誰かに触れてほしくて眠れなかった夜。
朝から降っていた雨は
お昼頃には止んでいた。
シャワーを浴びて
髪を乾かして
いつもより少し早めにベッドに入った。
明日も仕事。
早く寝なきゃ。
そう思って目を閉じたのに
今日はなぜか眠れない。
雨上がりの夜は、妙に静かだった。
少し冷たいシーツ。
ひとり分だけ沈んだベッド。
寝返りを打つたびに
隣の空いている場所が妙に気になった。
誰かに触れてほしい。
ふと、そんなことを思った。
抱きしめられたいとか
そんな綺麗な言葉だけじゃなくて。
髪を撫でられて。
首筋に顔を寄せられて。
腰に腕を回されて
逃げられないくらい近くに引き寄せられたい。
背中に触れる手の温度とか。
耳元に落ちてくる声とか。
そんなものを想像していたら
眠るどころか
身体ばかりが熱を持っていく。
やめよう。
寝よう。
そう思って布団をかぶった。
でも、一度意識してしまうとダメだった。
今夜の私は
ちょっとだけ素直すぎた。
寂しい。
それもたぶん本当。
でも、それだけじゃない。
正直に言えば、
触れられたかった。
誰かの体温を感じて
頭の中が真っ白になるくらい
夢中にさせてほしかった。
スマホを手に取る。
連絡先を眺めながら
何人かの顔が浮かんだ。
「今から会える?」
そこまで打って指が止まった。
送れば
もしかしたら来てくれる人はいる。
でも。
違う。
誰でもいいわけじゃない。
触れてほしいのに
触れる相手は誰でもいいわけじゃない。
自分でも面倒くさいと思う。
スマホを伏せても
身体に残った熱だけは消えてくれなかった。
結局、私は誰にも連絡しなかった。
ひとりで
どうしようもなくなった自分を慰めた。
しばらくして。
さっきまであんなに落ち着かなかった身体から
ふっと力が抜けた。
静かになった部屋で
私はただ天井を見ていた。
これで眠れる。
そう思った。
なのに。
満たされたはずなのに
胸の奥だけが少し空いている。
隣に手を伸ばしても
そこには冷たいシーツしかない。
その瞬間
やっと分かった。
今夜、本当に欲しかったもの。
気持ちよさだけじゃなかった。
終わったあともそばにいてほしかった。
何も言わなくていい。
ただ身体を寄せて
背中に腕を回してもらって。
その人の呼吸を感じながら眠りたかった。
ひとりでも
身体の熱は鎮められる。
でも。
人肌が恋しい夜まで
ひとりで満たせるわけじゃないらしい。
窓の外は、もう静かだった。
今夜はもう誰にも連絡しない。
冷たくなった隣のシーツを
少しだけ引き寄せて目を閉じる。
次にこんな夜が来たときは。
触れてほしいと思う相手と
会いたいと思う相手が
同じ人だったらいい。
おやすみなさい🌹
