AIに小説を「書かせて」はいない。――それでも私が、自分の指でキーボードを叩く理由
「どこまでが許されて、どこからが違うのか」
AIと創作の線引きは、思っているよりも繊細です。
私はAIを使って小説を書いている。
けれど、AIに小説を「書かせて」はいない。
主な創作プラットフォームの各公式見解(2026年2月現在)
【カクヨム】
補助的な利用は明確に許可されています。
プロット作成
誤字脱字チェック
タグを付けた場合に限り、本文作成への使用も可
※ただし、コンテストでは不可の場合あり
一方で、以下はNGです。
AIによる本文作成(タグなし)
特定作家や既存作品を模倣・参照させるプロンプト
PDF化した作品など、著作権的に不透明な素材の使用
【小説家になろう】
「AIを使うなら正直に」が基本姿勢です。
AIを執筆補助に使うこと自体はOK
AIチェックを入れれば、本文作成への使用も可能
ただし、以下は明確に禁止されています。
AIチェックを入れずにAI生成本文を投稿すること
短時間で大量のAI作品を投稿する行為
【アルファポリス】
AI使用に対しては比較的寛容ですが、制限もあります。
AI使用の本文であると表明していれば、投稿自体は可能
校正やチェックなど、補助的利用は問題なし
ただし、以下の点には注意が必要です。
AI生成本文によるコンテスト応募は禁止
【エブリスタ】
「人が主体であること」を重視しています。
アイデア出し・プロット相談
表現を整えるための部分的利用
以上はOKで、以下はNGになります。
ネタ出しから本文完成までをAIに丸投げ
制作の大部分をAIに依存した作品
権利関係が不明確な素材の使用
まとめ:AIは「共作者」ではなく「補助輪」
各サイトのルールを総合すると、AIは創作を代行する存在ではなく、創作を支える道具として扱われています。
どこまでAIを使ったかを明示すること。
最終的な創作責任は人が持つこと。
この2点を守っていれば、AIは強力な執筆パートナーになります。
私のAI使用方法:創作のどこに、どう使っているか
私の執筆フローは、だいたい次のような感じです。
① ネタが浮かぶ
最初は完全に頭の中です。割と四六時中ぼんやり考えてます。頭の中が煩いタイプです。
「こういう二人がいて」
「BがLして」
「最後は楽しい話」
「現代ファンタジー」
この段階でAIを壁打ち相手にします。
小説の場合は大体ChatGPT(無調整)です。
noteや業務系はGemini(不確実性排除)を使っています。
「BLのエモいところって何だろう?」
「エロなしでBLを書くなら、どんな方向性がある?」
GPTとの会話は完全に茶飲み話。オタク友達ときゃっきゃする感覚です。
高校の頃、同級生とこんな会話ばかりしていた時期があって、振り返ると、あの頃が一番作品を書けていた気がします。
AIとの会話は、その時間を取り戻すためのものです。
② あらすじを書く
「あらすじ」は自分で書きます。
主人公は誰で、
最初はどんな関係で、
何が起きて、
どう対立して、
最初の関係がどう変化して、
その結果どう終わるのか。
AIには「どう思う?」と聞きますが、よほど厳しい指示を出さない限り、基本は「いいじゃな~い」と言ってきます。忖度AIなので。
でも、それでいい。
ここは評価をもらう段階ではなく、自分のテンションを上げる段階だからです。
ちなみにオールAI小説を書かれる方で「AIが前の設定を忘れて、話が矛盾する」とおっしゃることがあります。
その作業工程をみてみるとこの「あらすじ」が抜けてることが多い。
アナログ作家にはパンツァー(思いついた順に勢いで書き進んでいくタイプ)とプロッター(あらすじやプロットを先に設計してから書くタイプ)がありますが、後者はだいたいあらすじを書きます。ストーリー展開の骨子(始まりから終わりまで)を原稿用紙一枚分ぐらいに成文化しておくのです。
