SASUKEワールドカップ2026 総括・感想

SASUKEワールドカップ2026を観た。


前回大会以上にチーム戦としての戦略性が強くなり、若手の台頭、海外勢の進化、そして最後には日本対アメリカの頂上決戦まで、非常に見応えのある大会だった。

普段のSASUKEとは違い、選手個人の実力だけではなく、出場順、ポイント、チーム内での役割、体力管理までが結果を左右する。

ここでは1st STAGEからFINAL STAGEまで、個人的に印象に残った選手や場面を中心に振り返っていきたい。

1st STAGE 第1ヒート

SASUKEワールドカップ2026、最初の挑戦者となったのはTEAM JAPAN REDの山本良幸。

いきなり72.4秒という好タイムを記録し、日本チームに勢いをつける素晴らしいスタートとなった。

何より驚かされたのは、左手に怪我を負っている状態でありながら、それをほとんど感じさせないスピードでクリアしたことだ。

特に印象的だったのがドラゴングライダーである。

普段であれば右手を順手、左手を逆手にする形で挑むところを、今回は左手の状態を考慮し、左手を順手、右手を逆手にする形へ変更していた。

怪我がある中でも、その状況に応じて攻略方法を変え、それでもスピードを落とさずにクリアする。

山本の技術力だけでなく、対応力の高さも感じられる場面だった。

1st STAGEに関して言えば、やはり現在のSASUKE選手の中でも最強クラスの安定感を持っている選手だと思う。

続いて登場したのがTEAM USAのダニエル・ギル。

結果はドラゴングライダーでのリタイアとなった。

映像を見る限り、もう少しドラゴングライダーの止め具の強度があれば脱線せずに済んだのではないかとも感じた。

ただ、他の選手も同じ条件で挑戦している以上、そこは仕方のない部分でもある。

世界でもトップクラスの実力者だけに、かなり早い段階で姿を消してしまったのは残念だった。

そしてTEAM JAPAN U20の長野塊王。

ここ数年の成長を見ていて感じるのは、もはや「長野誠の息子」という肩書きだけで語られる選手ではなく、「長野塊王」という一人のSASUKE選手として存在感を確立しつつあるということだ。

今回もしっかりと1st STAGEをクリア。

チームの先頭バッターとして、十分に役割を果たしたと思う。

父親が偉大すぎるからこそ常に比較される宿命にあると思うが、その中で着実に自分自身の結果を積み重ねているところに成長を感じた。

一方、TEAM JAPAN BLUEの日置将士は、長年成功させてきたドラゴングライダーでまさかのリタイアとなった。

飛び移った後の距離がわずかに足りなかったように見えた。

これまで安定して攻略し続けてきたエリアだっただけに、かなり意外な結果だった。

海外勢の中で第1ヒート、特に印象に残ったのがTEAM POLANDのパヴェウ・ムラフスキである。

見ていて、日本のSASUKEをかなり研究してきたことが伝わってきた。

海外選手に時折見られる勢い任せの攻略というよりも、一つひとつのエリアを丁寧かつ正確に処理していくスタイルで、日本人選手に近い攻略の仕方だったように感じる。

そしてTEAM FRANCEのイリアン・シェリフ。

過去の日本版SASUKEでも序盤で苦しんでおり、今回のワールドカップでも早い段階でリタイアしてしまった。

日本版SASUKEの序盤エリアに対して、少し苦手意識が生まれているのではないかとも感じてしまう。

ただ、大会前の時点で海外選手の中でもクリフハンガーディメンションを攻略するほどの実力を持つ選手である。

だからこそ、序盤を突破して3rd STAGEまで進むことができれば、一気に好成績を残す可能性は十分にあると思う。

ぜひもう一度、日本のSASUKEでその実力を発揮してほしい。

トップバッターの重要性

第1ヒートを振り返るうえで、やはり日置将士がドラゴングライダーで落下したことは、TEAM JAPAN BLUEの1st STAGE敗退に大きく影響したと思う。

もちろん日置一人の責任という話ではない。

ただ、トップバッターがリタイアしたことで、その後に続く選手たちには「確実にクリアしなければならない」「しかもある程度タイムも出さなければならない」というプレッシャーがかかることになった。

今回のワールドカップを見ていて改めて感じたのが、トップバッターの重要性である。

ワールドカップ2024年では1チーム5人だったのに対し、2026年は4人編成。

1人あたりの比重が大きくなったことで、最初の一人がチーム全体に与える影響もより大きくなったように感じる。

そんな父・日置将士の落下を見た息子の日置琉青が発した「琉青がお手本見せてやるか」という言葉も印象に残った。

まだ13歳。

それでも父親の失敗を目の前にして萎縮するどころか、そう言って自分の競技に向かっていく。

その一言に、日置琉青の肝の据わり方がよく表れていたと思う。


1st STAGE 第2ヒート

第2ヒートでまず印象に残ったのが、TEAM FRANCEのマチアス。

第1ヒートでイリアン・シェリフが早々にリタイアした中、それを取り返すような好タイムでクリアした。

チーム戦では、一人のミスを次の選手がどのようにカバーするかも大きな見どころになる。

その意味でも、非常に価値のあるクリアだったと思う。

そしてTEAM JAPAN BLUEから登場したのが、「最強銀行員」宮岡良丞。

現在のSASUKEでFINAL STAGEをクリアする可能性を持つ選手の一人だと思っているだけに、TEAM JAPAN BLUEへの選出にも納得感があった。

ただ、日置将士がすでにリタイアしていたことを考えると、宮岡には単なるクリアではなく、ある程度速いタイムでのクリアが求められていたと思う。

その意識から少し焦りが出たのか、フィッシュボーンでは途中でバランスを崩しかける場面があった。

しかし、そこで落ちずに耐え切った体幹はさすが最強銀行院だった。

さらに印象的だったのが、その直後に自分自身へ「落ち着け、落ち着け」と言い聞かせるようなジェスチャーをしていたことだ。

あの瞬間にすぐ自分の心理状態を認識し、修正できるところに宮岡の強さを感じた。

結果は113.9秒でのクリア。

もちろんクリアしたこと自体は大きい。

ただ、チーム戦という観点では、このタイムによって後に続く選手にも速いクリアが求められる展開になったと思う。

もし宮岡がもう少しタイムを縮めていれば、TEAM JAPAN BLUEが2nd STAGE、さらには3rd STAGEへ進出する可能性も高まっていたのではないか、と個人的には感じる。

