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部長ほど、「それ無理ですよ」と言われなくなる。会社の裏設定 #169

少し前、インターン企画について打ち合わせをしていました。関係者が集まる会議では、やりたいことが次々に出てきます。「これも入れたい」「せっかくだから、ここまでやりたい」。一つひとつは悪い案ではありません。でも、時間も人も限られている。話せば話すほど企画が大きくなり、逆に「結局どこまでやるのか」が見えにくくなっていました。

その後、部長と二人で30分ほど話す時間がありました。そこで私は、かなり率直に言いました。「それは今の条件では無理だと思います」「そこまで広げると、当日の運営が回らないです」。すると不思議なことに、全体会議ではなかなか決まらなかった話が、かなり早く現実的な骨組みに戻っていきました。そのとき、少し怖いことにも気づきました。役職が上がるほど、「それ無理ですよ」と言ってくれる人は減っていくんじゃないか、と。

会議で反対が出ないことは、賛成されていることとは限らない


上位者が出した案に対して、会議室が静かになることがあります。誰も反対しない。質問も少ない。すると、提案した側は「特に問題はなさそうだ」と感じます。でも、その静けさが本当に賛成なのかは分かりません。「そこまでやるのは厳しい」と思っていても、役職差や会議の空気で言わない人もいます。

特に企画の初期は、良いアイデアを足すことは簡単です。難しいのは、「今回はここまで」と削ることです。上位者ほど全体を見ているから、やりたいことも増える。一方で、実際に準備する側には工数や日程、当日の運営という現実があります。その二つをつなぐ人がいないと、企画はきれいに膨らんでいきます。

管理職の仕事には、上司の案を小さくすることもある


若い頃は、上司の案をどう実現するかを考えるのが仕事だと思っていました。でも管理職になると、それだけでは足りません。実現方法を考える前に、「そもそも、この条件で全部やる必要がありますか」と聞く役割もあります。

今回のインターン企画でも、部長の考えを否定したかったわけではありません。目的に対して、今の人数と時間で成立する形へ戻したかっただけです。「それは無理です」で終わらせず、「ここを残して、ここを今回は外せば回せます」と返す。反対ではなく、成立条件を出す。そうすると、上司との会話は意外と早く進みます。

この先を読むと、「上司に反対する」ではなく「上司が判断できる現実を渡す」に変えられます


ここから先では、上位者の案に違和感があるとき、単なる否定や忖度にならないために私が意識したい「目的」「制約」「残すもの」「捨てるもの」「代替案」の五つを整理します。また、会議では言いにくい内容を、どのタイミング・どの場で伝えると建設的な話にしやすいかも、今回の実体験から考えます。


「無理です」だけでは、管理職の仕事にならない


上司の案に対して「無理です」と言うだけなら簡単です。それでは、判断を上司へ返しただけです。必要なのは、何が無理なのかを条件へ変えることです。時間が足りないのか。人が足りないのか。準備期間が短いのか。当日の運営が複雑になるのか。目的に対して効果が薄いのか。ここまで分けると、ただの反対ではなくなります。

私なら、まず五つを置きます。「何のためにやるか」「今ある制約は何か」「絶対に残すものは何か」「今回は捨てられるものは何か」「代わりに何ならできるか」です。今回なら、インターンで学生に何を感じてほしいかを最初に戻す。そこに必要な内容は残す。一方、時間内に消化しきれない説明や、準備負荷の大きい企画は外す。そうすると、「やる・やらない」の対立ではなく、「目的を達成するにはどの形がいいか」という話になります。

大人数の会議より、30分の対話で決まることがある


今回印象に残ったのは、関係者が多い会議より、部長と二人で話した30分の方が骨組みを作れたことでした。大人数の会議には情報が集まります。ただ、立場が違う人が多いほど、一つの発言が誰かの仕事を否定するように見えたり、上位者への反対に見えたりします。だから、全員がいる場では本音より無難な意見が増えることがあります。

もちろん、何でも裏で決めればいいという話ではありません。全体で決めるべきことは全体で決める。ただ、その前に、言いにくい制約や現実を少人数で率直に確認しておく。そこで論点を整理してから全体へ戻す。会議を減らすというより、会議で決められる状態を先につくる感覚です。

上に行くほど、耳に入る情報は加工される


役職が上がると、報告される情報は整理されてきます。問題点も、ある程度対策案が付いてから上がってくる。部下も、わざわざ細かい不満までは言わなくなる。その結果、上位者ほど「現場では普通に出ている違和感」が届きにくくなることがあります。

だから管理職には、上司の意向を下へ伝えるだけでなく、下で見えている制約を上へ返す役割があります。しかも、愚痴としてではなく判断材料として返す。「現場は大変です」ではなく、「この案だと準備にこれだけ必要で、今の条件ではここが成立しません。ここを外せばできます」と返す。その翻訳ができれば、上司にとっても判断しやすくなります。

部長ほど、「それ無理ですよ」と言われなくなる。だからこそ、近くにいる管理職まで黙ってしまうと、上位者は現実から少しずつ離れていきます。上司へ反対することが仕事なのではありません。上司が現実を含めて判断できる状態をつくることが仕事です。

何でも「できます」と受け取る人より、「その目的なら、ここまでならできます」と返せる人の方が、長い目で見ると組織を守ります。役職が上がるほど必要なのは、賛成してくれる人の数ではなく、成立しない条件まで言ってくれる人なのかもしれません。

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