどれだけの方がそこまでこども達と向き合って日々過ごすことができているのでしょうか、というレベルの対応が少年団サッカーでも求められているように感じます。

指導者の指導レベルについては、様々議論があると思いますが、ある程度は自分で学ぶことができると思います。もっとプロの下部組織や協会連盟が本気を出して指導者のレベル向上に取り組むべきであると、先日のワールドカップのスペイン優勝を機にますます思うところではありますが、指導メニューや指導の考え方については、ある程度、自分自身で高めることができる環境はあるように思います。

その点よりも、私としてはこども達の思考する能力を高めながら、サッカーの技術レベルやモチベーションの波の激しいこども達を適切に導くという難題を、サッカーレベルの向上によって草の根レベルの少年団の指導者にも求められているという点が指導者の苦境をもたらしているように感じます。

前回にも書きましたように私としては、少年団はサッカーをしたいこども達の受け皿であるべきだという考えです。しかしながら、レベルの高いこども達をないがしろにしていいわけではありませんし、技術レベルが低いこども達も将来化ける可能性があるわけです。もっと大げさに言えばサッカーに限らず生きていく上での思考能力の向上はとても大切なことです。

もしかすると、ジュニアサッカーに限らず、これは少年スポーツ全体での苦境かもしれません。話がそれますが、職場の中には作業はできるのですが少しのイレギュラーにも対応できない若手がいます。こういった方を見るに、こどものころから考える力を養うのは大切だよなと、勝手に反面教師にさせて頂いるわけですが、そういった難しい問題を仕事の休みの土日を使って取り組んでいるのですから、私と同じ境遇の多くの少年団コーチ達はみんな大変だよなあと思わずにはいれません。

私としては、こういった草の根の指導者達に対する支援がもう少し手厚くてもいいのではないかと思います。私の勝手な想像ですが、ヨーロッパの若い指導者達にはお手本となる先生、師匠が回りにたくさんいるのではないかと思います。
日本はまだ、サッカーの歴史を重ねている段階です。ヨーロッパでは多くの先人がお手本やヒントを提示できる環境にあり、指導者の能力を育む環境、素地があるのではないのかというのが、ヨーロッパに行ったこともない私の想像です。
そういった教えを乞うための環境が裾野まで広がっていない点が最も指導者の苦境をもたらしている要因なのではないでしょうか。
我々の回りはお手本と言ってもチームにいるベテランコーチや自分が指導を受けた方々がせいぜいなような気がします。そうではなくて、こども達がサッカーを通してプレイヤーとしても人間としても思考力を高め、人としての成長を促すことができるプロ達がもっとたくさん出てくる必要があるように思います。
真に日本サッカーが強くなるころには草の根の指導者たちにもどういった形かはさておき、何かしら支援や学べる環境が整った状況になっていて欲しいと思います。
ライセンスの取得も大切でしょうが、そういった形にこだわらず、こども達にいまどのような指導、接し方が必要であるかを学べる場を与えていただくことができれば、指導者全体の能力向上、サッカーレベルの底上げ、こども達の能力の向上が図られるのではないでしょうか。

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