とはいえ、宮岡にとっては初めての国際戦でもある。

普段の個人戦とは違い、自分のタイムがそのままチームメートに影響する特殊な状況での競技だったことを考えれば、その難しさもかなり大きかったのだと思う。

「フラッシュリン」ここにあり

そして第2ヒートで最も印象に残った選手を一人挙げるなら、やはりTEAM AUSTRALIAの“フラッシュリン”ことアシュリン・ハーバートである。

最初のプリズムシーソーからローリングヒルへの移行では、シーソーから一気に高い位置へ飛び移る離れ技を見せた。

そこから先も、とにかく速い。

ただ、山本良幸のような細かく素早いステップで駆け抜けていくタイプとは少し違う。

自分の中では、佐藤惇のような危なげのない滑らかさに近い印象を受けた。

無理に急いでいるように見えないのに、とにかく速い。

まるで自分の庭を走っているかのように、一切の迷いなくエリアを処理していく。

見ている側としても不思議なほど安心感のある競技だった。

そして72.3秒でクリアし、この時点で大会最速タイムを記録。

「フラッシュリンここにあり」と言いたくなる1st STAGEだった。

日置琉青、13歳の衝撃

そしてもう一人、第2ヒートで絶対に外せないのがTEAM JAPAN U20の日置琉青である。

中学1年生、13歳でTEAM JAPAN U20に選出され、今回がSASUKE初出場。

競技前、山本進悟が琉青にかけた「SASUKEって楽しいからな」という言葉が個人的にはかなり刺さった。

SASUKEの皆勤賞プレーヤーとして、成功も失敗も、喜びも悔しさも、ほとんどすべてを経験してきた山本進悟だからこそ言える言葉だったと思う。

「勝て」「絶対にクリアしろ」ではない。

咄嗟に出てくる言葉が「楽しいからな」なのが、SASUKEという競技の本質を表しているようにも感じた。

そして琉青自身の競技も素晴らしかった。

プリズムシーソーでは揺れを非常に小さく抑え、その後も順調に進んでいき、父・日置将士が落下したドラゴングライダーへ。

飛び移りはかなりギリギリで、最後は背中から落ち込むような形にはなったが、見事に突破した。

父が長年クリアし続けてきたドラゴングライダーで初めて落下した大会で、その息子が同じエリアを突破する。

しかもその直前に「お手本見せてやるか」と言っている。

こんな展開は、下手なフィクションでも書けない。

続くタックルでは、一度完全に止まってしまった。

タックルは一度止まると、そこからもう一度動かし始めるのが非常に難しいエリアだ。

それでも13歳の琉青はもう一度勢いをつけ、最後まで押し切った。

当然、その時点で体力も脚力もかなり削られていたはずである。

それでも最後のそり立つ壁を一発で突破。

やはり日置家の遺伝子なのか、と言いたくなるような競技だった。

最終的には136秒でクリア。

ワールドカップとはいえ、SASUKEの1st STAGEにおける史上最年少クリアという歴史を作った。

そしてクリア直後の光景も忘れられない。

父の日置将士はもちろん、周囲の選手たち、そして観客席まで、本当にみんなが泣いていた。

そこで飛び出した実況の「みんな泣いた! 緑山が泣いた!」という言葉に、自分の涙腺も完全に崩壊した。

初めてのSASUKEがワールドカップ。

その舞台で13歳の少年が、父が落下したドラゴングライダーを突破し、タックルで一度止まりながらも押し切り、最後にはそり立つ壁まで越えてクリアする。

あまりにも出来すぎた物語である。

父・日置将士も言っていたが、これ以上ない「最高の親孝行」であったことは間違いないだろう。

そして次に期待したいのは、本大会での日置親子同時クリアである。

長野誠・塊王親子ですら、まだ本大会での1st STAGE親子同時クリアは成し遂げていない。

いつか二人で1st STAGEをクリアし、一緒に観客席へ向かってあの「乾杯!」をやってほしい。

足をつっても止まらない、山本桂太朗

第2ヒート最後に登場したのが、TEAM JAPAN REDの山本桂太朗である。

競技途中、まさかの足をつるというアクシデントが発生した。

1st STAGEで足をつるというのは致命的とも言える。3rd STAGEとは違い、下半身主体のステージだからだ。

それでも山本は競技を諦めず、苦しみながら前へ進み続け、最後は制限時間ギリギリでゴールへたどり着いた。

あのクリアはタイム以上に大きな意味があったと思う。

チームとしても士気につながっただろうし、何より山本桂太朗という選手の根性を改めて見せつけられた競技だった。

現在の山本桂太朗は、1st STAGEの能力でトップクラスに位置していると思う。

スピード、エリアへの対応力、そして今回見せたトラブル時の粘りまで含め、屈指の強さを持つ選手になっている。


1st STAGE 第3ヒート

第3ヒートは女性選手が登場するヒートである。

ここからは、それまでとはまた違った緊張感のある戦いとなった。

個人的に期待していた才藤歩夢

まず個人的に注目していたのが、TEAM JAPAN BLUEの才藤歩夢である。

元近代五種日本代表という圧倒的な身体能力を持つ選手であり、今回出場した日本人女性選手の中では、自分が特に期待していた一人だった。

しかもTEAM JAPAN BLUEは、すでに苦しいポイント状況にあった。

そのため才藤にも、女性選手の中で少しでも高い順位を取り、多くのポイントを獲得することが求められていたと思う。

結果はDXでの落下となり、本人が熱望していたドラゴングライダーへの挑戦まではたどり着けなかった。

本人としてはかなり悔しい結果だったと思う。

それでも競技後、「距離が遠かったのではなく、自分の脚が短かった」と笑いを取っていたのが印象的だった。

いや、才藤歩夢の脚が短いわけがない。

悔しい結果の直後でもああいうコメントができるところも含めて、才藤歩夢という選手の魅力をさらに感じた。

“若きクイーン” アディ・ハーマン

続いて印象に残ったのがTEAM USAのアディ・ハーマン。

21歳という若さながら、アメリカ女子の次世代を担う存在として今回のワールドカップに参戦した。

これまでアメリカ女子といえば「ジェシー・グラフ」という印象が非常に強かったが、そのポジションを受け継いでいく存在の一人と言っていいのではないか。

今回は見事に1st STAGEをクリア。

特にドラゴングライダーも非常に安定していた。

「女子だからここまで」という感じがまったくなく、男性選手と同じコースを当たり前のように攻略していく姿に成長を強く感じた。

岩本理瑚が見せた、想像以上の進化

そして自分の中で第3ヒート最大のサプライズだったのが、TEAM JAPAN U20の僕が見たかった青空・岩本理瑚である。

今回はTEAM JAPAN U20のキャプテンという立場での出場となった。

岩本が掲げている大きな目標が、「女性アイドル初の1st STAGEクリア」である。

今回のワールドカップでは、その目標が決して夢物語ではないことを証明するような競技を見せた。

フィッシュボーンをスルスルと攻略し、以前の大会でリタイアしたDXも今回はしっかりと修正して突破した。

ここに岩本の身体能力だけでなく、学習能力の高さを感じた。

さらにドラゴングライダー。

しっかりとトランポリンを踏み込み、高い位置でバーをキャッチした。

その後の移動も非常に安定していた。

最終的にはそり立つ壁を越えることができず、1st STAGEクリアには届かなかった。

それでも今回の競技を見れば、「女性アイドル初の1st STAGEクリア」はかなり現実的な目標になってきたと感じる。

もう「いつかできたらいい」ではない。

本当にそり立つ壁を越えてボタンを押す姿が想像できるところまで来ている。

大嶋あやの 再び立ちはだかったDX

続いてTEAM JAPAN REDの大嶋あやの。

KUNOICHI完全制覇者として期待されたが、惜しくもDXでリタイアする結果となった。

圧倒的な身体能力があるだけに、次回大会ではこのあたりのエリアを徹底的に攻略してほしい。

日本人女性として1st STAGEをクリアする実力は十分に持っているはずだ。

オリヴィア・ヴィヴィアン やはり世界トップクラス

そしてTEAM AUSTRALIAのオリヴィア・ヴィヴィアン。

今回も1st STAGEを見事にクリアした。

ただし、タイムは150秒ギリギリ。

オリヴィアといえば、そり立つ壁で脚を大きく伸ばしたり、回転を加えたりと、とにかく楽しそうに攻略するパフォーマンスも魅力の一つである。

個人的には今回もそれを期待していた。

しかし、さすがに今回はそんな余裕がなかった。

