通勤中の勉強が続かない社会人へ|三日坊主になる理由と習慣化のコツ
「通勤中に勉強しよう」と決意して、3日も経たずに諦める——これは意志が弱いからじゃない。そう断言できるのは、私自身が全く同じパターンを繰り返してきたからだ。
私は今、医学部の5年生だ。浪人時代も含めて、長い移動時間を勉強に活かそうと試みてきた。予備校への通学は片道1時間。往復2時間の電車の中で、最初はただスマホをいじっていた。何とかこの時間を使えないかと思って、単語帳を開いたり、参考書を読もうとしたりしたけれど、どれも1週間続かなかった。
失敗を重ねてようやく気づいたのは、「何をやるか」より「どう習慣にするか」の設計が間違っていたということだ。同じように、通勤中の勉強を始めようとしては挫折している社会人の方に向けて、私が試して効いたことを書く。
なぜ通勤勉強は続かないのか
単純に「面倒だから」で片づけてしまいがちだが、続かない理由には構造がある。
①「何をやるか」をその場で決めようとする
電車に乗ってから「さて、今日は何を勉強しよう」と考え始めると、それだけで認知的なコストが発生する。疲れているときや眠いときは、考えること自体が億劫になって、結局スマホを開いて終わりになる。勉強の内容を毎回その場で決める設計は、続かない。
②「まとまった勉強」をしようとする
参考書を広げて新しい章を読もうとする、ノートをまとめようとする——こういった「腰を据えた勉強」は、通勤電車には向かない。混んでいて本を広げられないし、途中で降りなければいけないし、集中できる環境じゃない。環境に合わない勉強を選んでいると、必ず挫折する。
③「続けること」自体をゴールにしている
「毎日通勤中に1時間勉強する」のような目標を立てると、崩れた瞬間に挫折感を覚えてやめてしまう。人間の習慣形成は、それほど意志力に頼れない。
通勤勉強に向いているのは「思い出す作業」だけ
ここは重要なので強調しておきたい。通勤中の勉強に向いているのは、すでに一度学んだことを「思い出す」だけの作業に限られる。
認知心理学の研究では、情報を受け取るより「能動的に思い出す」ほうが記憶に残りやすいことが知られている。これを検索練習(retrieval practice)と呼ぶ。一問一答や暗記カードがまさにこれで、答えを見ずに自力で思い出そうとする行為が、記憶を強化する。
逆に言えば、通勤中に「新しいことを理解する」のは難しい。揺れる車内で複雑な概念を読み込もうとしても、頭に入らない。理解は机の前でやる。通勤では思い出すだけ——この役割分担が習慣化のカギだ。
続けるための習慣設計3つのポイント
①「乗ったらすぐこれ」を決める
習慣化の研究では、行動を特定の「きっかけ(トリガー)」に紐づけることが有効だとされている。「電車に乗ったら○○を開く」と決めてしまう。私の場合、予備校への電車に乗った瞬間に暗記カードアプリを開くことをルールにしてから、格段に続くようになった。「何をしようか」と考えなくていい状態を作る。
浪人時代は駅の改札を抜けた瞬間にアプリを開くと決めていた。ホームで電車を待っている間もカードを回す。席が取れたら続ける、混んでいたら吊革につかまりながらスマホを持つ。電車の中の時間を全部「カードを回す時間」と定義してしまったら、逆にSNSを開くことが後ろめたくなった。トリガーが機能しているときはそういう感覚になる。
②やる量を「今日のカードを回し切る」にする
「30分勉強する」より「今日のカードを全部終わらせる」のほうが習慣になりやすい。時間ではなくタスクの完了をゴールにすると、電車の中で終わればOKだし、終わらなければ昼休みに残りを片づけるだけで罪悪感がない。
③「できなかった日」を想定しておく
週に1〜2日できない日があっても問題ないと最初から決めておく。「毎日やらなければいけない」というプレッシャーが、少し崩れたときの挫折を生む。3日サボっても戻れる設計にしておく。
私が通勤勉強に使っているアプリ
こうした「思い出す作業」を通勤中に続けるには、スマホで完結できる暗記カードアプリが一番合っている。私が今使っているのは「きおくま」という暗記カードアプリで——実はこれ、自分で作ったものだ。
医学部の暗記に使えるアプリをいくつか試したが、どれも自分の使い方にはしっくりこなかった。特にカードに画像を複数枚貼れない点が物足りなかった。最終的に自作することにして、きおくまができた。
通勤勉強との相性がいいと思う点がいくつかある。
エビングハウスの忘却曲線に基づいて、忘れかけたタイミングで自動的にカードを出してくれる。「今日何を復習するか」を自分で決めなくていいので、電車に乗ってアプリを開けばそのまま始められる。
iPhoneだけで普通に使えるので、荷物が多い通勤でも問題ない。iPadも持っているなら、iCloudで同期されるので、家や職場ではiPadで作業し、通勤中はiPhoneで復習、という使い分けもできる。
テキストだけでなく画像も貼れるので、図や表で覚えたい資格の内容も対応できる。英単語も、資格の法規も、業務知識も、暗記が必要なものなら何でも使える。
通勤時間を「もったいない時間」にしないために
社会人の通勤時間は、1日30分〜1時間になる人が多い。週5日で月に10〜20時間になる計算だ。これを全部「ぼーっとしてる時間」にするのはもったいない、という感覚は多くの人が持っていると思う。
医学部に入ってからも、この習慣は続いている。実習がある日は病院への移動中、実習がない日は通学の電車の中。「まとまった時間に机で勉強する」という機会が減っても、移動中の暗記カードだけは毎日回せている。1日の学習量が少ない日でも、通勤・通学で積み上げた分がある——その安心感があると、勉強に対して過度に焦らなくなった。
ただ、「もったいないから使わなければ」というプレッシャーで始めると続かない。「電車に乗ったら自然にアプリを開いている」という状態を目指す。習慣になれば意志力はいらない。最初の2週間だけ、乗ったら開くを意識すれば、あとは勝手に体が動くようになる。
通勤勉強を諦めている人こそ、「思い出す作業」に絞って、アプリ1つで始めてみてほしい。
