「霧のごとく」(備忘録的感想)
「1秒先の彼女」の監督の最新作だ。
この「1秒先の彼女」は観ていないが、日本でリメイクされた「1秒先の彼」がそこそこ面白かったので観に行くことにした。
舞台が第二次世界大戦後の「白色テロ時代」の台湾のため、ややわかりづらい部分もあったが、それでもそこそこ面白い作品であった。
民国42年(1953年)、台湾の嘉義に住む少女阿月は、サトウキビ畑に隠れる兄の育雲と会っていた。
育雲は反政府分子として国に追われていた。
1年後、母を亡くして弟と二人になった阿月の家に、叔父家族がやってくる。
叔父は阿月と弟を気遣うが、叔父の妻は阿月たちにつらくあたった。
そこに、育雲が銃殺されたので遺体を引き取りに来るように、と言う通知が来る。
しかし遺体の引き取りには莫大な費用が必要だ。
叔父は諦めるように言うが、阿月は育雲から受け取った形見の腕時計を持って、台北に向かう。
右も左もわからない台北で、阿月は騙されて売られそうになってしまう。
阿月を救った輪タク車夫の趙公道は、事情を聞いて市場で腕時計をカネに変えた。
腕時計の代金だけでは育雲を引き取る額にまったく足りないため、趙公道はそのカネで阿月にサイコロ賭博をやらせる。
阿月は順調に勝って手持ちのカネを増やすが、最後に負けてすべて巻き上げられてしまった。
阿月と趙公道が、育雲の遺体を引き取るための費用を工面する物語だ。
阿月はこの後、小さい頃に養子に出され、一度も面識のない姉の阿霞を訪ねる。
阿霞は小さな歌劇団に所属して、そこのセンターを担当する人気ダンサーだった。
だが彼女も高額のカネを工面することはできず、かつ彼女自身も問題を抱えている。
そんな状態で、趙公道は自分のせいで阿月が賭博でカネをすってしまった事に罪悪感を感じ、なんとかカネを工面しようとする。
趙公道は台湾でなく広東州出身の元国民党兵士で、戦場で戦った事を誇りに思っていたが、退官後に当時の上官が次々とスパイ容疑で逮捕され、自身も数か月間拘束され、拷問を受けていた。
まともな職にも就けない状況だが、それでも阿月のためになんとかカネを用立てようとする。
誰もが貧しく、今日を生き抜くために必死な時代に阿月と趙公道が出会う。
世間の風が冷たくとも阿月は尊敬する兄の遺体引き取りを諦めず、悪人になりきれない趙公道は危ない橋を渡って阿月のために動こうとする。
この素朴な二人が感動を生む。
なぜか高金鐘という泥棒が登場し、この泥棒のエピソードだけコミカルな感じになっている。
ちょっと違和感を感じたのだが、この泥棒は実在の人物で、時代を表現するために組み込まれたらしい。
その後の後日譚を含め、現代を描いたラストも悪くないと思った。
もう少し台湾の白色テロ時代を予習してから観ていれば、もっと楽しめたのかもしれない。
76.霧のごとく
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こんな辺境の文章を読んでいただきまして、本当にありがとうございます!