それだけ今回の1st STAGEが、女子選手にとって厳しい設定だったということでもあると思う。


1st STAGE 第4ヒート

第4ヒートの最初の挑戦者は、TEAM AUSTRALIAのブライソン。

結果はフィッシュボーンリバースでのリタイアとなった。

TEAM AUSTRALIAは2024年ワールドカップで出場選手全員が1st STAGEをクリアし、今回もここまで3人全員がクリアしていた。

その中で、ワールドカップにおけるTEAM AUSTRALIA勢初の1st STAGEリタイアとなった。

森本裕介も「オーストラリアでもこれがあるんやね」と言っていたが、まさにその通りだと思う。

どれだけ実力があっても絶対はない。

そこがSASUKEの難しさであり、同時に面白さでもある。

ヴァンス・ウォーカー、ついに緑山へ

続いて登場したのがTEAM USAのヴァンス・ウォーカー。

American Ninja Warriorで若くして2度完全制覇を達成した、アメリカを代表するトップ選手だ。

日本人選手では漆原裕治を尊敬しているという点も、個人的には非常に好感を持っている。

幼少期には脳性麻痺を患い、歩くことが難しいと宣告されたものの、懸命なリハビリと努力によってそれを乗り越えた。

そこからAmerican Ninja Warriorの完全制覇者にまで上り詰めたというだけでも、とんでもない選手である。

今回も怪我の影響がある中での出場だったが、それでも131秒でしっかりと1st STAGEをクリアしてみせた。

本大会の制限時間を120秒と考えると11秒オーバー。

今後本大会にも出場する機会があるのであれば、ぜひその11秒を削ってほしい。

何より今回、ヴァンス・ウォーカーという選手が「聖地・緑山」に初めて立ったこと自体に大きな意味があったと思う。

U20のエース、中島優太

続いて登場したのがTEAM JAPAN U20の中島優太。

TEAM JAPAN U20の中では最も実力のある選手と言っても過言ではないと思う。

本大会でもすでに安定した競技を見せており、今回も大きく崩れることなく1st STAGEを進んでいった。

ドラゴングライダーではやや前へ突っ込みすぎているようにも見えたが、それでも突破してしまうのが中島の強さでもある。

キャプテン森本裕介

そしてTEAM JAPAN REDから、サスケ君こと森本裕介が登場する。

前回のワールドカップでは1st STAGEをかなりギリギリでクリアしていたこともあり、今回は本大会の120秒という制限時間も意識した競技を見たいと思っていた。

その期待に、森本はきっちり応えた。

すべてのエリアを危なげなく攻略し、最終的には108秒でクリア。

本大会と同じ120秒換算で考えれば、12秒を残すタイムである。

まさにTEAM JAPAN REDのキャプテンとしての威厳を見せつけるような競技だった。

川口朋広が背負ったもの

第4ヒートで最も苦しい立場に置かれていたのが、TEAM JAPAN BLUEの川口朋広だったと思う。

すでにTEAM JAPAN BLUEはポイント的に脱落ライン上におり、その後に挑戦するTEAM FRANCEがどこまで順位を上げてくるかも分からない。

つまり川口には、ただクリアするだけでなく、なるべく速いタイムでゴールすることが求められていた。

しかし、速さを意識した影響もあったのか、今回はところどころで普段の川口らしい安定感を欠く場面が見られた。

特にスクリュードライバーで片手保持になった瞬間はかなりヒヤッとした。

それでもドラゴングライダー、タックルを突破し、最後のそり立つ壁までたどり着いた。

しかし、3回の挑戦はいずれも届かず。

個人の実力不足というよりも、ワールドカップ特有のチーム戦の難しさが強く表れた結果だったように感じる。

TEAM FRANCEを救った23歳、アルバン・デュボワ

第4ヒートの終盤、個人的に最も驚かされたのがTEAM FRANCEの23歳、アルバン・デュボワである。

プリズムシーソーからローリングヒルへの移行では、アシュリン・ハーバートと同じような攻めた攻略法を選択。

さらにその後も大胆なパフォーマンスを織り交ぜながら、最後までしっかりと攻略し、1st STAGEをクリアしてみせた。

速いだけではない。

魅せるだけでもない。

リスクを取ったうえで、それを結果につなげる。

そこにアルバン・デュボワという選手の強さを感じた。

競技終了後、TEAM FRANCEのメンバー全員が一斉にアルバンのもとへ駆け寄っていった光景も非常に印象に残っている。

最終的にアルバンは第4ヒート1位となり、70ポイントを獲得。

このポイントによってTEAM FRANCEは1st STAGE突破を決めた。

1st STAGEを終えて

そして最終順位で最も驚かされたのが、TEAM JAPAN U20の単独1位である。

日置琉青、中島優太、長野塊王、岩本理瑚。

「将来が楽しみなチーム」という段階を超え、すでに世界を相手に結果を出せるチームであることを証明した1st STAGEだったと思う。

一方で、期待していたTEAM JAPAN BLUEはここで敗退。

個々が強ければ勝てるわけではない。

誰がどの順番で出るか、前の選手がどんな結果を残したか、その時点で何ポイント必要なのか。

そうした要素によって競技の仕方そのものが変わってくる。

1st STAGEを通して最も強く感じたのは、まさにその「チーム戦としてのSASUKE」の面白さだった。


2nd STAGE

一人にすべてを託すステージ

2nd STAGEは、15メートルのスパイダークライムのクリアタイムを競う形式となった。

そして各チームから挑戦できるのは、わずか1人だけ。

その結果によって2チームが脱落するという、非常にシンプルでありながら、選手一人にかかる責任が極端に大きいステージだった。

前回の2024年ワールドカップでは複数人が競技する形式だったため、ある程度チーム全体の力が結果に反映されていた。

一方で今回は、完全に「一人勝負」である。

もちろん、大会運営上の事情や競技時間の制約などもあったのだと思う。

ただ、見ている側としては、ここで敗退したTEAM FRANCEやTEAM AUSTRALIAにどうしても不完全燃焼感が残った。

せっかく4人で戦うチーム戦なのだから、もう少し複数人が競技できてもよかったのではないかと思う。

例えばスパイダークライム以外の種目も組み合わせる、あるいは2人以上が挑戦して合計タイムで競う。

そうした形式の方が、「チーム力」で順位が決まり、ワールドカップとしてさらに面白くなったのではないだろうか。

TEAM FRANCEが送り込んだのはイリアン・シェリフ。

しかし、本来の身体能力を十分に発揮することができず、TEAM FRANCEはここで敗退となった。

TEAM AUSTRALIAが送り出したのは、“フラッシュリン”ことアシュリン・ハーバート。

1st STAGEでは圧倒的なスピードを見せつけた選手である。

しかしスパイダークライムでは好タイムを残すことができず、TEAM AUSTRALIAもここで敗退となった。

1st STAGEであれだけの強さを見せていたTEAM AUSTRALIAが、一人のスパイダークライムだけで大会から姿を消してしまう。

これこそ、今回の2nd STAGEの形式に自分が少し違和感を覚えた最大の理由でもある。

そして2nd STAGEで最も衝撃的だったのが、TEAM JAPAN U20の中島優太である。

中島は唯一となる9秒台を記録。

15メートルのスパイダークライムを、まるで平地を走っているかのような勢いで駆け上がっていった。

そしてTEAM JAPAN U20は1st STAGEに続き、2nd STAGEでも1位通過。

ここまで来るともはや「若手の経験の場」といった見方はできない。

各国のトップ選手、日本の本戦常連選手を相手に、実力で首位を取り続けている。

TEAM JAPAN U20の快進撃は、ここで完全に大会の主役の一つになったと思う。


3rd STAGE

昼の緑山が生んだ違い

今回の3rd STAGEでまず印象的だったのが、前半の競技が昼間に行われたことである。

自分がこれまで見てきたSASUKEでは、3rd STAGEといえば夜の緑山というイメージが強かった。

そのため、明るい時間帯に行われる3rd STAGEにはかなり新鮮さがあった。

実際、昼間であることによって視認性はかなり高くなっていたように感じる。

選手自身の技量が前回のワールドカップより成長していることはもちろんだが、エリアの位置関係や飛び移り先が見やすいという環境面も、今回全体的に成績が伸びた一因だったのではないかと思う。

