手縫いは面倒だと思っていたのに、今は刺し子が好きなのです
手縫いなんて時間がかかって面倒だ、と思っていた私が、気づけばすっかり刺し子に夢中になっている。
きっかけは、習い事のサブスク「ミルーム」のお試しの案内だった。
正直なところ、せっかく支払ったのだからやってみようという気持ちがあった。刺し子キットを無駄にしたくない一心で、なかば根性のようにA4サイズほどのハンカチを仕立てた。
慣れない作業で肩はこり、目はしょぼしょぼして、もうやるものか、と針を置いた。
それでもどこかで「もう一度やってみたい」と思ったのは、少し真面目な性分のせいかもしれない。
復習のつもりで、図案がプリントされた刺し子キットを買った。手に取ったのは、オリムパスの花ふきんの図案。古くから愛されてきた伝統柄「麻の葉」だった。
それが、小さな転機になった。
このときの私は、まだその心地よさを言葉にできていなかったのだ。
刺し子をしている時間は、思っていた以上に静かだった。
気づけば無心になっていて、気持ちがすっと静まる。
仕上がったときの達成感や、縫い目のポコポコとした温かみのある手触りもまた、静かな喜びがある。
四季折々の柄を、好きな色の糸で作れるのは楽しい。真っ白なさらしに、自分の好きな色の糸を乗せていく自由さが、私の心を動かした。
パキッとした濃いピンクや鮮やかな水色を選べば、真っ白なさらしに本当によく映える。伝統的な刺し子の中にも、私なりの答えが出ているようで嬉しい。
そういえば母が、「学生時代、運針大会で賞をとったことがある」と何度か話していた。
両手を使って、運針の仕草をしている母の姿。懐かしそうに、そしてにこやかに語る表情は、娘ながらとても可愛らしく見えた。
――手縫いとは相性が悪くない。
やっと私も、「手縫いの人」の仲間入りをさせてもらえた気持ちになった。
最近は、うちのぬいぐるみたちのために毛糸で小物を編んでいたが、ネタが尽きてしまった。
だったら、また刺し子に戻ってみようか。
「お母さん、今度はどんな柄がいいかなあ」
そんなことを思いながら、針を動かしている。

さらしに図案がプリントしてあるものを
刺しています
右下にちらりと見えているのが「麻の葉」です
🪡あとがき
この記事の最後の一文は、実は遺影の中の母に話しかけている言葉です。かつては苦手だった手縫いを通じて、今、母と新しい会話をしているような気がしています。
私が偶然始めに選んだのは「麻の葉」の図案でした。この図案は、子が健やかに育つようにという親の願いが込められているそうです。それはまるで、母から今の私に向けられた「元気でいてね」というメッセージのようにも、受け取れています。
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「ふうっ」と一息つく時間に、お茶を一杯ごちそうする気持ちで。