暮らしの森|遺跡から帰って|ハヤト
ハヤトがキキとの冒険を終えてから、数日が過ぎた。あの日のことを思い出すと、今でも胸がわくわくする。
キキと歩いた知らない道。
首飾りだと思っていたコンパス。
そして、森の奥で見つけた地下遺跡。
あの日見たものは、どれも宝物だった。
目を閉じると、あの日の景色が鮮明によみがえる。
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今思えば、本当に大冒険だった。
家に帰って来た時、家族にも話したかった。
でも、「またそんな危ない場所へ行って」と怒られそうな気がして、まだ誰にも話していない。
黒猫のキキも、あれから姿を見せなくなった。
最後まで木箱のそばを離れようとしなかったことが、今でも少し気になっている。
「もう。キキのために持って帰ってきたのに」
ハヤトはベッドの下へ手を伸ばし、布で大事に包んだ木箱を取り出した。

膝に乗せると、ズシっとした重みがある。
せめてモコにだけは見せたい。
あの日の続きも話したい。
蓋いっぱいに彫られた歯車のような模様を、
指でゆっくりなぞる。
「やっぱり開かないか……」
遺跡のいちばん奥で見つけた箱だ。
きっと、すごい物に違いない。
「早く……モコにも見せたいな」
きっと目を輝かせる。二人なら、この箱の秘密も見つけられるかもしれない。
そんなことを思いながら、毎日木箱を眺めるのが、ハヤトの楽しみになっていた。
◆
その夜。
ベッドに入ってもなかなか寝付けなかった。
気付けばまた、木箱のことを考えていた。
(ちょっとだけ見よう)
ベッドの下をのぞき込み、木箱を引き寄せる。
蓋を押したり、ひっくり返したりしてみる。
カタ。コト。
ガサガサ……。
「ハヤト!」
突然、部屋のドアが開いた。
「さっきから何をガサゴソやってるの?」
ハヤトはびくっと肩を震わせた。
慌てて後ろへ隠そうとするが、遅かった。
「……それ、何?」
お母さんの視線が木箱へ向く。
「あ……」
「また森で拾ってきたの?」
「拾ったんじゃなくて……」
言いかけたところで、お母さんは木箱を見つめたまま眉をひそめた。
「ハヤト」
少し低い声になる。
「知らない場所から、勝手に物を持ち帰っちゃダメでしょう」
「でも……」
「でも、じゃありません!誰かの大事な物かもしれないし、危ない物かもしれないでしょ」
ハヤトは木箱をぎゅっと抱きしめた。
「違うんだ。これ、ただの箱じゃないんだ」
「鍵も開かないし、遺跡で見つけて……」
「遺跡?」
お母さんは困ったように息をつく。
「またそんなこと言って。
そんなもの、この森のどこにあるの」
「嘘なんてついてないで、
ちゃんと元の場所へ返してきなさい」
その一言で、胸の奥がずしんと重くなった。
嘘なんかじゃない。
本当にあったのに。
中身すら見てないのに返したくない。
「待ってよ。まだモコにも見せてないし……」
ハヤトの言葉を遮るように、お母さんは首を横に振る。
「ダメなものはダメ。今度の休みの日に返して来なさい。分かった?」
ハヤトはしばらく黙ったまま木箱を見つめていた。
やがて、小さくうなずく。
「……うん。わかったよ……」
それからバタンとドアが閉まり、部屋はまた静かになった。
遠ざかる足音を聞きながら、ハヤトは木箱をそっと布で包み直す。
「ごめん」
あと少しだけ、この箱のことを調べたい。
ハヤトは木箱を段ボール箱の奥へしまい、ベッドの下へゆっくり押し込んだ。
(続く)
🐾 この森をもう少し歩く
「どうしてハヤトは木箱を持ち帰ったの?」
「キキとは何があったの?」
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ハヤトに新しいナップサックを見せに行ったモコ。でも、その日は思いがけない一日になりました。
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