TEAM POLANDのダークホース

最初の挑戦者はTEAM POLANDのレオン・ポバルカ。

TEAM POLAND勢が日本の3rd STAGEでどこまで通用するのかは未知数だった。

結果はスイングエッジでリタイア。

それでも、未知数だったTEAM POLANDが3rd STAGEの序盤までしっかり進んだこと自体は印象的だった。

“3rd STAGE最強”山本桂太朗

続いてTEAM JAPAN REDの山本桂太朗。

前回のワールドカップではスイングエッジでリタイアしている。

今回は前回敗れたスイングエッジを見事に突破し、ついにクリフハンガーディメンションへ。

1回目の飛び移りは成功。

しかし、2回目で惜しくも落下してしまった。

もしクリフハンガーを突破できていれば、その先には山本が最も力を発揮できそうなバーティカルリミット・バーストが待っていた。

そこまで見たかっただけに、正直、不完全燃焼感は残った。

5度目の壁に阻まれたダニエル・ギル

続いてTEAM USAのダニエル・ギル。

これまで4戦4敗、クリフハンガーディメンションに阻まれている。

今回こそはその壁を越えてほしいと思っていた。

しかし、またしても2回目の飛び移りで落下。

ほんのわずかなタイミングのズレが結果を分けたように感じる。

ただ、結果論ではあるが、この敗退が後のFINAL STAGEにプラスに働いたとも考えられる。

もしここでクリフハンガーを突破し、さらにバーティカルリミット・バーストまで進んでいれば、腕へのダメージはかなり大きかったはずである。

今回はここで競技を終えたことで、その後FINAL STAGEまで長く休むことができた。

そう考えると、3rd STAGEで体力を温存できたことが、後の超人的なFINAL STAGEのパフォーマンスにつながったとも言えるのかもしれない。

長野塊王、初めて味わった“後退”

