夏をグイっ!とグイ呑み展
● 今宵堂『夏をグイっ!とグイ呑み展』
2025年 6月7日(土)~ 12日(木)
会場 / 日本の酒情報館
東京都港区西新橋1-6-15 日本酒造虎ノ門ビル1F
電話 / 03-3519-2091
ああ私の酔いは南の風に乗って走るわ~♪
聞こえてくるのは夏の足音。そして耳をすませば、キンキン、ピチピチ、シュワシュワと心地よい夏酒の音も。氷を浮かべたりソーダで割ったり・・・そんな夏空のように自由なお酒を受けとめるのに、お猪口よりもちょいと大振りな「ぐい呑み」を色々制作しました。

今回、あえて読み方にクセのある言葉をぐい呑みの「銘」として添えてみました。器を持ち上げていただくと下にその読みが書いてあり、ぐいと掴むことでその心地を感じてもらうことを促すという趣向でした。

今宵堂は、お酒や肴がそうであるように、酒器にも季節を映しつつ拵えてきました。夏酒という涼しげに呑みたいひと時に伴するのは・・・と目を細めつつ、戯れに夏の記憶や景色を込めたぐい呑みたちをどうぞ。

炎天の路頭に立ち上る揺らめき。
果たしてあの景色の先へと辿り着くことができるのか・・・
酩酊のその先にも見える桃源郷。

茣蓙に足組み昼酒を。
一升瓶からぐい呑みへ、
グイと注いでグイと呷れば夏が来る。
グイグイはいつのまにかグーグーへ。
夏の雷かと思えば午睡の響き。

夏の夜の梯子酒。
繁華街で眼鏡を外すと、
ぼやけて街の灯りがとてもきれいねヨイドレ♪
酒を注げば盃中の燈も滲んでゆらゆらと・・・
酔えばさらに揺らめくイルミネーション。

しゅわしゅわと泡になってはじけてゆくのは甘い夏の記憶。
でも炭酸が抜けたって、
そこには甘ったるさが残っている。
酔いで記憶はとばさぬよう・・・。


どこかの酒場で泥酔した男がひとり、
盃の底で堕ちていく。
水かけて起こすなんて野暮、
酒を注いで夢の中へと導くのが吉。
鬼の形相で連れ去られる前に。

てるてる坊主てる坊主 あした天気にしておくれ
わたしの願いを聞いたなら あまいお酒をたんと飲ましょ
と、童謡にもあるように晴れて願いが叶ったならば、
酒を供えるという習わしもあったようで・・・。
お礼だからと雨のように酒を足せば、
てるてるではなくべろべろに。

「もう一杯如何?」
「如何様にも」
静かに酒を啜るは如来の如し。
突如として理性が欠如しなければ面目躍如。
しかし雨露の如く酒を浴びれば
如実に顔も紅くなりゆく。

夏草や兵どもが夢の跡。
平泉を訪れた芭蕉が詠んだのは、
盛者必衰の理。
盃に残る枯れ草は昨夜の宴の跡。
盛り上がって酩酊した者たちの様を表す
盛者必酔の理。

ぐいと掴まずやさしく触れて、 そっと口付けを。
滴る酒を漏らさぬように啜ってほしいの。
揉んで摘んで時には舐めて・・・
弄んでいたら吐息が漏れる。


見上げた夜空に浮かぶ月の面には、
虹の入江に静かの海、晴の海に雨の海、
なかには神酒の海なんてのも。
ふと盃へ目を落とせば酒の海に漂う月。
酔って骨抜きになるのもたまには・・・。
海月がいるのなら海星もどこかに。


夏の夜の帰り途、ぽつんと灯る赤提灯ひとつ。
灯りがついてりゃ燗もつけて、
汗をかきつつ啜るも愉し。
ぬるめの燗を炙った烏賊と、
傍には無口な女、そして灯りはぼんやりと。

誰も居ぬ浜を歩けば聞こえるのはただ波の音。
柿本人麻呂が詠み三島由紀夫が描いたその音は、
寄せては返す恋の響き。
波打ち際に流れ着いたのは、一着の水着。
果たして本体は・・・と
夢想しつつ酔いの中へと流浪する。

我宿に一夜たのむぞ蚊喰鳥。
一茶が詠んだ蝙蝠は夏の季語。
でも鳥ではなく哺乳類だし蚊だって食べるかどうか?
こんなどっちつかずの八方美人がこのケモノのいいところ。
酒を注げば夜闇の中をふらふらと、
それは夜の街にはばたく吞兵衛の姿。

茶事で酒肴を盛る器が向付(むこうづけ)。
盃では足りぬとその器で酒を呑んだのが
「ぐい呑み」の始まり。
武士道のみならず茶道を愛した古田織部が好んだ器は、
オリーブ色を光らせて夏酒の陣へ。

金魚が泳げるほど薄い酒を
揶揄して「金魚酒」なんていうけれど、
氷を浮かべたりソーダで割ったりしたっていいじゃない、
夏酒だもの。
薄い酒でも酔いがすすめば、
いつの間にか頬もほんのり紅くなる。

