クィスティーナ・ロナウニョ
「俺はちっちゃい頃もパパ・ママって呼んだことないなぁ」
テレビを観ていた夫が、どことなく自慢げに言った。
番組では、幼少期に両親を「パパ・ママ」と呼んでいた人が「お父さん・お母さん」や「おやじ・おふくろ」へとどのように移行していくのか、という特集をやっていた。
「覚えてないだけで、呼んでたんちゃう?」
だって、「パパ・ママ」と呼べなければ赤ちゃんはどうやって両親を呼べばよいのか。
「いや、親父が、パパ呼びを嫌がってたからさ、絶対呼んでないわ」
「ふーん、そんなんよく覚えてるね」
と軽くあしらい、その日の会話を終えた。
この夏、私の実家に帰省した際、ふと思い出し、母に確認した。
「私って、いつから『お母さん』て呼ぶようになったん?」
「いつって…最初からやん」
なんと、私も「ママ」未経験っ子であった。
夫、疑ってごめん。
「で、でもさあ、ママパパと違って、お母さんなんて言いにくいやん。赤ちゃん言えないやん」
なぜか食い下がる私。
そこへ、7歳と3歳の子をもつ妹が入ってきて
「おかあたん、おとうたん、ってうまく言えない時期が可愛いんやん~!」
と喜んでいる…。
どうやら妹は、「おかあたん、おとうたん」を味わいたくて、「お父さん・お母さん」呼びで育てようとしたらしいが、「パパ・ママ」呼びの便利さに負けて希望は叶わなかったという。
「おとうたん・おかあたん」は確かにかわいい。
しかし、「お父さん・お母さん」と呼ばせようとしたところで、そんなにうまく「おとうたん・おかあたん」という発音になるのだろうか…。
私の思考は、2年前の新婚旅行のあるエピソードにたどり着く。
オーストラリアを旅行中、私たち夫婦は「ツチボタル観察ツアー」というアクティビティに申し込んだ。
トシさんという、ゴシップネタが大好きなガイドさんによるこのツアー。
暗闇の自然を歩いてたどり着く幻想的な景色が忘れられない、とても貴重な体験だったのだが、解散の間際に、もっと印象に残るやりとりがあった。
ツアー道中、いろんな動植物のクイズを出してくれたトシさんが、最後に語ったのは、カマキリとハリガネムシの話。
ハリガネムシは、直径1 - 3 mm、体長数 cmから1 mの針金のような、へちまのツルのような見た目の生物。
その驚くべき特性は、自身が水中で繁殖するために、カマキリなどに寄生し、その乗っ取った体の主を水辺に誘導して水中に飛び込ませるという操作支配力だ。
同じツアーに参加していた4人組家族の若い母親が
「寄生して操るなんてゾンビみたい…」とドン引きした。
すると、その一家の子どもで、かろうじて自分の足でツアーを踏破したような幼い女の子が
「じょんび!」
と言い放ったのだ。
母親だけは
「ねえ、ゾンビだねえ」と平然としているが、
その場にいた我々夫婦やガイドのトシさんは、
「ジョンビ… ジョンビ… かわいすぎる…」
と肩を震わせたり、眉をハの字にして目尻をたれ下げたりしていた。
なるほど、こどもの発する言葉というのは、大人の想像以上に愛らしいものが出てくることもあるのだろう。
そう腹落ちして、2年前のほっこり記憶とともに実家を後にした私。
帰省期間に、大学時代の友人たちとも集まった。
そのうちの一人、Eちゃんが、3歳児を連れてきていた。
久々の集合に他愛ない話が続いていたが、「普段サッカーを観ないのに、今年はワールドカップを結構観た」という話に共感が集まったとき、Eちゃんが3歳児に「好きな選手がいるねんね」と振った。
「え、誰だれ~?」
「教えて~」
と分かりやすく、3歳児のアンサーを引き出すQを投げてあげるおばさんたち。
上田綺世とか、田中碧とか、出てくるのかと思っていたら
「クィスティーナ・ロナウニョ!」
その瞬間、テーブルが黄色い歓声に包まれたのは言うまでもない。
「か、かわいいーーー」
「も、もう一回言って…!」
「クリスターノ・ロナウロ」
「ん?もう1回、もう1回」
「クリッチャン・ロニャーノ」
えへえへと笑いながら、近からず遠からずの様々なバリエーションでなんとなく可愛らしい発話をする3歳児。
こいつ…わざとやってんな??
天使のような悪魔の笑顔をみながら、こどもは、正しく発音することよりも大人が喜ぶことを優先することもある、と悟った。
みなしゃん、気をちゅけて!

考える赤柴さん から
#エッセイしりとり のバトンをいただいたので、エッセイ風の記事を書いてみました。
赤柴さんが書かれたエッセイはこちら。めっちゃ可愛いお話です。
タイトルでしりとりするルールなので、私は「く」から始まるタイトルで。
エッセイと普通の日記の違いもよく分かってない私でしたが、とりあえず「だ・である調」で書くことを心掛けました笑。
バトンなので、どなたかに華麗にお繋ぎしたいのですが、いかんせん私のタイトルが「ニョ」というやばい文字で終わってしまったため、そう簡単に押し付けられません。。
よろしければ、勇気あるどなたか、思いのたけを綴ってもらえると喜びます。
なお、「エッセイしりとり」企画の全貌はこんな感じ。
しりとりにおける「小文字」はゆるく見てもらえる(ゃ→やでもOK)みたいなので、今回の「ニョ」の場合、次は「よ」から始まるタイトルでも良いみたいです!
〆切は8月31日までですが、なんといくつかの賞が設けられ、賞金もあるそう。
エッセイも、タイトルでのしりとりも、結構難しくて、短歌を考えるときより頭を使った気がします。。
でもおかげで、この夏の思い出(?)や自分のしょーーもないちょっとした思考が文章になりました。
赤柴さん、マイキーさん、楽しい企画をありがとうございます☆彡
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チップがいただけるような書き手になれたら、次なるステップのため「枕詞辞典」か「うたことば辞典」を購入したいと思っています