続いてTEAM JAPAN U20の長野塊王。

前回大会では初めて3rd STAGEへ進出している。

今回はサイドワインダーで落下し、前回よりも早い地点で姿を消すこととなった。

これまで彼は大会に出場するたびに成績を伸ばしてきた印象が強い。

だからこそ、今回のように前回より成績が下がるという経験は、本人にとって大きなものだったのではないか。

今回の苦い結果が、さらに大きく成長するための一つの試練になるのではないか。

日置琉青、3rd STAGEまで進んだ13歳

続いてTEAM JAPAN U20の日置琉青。

長野塊王の競技が終わってからそれほど時間が空いておらず、十分な準備時間も取れなかったように見える中での挑戦だった。

結果はフライングバーで脱線し、惜しくも落下。

しかし、日置琉青個人として見れば、今回のワールドカップは大健闘以外の何物でもなかったと思う。

13歳で初めてSASUKEに出場し、それがいきなりワールドカップという大舞台。

しかも「日置将士の息子」という非常に大きな肩書きを背負っての出場だった。

それでも1st STAGEを史上最年少でクリアし、最終的には3rd STAGEまで進出。

「日置将士の息子」ではなく、「日置琉青」という一人の選手として今後を期待させるには十分すぎる大会だった。

そして競技後、父・日置将士が琉青へ送った言葉には再び涙腺をやられた。

妻の麻由美さんのお腹の中にいる時、男の子だと分かったその頃から、「いつか一緒にSASUKEに出られたらいいな」と思っていたという胸の内を明かした。

その父親が13年後、本当に息子と同じSASUKEの舞台に立っている。

しかも息子は初出場で3rd STAGEまで進んだ。

麻由美さんが涙を流している姿も含め、こちらまで目頭が熱くなった。

山本良幸、完全制覇候補へ

続いてTEAM JAPAN RED、山本良幸。

左手を負傷した状態でありながら、スイングエッジを突破し、苦手意識を持つクリフハンガーディメンションも攻略。

そして初めてとなるバーティカルリミット・バーストへ。

ここでも初挑戦とは思えないほど進み、深い地点まで到達した。

今回の山本を見て、改めて感じたことがある。

現在の日本人選手の中で完全制覇を狙える選手として、森本裕介、宮岡良丞、中島優太などの名前が挙がる。

そこに次ぐ存在として、真っ先に候補へ入ってくるのが山本良幸ではないだろうか。

特定のエリアだけに突出したタイプではなく、とにかく大きな弱点が少ないオールラウンダーである。

今回初めて触れたバーティカルリミット・バーストの経験を積み、再びFINAL STAGEへ進んでほしい。

そして黒虎出身者初となる完全制覇を目指してほしいと心の底から思っている。

ヴァンス・ウォーカー

そしてTEAM USAのヴァンス・ウォーカー。

序盤を危なげなく突破し、自身が得意と語っていたクリフハンガーディメンションへ進んだ。

そして、その言葉通り2度の飛び移りを成功。

日本のSASUKEでも、その驚異的なフィジカルを証明した。

最終的にはバーティカルリミット・バーストで落下。

しかし、まだ21歳。

ここから日本特有のエリアへの対策を積んでいけば、FINAL STAGE、さらには完全制覇まで十分に想像できる。


3rd STAGE 女性ヒート

ここからは夜間での挑戦となった。

昼間に比べて視認性が下がるため、3rd STAGE特有の難しさがより強く出る時間帯でもある。

また今回は4人中1人が女性プレーヤー。

女性枠の1人がチーム全体に占める比重は非常に大きい。

岩本理瑚――アイドルだからと侮ってはいけなかった

最初の挑戦者はTEAM JAPAN U20の岩本理瑚。

もちろん、これが初めての3rd STAGE挑戦である。

足場のない3rd STAGE独特の環境には多少戸惑っているようにも見えたが、それでも大きく精神を乱すことなく競技に入った。

そしてフライングバーからサイドワインダーへの移行を見事に成功。

その後落下となったが、競技終了後には「楽しかった」と口にしていた。

正直に言えば、大嶋あやのや才藤歩夢と比べると、「アイドル」という肩書きから、身体能力の面では劣る部分があるのではないかと思っていた。

しかし今回の競技を見て、その考えは完全に改めた。

両者に負けず劣らずのパフォーマンスだったと思う。

「アイドルだから」とどこかで侮って見ていた自分を、心の底から反省した。

アディ・ハーマン――女性クリフ攻略の最有力候補

続いてTEAM USAのアディ・ハーマン。

フライングバーを非常に速いテンポで攻略し、その後も順調に進んでスイングエッジまで到達。

スイングエッジでは、最初の飛び移りを前方から順手でつかむ形で成功。

ダニエル・ギルも同様の攻略をしていたため、TEAM USAの中である程度共有されていた攻略法なのかもしれない。

個人的にも、このつかみ方は非常に合理的に見えた。

無理に逆手で後方や横からつかみにいくよりも、正面から順手でつかめるのであれば、その方が成功率は上がるのではないかと思う。

特に女性選手の場合、逆手で保持した際の腕力や瞬発力が課題になるケースもある。

そう考えると、この攻略法は女性選手だけでなく、腕力や瞬発力にそこまで自信のない男性選手にも応用できる可能性があると思う。

そしてクリフハンガーディメンションへ。

惜しくも1回目の飛び移りで失敗となったが、ここまで到達しただけでも十分に衝撃的だった。

ジェシー・グラフに代わるアメリカ女子の中心選手として、その立場に恥じないパフォーマンスだったと思う。

女性選手として初めて、SASUKEのクリフハンガーディメンションの飛び移りを成功させる。

その偉業に最も近い選手の一人が、現在のアディ・ハーマンではないかと思う。

大嶋あやの――日本女子最強の意地

続いてTEAM JAPAN REDの大嶋あやの。

前回のワールドカップでは苦手としていた飛び移りでリタイアしている。