薫風から緑風、白南風へと。
夏の風は心地よく爽色を漂わせる。
でも時には強い風も吹く。
渦巻いて吹くつむじ風は砂にまみれた埃の色。
澄んでるだけじゃ味気ない、
濁った酒を啜り砂塵の世を歩こう。

ボケとツッコミは酌に通ず。
杯が乾けばすぐさま酒を。
ふざけた戯れの中に愛がある。

月は東に陽は西に。
暮れなずむ時を経て黄昏から降りる青の幕。
夏、降りてゆく緞帳の速度はゆるやか。
一日というステージは終われど、
群青のカーテンコールは大人の時間。
宵の訪れは酔いの訪れ。

それは、憎らしいほどさっぱりしている様。
「ええ時計してはりますねえ」
「ぶぶ漬けでもどうどす?」
いとまを促すもまったくカエル気配なし・・・。
蛇のように睨んでもケロりとした顔で
蛙の面に水ならぬ酒。

ほんの小さな出来事に愛は傷ついて・・・
君は真冬の空に飛び出したけれど、
夏の夜にひっそりと咲くサボテンの花は、
ナイトクイーンとも呼ばれる月下美人。
甘い薫りを漂わせて男を誘い、
一夜限りの契りと酌を交わす。

見つめあって睦み合う、暑い夏のアツいふたり。
イチャイチャと水入らずでも酒はたっぷり入る。
愛し合うふたりなら、
ひとつの杯から仲良く分け合って・・・。
愛も酒も溢しちゃダメだけど、
溢れるのはオッケーよ♡

のんべ〜の酔兵さん♪ ならん〜だ酔兵さん♪
白い帽子 白いシャツ 白い服♪
酒をチャップチャップ揺らしてる♪
空になった胴を持って振れば、涼しい音でおかわりの合図。
マリンボーダーは海に転落した際に目立つためだそうで。
呑み過ぎにはご注意を。

富士の裾野に口付けて、
頂き目指していただきます。
一合二合三合とまずは四合瓶が空になる。
十合登って頂き着いたら一升瓶も空になる。
山ほど酒を呷ったら、ひっくり返って逆さ富士。

美人を例える芙蓉の一輪。
美しき山もまたその名を冠る。
高嶺の花は眺めるだけ・・・
でも美酒は眺めるだけじゃ我慢できず。
夕陽に染まった赤富士は夏の季語、
酔って頬染め艶やかに。

真夏の太陽にじりじりと照らされた道路。
そこへぼんやりと現れる蜃気楼に揺れる文字。
世の中色々あるけど、立ち止まったってOK。
車両もすすめば酒量もすすむ。
酔いもすすんで目前が揺らいできたら、
一時停止して左右確認を。

酒造の神でもある「少彦名命」。
その使いでもあるこの鳥は、
尾羽の形も乙なもの。
やってきては飛び去ってゆく年下の男の愛人を
「若いつばめ」と呼ぶのも乙なもの。
酒を注がれたなら燕返しで返杯するのも乙なもの。

「〼」は、米を平らにするために
斜めに金具を取り付けた弦掛け枡。
きき猪口の酒の色を見る蛇ノ目は別名弦巻紋。
同じ弦ならご一緒にと、
合わせてみた枡と丸。
最初は角張っていても、酔えばだんだん丸くなる。
春夏冬二升五合、
商いもまた、まるっと益々繁盛しますように。

陽射しで目が眩むシーサイド。
しぶきはじけるバケーション。
恋人たちがアツアツならば、
浜の砂も焼けてアチアチと。
もう裸足じゃ歩けないはシラフのセリフ。
夏だ海だ燗酒だと涼しい顔で平盃へ口付け。

昔、サントリーのCMでペンギンが歌っていた。
「失った夢だけが美しく見えるのは何故かしら?」と。
片吟または独吟とは、
詩歌を独りで吟ずること。
独り酒の帰り道、酔っ払いたちは夏の路頭をゆく。
おれたちはまだ飛び方を忘れたわけではないと。


猪口だって短足ではなく、
ワイングラスような長い脚に生まれたかった・・・
という声に応えてつけてあげました。
小指をたてて涼やかに。
酒の位置が高ければ、酒の値も高く感じる。

8月8日はたこ焼きの日。
これがおやつでええねん。
これがごはんでええねん。
これで酒呑んでもええねん。


ちらりと見える御足は気にせず、
皿へと溢して盛り切りを。
皿の酒は猪口に移す?
いやいやそのまま啜ればなお愉しい。
酒は偽りを除き真実を見せる水。
呑んだら隠すなその性を。

この火が灯されて、京都の夏は終わりを告げる。
それは、お精霊さんに手を合わせ
冥土へと送る夜の道標。
祈りの夜があれば、二日酔いの朝もある。
送る火があれば、迎える酒もある。
何かを間違えながら人は生きてゆく。
会場では夏酒や焼酎のソーダ割りもお客様たちに楽しんでいただきました。夏酒の涼しげなボトルとともに並べさせていただいたぐい呑みたちが、扇風機や団扇、蚊取り線香などと同じように、この季節になると登場するお伴になれますと嬉しいです。