今回は見事にそこを攻略。

前回の失敗をしっかり修正してきたことが伝わる競技だった。

最終的にはサイドワインダーで落下したが、やはり現在の日本人女性選手の中でトップクラスの実力を持っている選手だと思う。


中島優太――敗退決定後でも価値のある3rd STAGE

TEAM JAPAN U20の最終競技者、中島優太。

この時点でチームの3rd STAGE敗退はすでに決まっていた。

しかし、中島優太本人にとってはまったく意味のない挑戦ではない。

まだ高校3年生。

本大会以外で3rd STAGEに挑戦できる機会そのものが非常に貴重であり、自身が掲げる高校在学中での完全制覇を実現するためにも、大きな経験値になるはずだった。

前回敗れたスイングエッジを今回は見事に攻略。

そしてクリフハンガーディメンションへ。

挑戦前、宮岡良丞が「ここからは落ちない」と言うほど強い信頼を寄せていたのが印象的だった。

しかし2回目の飛び移りで、飛距離が出すぎてしまい落下。

身体能力の高さゆえの失敗とも言える。

完全制覇への期待が非常に大きい選手だからこそ、この失敗は少し重く感じた。

ここを突破できていれば、バーティカルリミット・バーストを本番環境で経験できた。

高校在学中での完全制覇を本気で狙うのであれば、今回そこまで経験できていた方が理想的だったと思う。

それでもまだ高校3年生。

今回の失敗を次にどう修正してくるか。

むしろそこが今後の楽しみになった。

TEAM POLAND最後の希望 ダミアン

続いてTEAM POLANDのダミアン。

FINAL進出へのわずかな希望をつなぐための挑戦だったが、スイングエッジで惜しくも落下。

ここでTEAM POLANDのFINAL進出は厳しいものとなった。

森本裕介――バースト攻略が「自信」から「確信」へ

続いてTEAM JAPAN REDの最終競技者、森本裕介。

この時点ですでにTEAM JAPAN REDとTEAM USAのFINAL STAGE進出が決定していた。

まずスイングエッジ。

第43回大会と同様、一振り多くタイミングを作り、危なげなく突破。

続くクリフハンガーディメンションも非常に軽やかに攻略した。

そして最大の注目は、バーティカルリミット・バーストである。

森本は前回大会で、複数回の挑戦を経て初めてこのエリアを攻略した。

だからこそ今回は、「前回はたまたまではなかった」ということを証明する意味があったと思う。

そして今回も見事に突破。

回転を単純な力で止めるのではなく、回転の力を逃がしながら保持する技術とパワーのハイブリッドによって、森本なりの攻略法をかなり確立したように思う。

前回が「自信」になったクリアだとすれば、今回はそれが「確信」に変わったクリアだった。

その後のパイプスライダーも突破し、見事3rd STAGEクリア。

森本裕介の3rd STAGEクリアについて

ただ、このクリアについては別の見方もできる。

すでにFINAL STAGE進出は決まっていた。

極端な話、フライングバーで落下して体力を温存するという選択肢もあった。

一方で森本自身にとっては、第43回大会で初成功したバーティカルリミット・バーストをもう一度攻略する絶好の機会でもあった。

チームとして優勝するために体力を温存するべきか。

それとも、今後のSASUKE人生も見据えて3rd STAGEを最後まで攻略するべきか。

非常に難しいところだと思う。

結果的には、この3rd STAGEでの疲労が後のFINAL STAGEにも少なからず影響したのではないかと感じている。

ジョシュ・レビン、海外勢最高地点へ

3rd STAGE最後の挑戦者となったのがTEAM USAのジョシュ・レビン。

クリフハンガーディメンションでは、2度の飛び移りともに危なげなく成功。

さらにバーティカルリミット・バーストへ。

ここでも、日本のSASUKEをかなり研究していることが伝わってきた。

最終的には途中で落下したものの、海外選手として非常に高い地点まで到達。

TEAM USAの選手が日本版SASUKE特有の技術を研究し、ここまで進む。

海外勢のレベルが確実に上がっていることを象徴する競技だった。


FINAL STAGE

再び、TEAM JAPAN RED対TEAM USA

FINAL STAGEの組み合わせは、前回のSASUKEワールドカップ2024と同じく、TEAM JAPAN RED対TEAM USAとなった。

最初に挑戦するのはTEAM USA。

今回FINAL STAGEを任されたのはダニエル・ギルだった。

当初は、サーモンラダーや綱登りを得意とするヴァンス・ウォーカーが挑戦するのではないかとも思っていた。

しかしTEAM USAが選んだのはダニエル・ギル。

競技前、TEAM USAのメンバーだけでなくTEAM JAPAN REDのメンバーともグータッチを交わしていた姿が印象的だった。

ダニエル・ギル、41秒32の衝撃

ダニエル・ギルのFINAL STAGEが始まった。

まずスピードクライミングを順調に駆け上がる。

そこからサーモンラダーへの移行がとにかく速かった。

15段のサーモンラダーも、一度も掛け違えることなく、ほとんどテンポを落とさずに登り切った。

その後の綱登りも速い。

最後まで大きく失速することなく頂上へ到達し、記録はなんと41秒32。

とんでもないタイムが出た。

この瞬間、会場にいたほとんどの選手が驚いていたように見えた。

私自身も大会前は、森本裕介が本大会で完全制覇した際の45秒を切れるかどうか、というところがFINAL STAGEの一つの基準になると思っていた。

しかしダニエル・ギルは、その基準自体を一気に壊してしまった。

もう45秒を切るだけでは優勝できない。

森本には41秒32を上回ることが求められることになった。

しかもダニエル本人は、トレーニング通りであればさらにタイムを縮められると語っていた。

41秒32ですら完成形ではない。

それが何より恐ろしい。

そして頂上から森本へ送った言葉にも、強い敬意が込められていた。

「森本さんならこのタイムを超えられる」

最大のライバルでありながら、森本裕介という選手の実力を心から信頼していることが伝わる言葉だった。

森本裕介、41秒32を追う

続いてTEAM JAPAN REDの森本裕介。

目標は明確。41秒32を上回る。

最初のスピードクライミングは非常に速く、むしろダニエル・ギルを上回っていたようにも見えた。

そしてサーモンラダーへ。

普段の森本であれば、一度呼吸を整えてからサーモンラダーへ入る印象がある。

しかし今回は、ほとんど間を置かずにすぐ飛び移った。

前半は非常に速いテンポだった。

だが、そこから徐々にスピードが落ちていく。

終盤では掛け違えも発生。

それでも森本は落ち着いて修正し、15段を最後まで登り切った。

その後は綱登り。

綱をつかむまでにわずかな時間を要したものの、最後まで登り切る。

記録は49秒23。

頂上にはたどり着いた。

しかし、ダニエル・ギルの41秒32には届かなかった。

その瞬間、TEAM USAの優勝が決定。

SASUKEワールドカップ2026はTEAM USAの優勝という形で幕を閉じた。

TEAM JAPAN REDは大会2連覇を逃すこととなった。

「君がベストを尽くすと分かっていたから」

競技後の森本裕介とダニエル・ギルの会話は、今回のワールドカップの中でも特に印象に残っている。

ダニエルは、森本が3rd STAGEを最後まで戦った直後であり、疲労が残っていたことを気遣っていた。

そして最後に森本へ送った、

“I gave my very best because I knew you'd give your very best.”

という言葉が忘れられない。

森本が必ず全力で来ると分かっていたからこそ、自分も全力を出した。

この言葉には、森本裕介という一人の選手に対する尊敬だけでなく、日本のSASUKEそのものへの敬意も込められていたように感じた。

静かに勝利を喜ぶTEAM USA

もう一つ、競技終了後のTEAM USAの姿も非常に印象的だった。

優勝が決まった瞬間、もっと派手に喜ぶのかと思っていた。

しかし、彼らはそうではなかった。

もちろん優勝を喜んではいた。

それでも相手への配慮を忘れず、どこか静かに、自分たちの勝利を噛みしめているように見えた。

そこに、自分はTEAM USAの謙虚さを感じた。

日本という国への敬意。

SASUKEという競技への敬意。

そして最後まで戦ったTEAM JAPAN REDや、他のすべてのチームへの敬意。

日本が負けた悔しさはもちろんある。

それでも、あの41秒32を見せられたら認めるしかない。

SASUKEワールドカップ2026の王者にふさわしい、見事な優勝だった。


各チーム総括

8位 TEAM GERMANY

前回のワールドカップに続き、今回も1st STAGEで敗退となった。

身体能力の高さからダークホースとも言われていたチームだけに、本来の実力を出し切れないまま大会を終えてしまった印象が強い。

また次回ワールドカップが開催されるのであれば、今度こそ1st STAGEを突破し、TEAM GERMANY本来の強さを見せてほしい。

7位 TEAM JAPAN BLUE

今回は宮岡良丞、才藤歩夢という新戦力を加えて臨んだTEAM JAPAN BLUE。

特に宮岡は、FINAL STAGEまで進めば優勝争いに絡める可能性が十分にある選手であり、大会前の期待値はかなり高かった。

しかし結果はまさかの1st STAGE敗退。

次回大会では新たな戦力が加わる可能性も高いと思う。

その中でもぜひFINAL STAGEまで勝ち進み、森本裕介対宮岡良丞という、日本のSASUKEを代表するトッププレーヤー同士の直接対決を見てみたい。

6位 TEAM FRANCE

TEAM FRANCEは、イリアン・シェリフが本来の力を発揮できなかったことが、最終順位に大きく影響したように思う。

それでもアルバン・デュボワをはじめ新しい選手の台頭もあり、TEAM FRANCE全体としての可能性は十分に感じられた。

次回のワールドカップや本大会でもぜひまた挑戦してほしい。

そして何より、イリアン・シェリフは顔がかっこいい。

これもTEAM FRANCEを応援したくなる理由の一つである。

5位 TEAM AUSTRALIA

個人的に、SASUKEを最も楽しんでいるように見えるのがTEAM AUSTRALIAである。

ただ攻略するだけではなく、「このエリアで何を見せるか」という意識を感じる選手が多く、見ているこちらまで楽しくなる。

その象徴が、“フラッシュリン”ことアシュリン・ハーバートだった。

これからも「SASUKEを楽しみながら攻略する」というTEAM AUSTRALIAらしいスタイルを見せ続けてほしい。

4位 TEAM JAPAN U20

今回最大のサプライズと言ってもいいのが、TEAM JAPAN U20の快進撃だった。

長野塊王、中島優太、日置琉青、そして岩本理瑚。

この4人でここまで上位に食い込むとは、正直大会前には予想していなかった。

1st STAGE、2nd STAGEと立て続けに首位通過し、大人たちを相手に本気で優勝争いをする姿は衝撃的だった。

一方で3rd STAGEでは、やはり経験値の差も感じた。

今回の4人は、この大会でとてつもなく大きな経験を得たはずである。

将来、この4人がSASUKEの新しい時代を作っていく。

そう思わせるには十分な大会だった。

中でも岩本理瑚については、キャプテンという立場に加え、アイドルという特殊な立場でもチームをまとめていたことが印象に残った。

他チームでは競技を終えた選手をハグして迎える場面も多かったが、アイドルという立場上、そうした距離感についても本人やチームメートがある程度意識していたように見える。

その難しさを抱えながら、それでもキャプテンとしてチームを鼓舞し、4位という結果に導いた功績は大きい。

女性アイドル初の1st STAGEクリアも、決して遠い未来ではないと思う。

3位 TEAM POLAND

3位となったのはTEAM POLAND。

大会前はダークホースという位置づけだったが、結果的にはその評価以上の活躍を見せた。

特に印象に残ったのが、37歳のパヴェウ・ムラフスキである。

個人的には、今回出場した海外選手の中でも、日本のSASUKEを最も研究している選手の一人だったように思う。

単純な身体能力で押し切るのではなく、日本人選手のようにエリア一つひとつを細かく分析し、攻略していることが競技から伝わってきた。

だからこそ、ダークホースと言われながら3位まで進んだのは、ある意味では当然の結果だったのかもしれない。

2位 TEAM JAPAN RED

大会2連覇こそならなかったものの、TEAM JAPAN REDは今回も非常に高いレベルのパフォーマンスを見せた。

ただ、前回大会から引き続き、一つ大きな課題があるようにも感じた。

それが「森本裕介への依存度の高さ」である。

もちろんTEAM JAPAN REDには強い選手が揃っている。

それでも最終的にFINAL STAGEを任せるのは森本裕介。

つまり、いかに森本を万全の状態でFINAL STAGEまで連れていけるかということが、チームの勝敗を大きく左右する。

今回、森本は3rd STAGEを最後まで攻略した直後にFINAL STAGEへ挑戦することになった。

その疲労がどれだけ影響したかは分からない。

ただ、TEAM USAがダニエル・ギルの体力を温存しながらFINALへ送り出したことと比べると、明確な差があったように思う。

次回のワールドカップでは、個人の実力だけでなく、出場順、役割分担、体力管理といった「チーム運営」の重要性がさらに増していくだろう。

優勝 TEAM USA

SASUKEワールドカップ2026を制したのはTEAM USA。

ダニエル・ギル、ヴァンス・ウォーカー、ジョシュ・レビン、アディ・ハーマン。

まさにアメリカのトップクラスを揃えたチームだった。

そして今回のTEAM USAを見ていて最も強く感じたのは、「本気でこのワールドカップを勝ちに来ている」ということだった。

単に強い選手を4人集めたわけではない。

誰がどのステージを担当し、誰の体力をどこで温存するか。

チーム全体としての役割分担が非常に明確だったように感じた。

詳細な練習内容について真偽は分からない部分もあるが、少なくとも実際の大会を見る限り、ダニエル・ギルをFINAL STAGEで最大限の力を発揮できる状態に持っていくための運用は非常にうまかった。

そして41秒32という驚異的な記録を叩き出した。

選手個々の能力だけでなく、チームとしての戦略、体力管理、役割分担まで徹底していた。

そう考えると、今回のTEAM USAの優勝は決して偶然ではない。

むしろ、勝つべくして勝ったチームだったと思う。

そして、この4人にはぜひ今後も日本のSASUKEへ挑戦してほしい。

特にダニエル・ギル。

もし長年阻まれている3rd STAGEを完全攻略する日が来れば、FINAL STAGE完全制覇は現実的な目標になる。

今回の41秒32を見た後では、むしろFINALまでたどり着いた時に何秒で完全制覇するのかという期待すら生まれてしまう。

TEAM USAの優勝は悔しい。

しかし同時に、日本のSASUKEにまた新たな強敵が現れたことへのワクワクも大きい。

そんな気持ちにさせられる、文句なしの優勝だった。


SASUKEワールドカップ2026を振り返って

SASUKEワールドカップは国別のチーム戦であり、普段のSASUKEとは明確に異なる要素がある。

それは、「敵」と「味方」が分かれるということである。

本大会のSASUKEでは、基本的に全員が味方だ。

一人の選手が競技をしている間、他の選手たちはその成功を願い、声を張り上げて応援する。

誰かがクリアすれば全員で喜び、誰かが落下すれば全員で悔しがる。

そこに明確な敵味方はない。

一方、ワールドカップは違う。

チーム同士で順位を争い、他チームの結果によって自分たちが次のステージへ進めるかどうかも変わってくる。

ルールだけを見れば、もっと殺伐としていてもおかしくない。

他チームの失敗が、自分たちにとって有利に働く場面すらある。

それでも今回のワールドカップを見ていて、そんな雰囲気はほとんど感じなかった。

他チームの選手が競技をしている時も、国籍や順位を越えて、その選手が目の前のエリアを成功させることを願っているように見えた。

自分たちが次のステージへ進めるかどうかという状況であっても、目の前で挑戦している一人の選手を応援する。

それがSASUKEなのだと思う。

そして、自分がSASUKEを好きな一番の理由もそこにある。

SASUKEは順位を競う競技でありながら、誰かの失敗を願う競技ではない。

一人ひとりが自分自身の限界に挑み、その挑戦を周囲の全員が応援する。

だからこそ、そこには毎回ドラマが生まれる。

日置琉青が1st STAGEをクリアした時に緑山全体が涙したことも、ダニエル・ギルと森本裕介がFINAL STAGE終了後に互いを称え合ったことも、根底には同じものがあるように思う。

敵味方が明確に分かれるワールドカップだからこそ、それでも互いを応援し合うSASUKE選手たちの姿が、より際立って見えた。

誰かが誰かを応援し、その応援を受けた選手がまた限界に挑む。

これからもそんなSASUKEであってほしい。

ワールドカップ優勝を目指す選手も、完全制覇を目指す選手も、それぞれの目標に向かって挑み続けてほしい。

そして一視聴者として、これからもその一人ひとりの挑戦を応援していきたい。

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