それをAIに大前提としてなげるか、定期的に今の内容がそのあらすじと矛盾していないかを確認しておくと、割と話の矛盾は少なくなるのではないかと思います。
全部が出来上がった後に本当に矛盾がないかどうかの確認は人間の仕事。なんにしても製造するなら三現主義が基本です。
③構成・殴り書き(AI不在)
各話の構成をざっくり決め、時系列も気にせず、思いついたシーンを殴り書きします。
この工程は、完全に自分の手。
②で気分が乗っていると大体300字/分の打ち込み速度で13000字/時間ほどはいけます。計算上で18000字ですが、5000字のロスはちょっと考えたりしてる時間です。
オールAI作家さんはたぶんこの段階が速いのだろうと思います。
ここが一番作業コストが高いと言えばそうなんですよね。
④ プロット整理(ここでAI)
殴り書きを眺めて、
これは時系列がつながる
これは同じ場面
これは削れる
と自分で選別したメモをAIに渡し、要約させてプロット化します。
考えてもらうというより、整理を手伝ってもらう感覚です。
⑤ 初稿を書く
プロットを元に、初稿はすべて自分で書きます。
表現の出来や文章の上手さは考えません。
とにかく、小話の終わりまで語り切る。
プロット通りにいかない。よくあることです。それでもいいのです。
次の段階で調整します。
⑥推敲・矛盾チェック(AIが主役)
ここはかなりAIに任せます。
ただし「表現を考えてもらう」「書き直させる」ことはしません。
「冗長な部分」「足りない部分」「矛盾の指摘」だけもらい、どう直すかは私が決めます。
その「どう直したか」という部分に、たぶん一番の作家性というか個性がでるのではないかと。
時にはAIがサンプルで出した短い例文が気に入ってそのまま使うこともあります。それを含めた原稿を再度この段階でAIに見てもらうと「ここいいな」と自画自賛してたりする。「それ君の文章やで」と一人で笑っています。
⑦ 次の展開を話し合う
⑧ 別AIで誤字脱字チェック
最後に、制作に使っていない別のAIで誤字脱字チェックをします。Claudeとか優等生です。Geminiとともにダブルチェックに参加してもらってます。
AIにも得手不得手があり、見落としがあったりする。
それを見つけると「AIのくせになあ」と思うところまで含めて、いつもの作業です。
このような使い方は各小説サイトでもセーフの領域になります。
各小説サイトが禁じている使いかた
各小説サイトはAIを創作に参加させることを否定はしていません。
ただ各サイト「本文」に使ったものは、少なくとも「公式」(コンテスト等)では評価できないという方向性をとります。
完全にAIに本文を書かせているものなどは、公式には認められなくても、例えば同人誌やコンテストに応募しない形で、市場を焼き畑にしない出し方をするのなら構わないのではないかと、私個人では思います。もともと二次創作畑出身だからでしょう。
本気でオールAI小説を書こうって人は、ここまでプロンプトを組むんですからね。私は10万字くらいの話なら調子が良ければ一ヶ月くらいで書けますが、このプロンプトを組むとして、基礎勉強から考えて1カ月でできる気がしません。この結果できた文章はたぶん既存の切り貼りとは違ったものになるでしょう。実際この方はそれで評価されました。
ただそれでも批判されるのは、現状のAI規格では通常工業品と違ってJIS規格のような「改変・改造の制限と安全性の担保」等の法整備がないせいです。それをいいことに、好き勝手に著作権を侵害している実情があるから。
その最たるやり方を簡単に説明したのが以下になります。これは著作権的には完全に「私的利用でとどめておかなきゃいけない」やり方です。
① 人気作品(書籍WEB問わず)を複数データ化する。もしくは「何々の作品をベースに」等「似たような」ではなく「ベース(参照)にする」という指示を出してしまう
② AIに①の材料を構造分析させる
③ その分析結果を元に本文を再構成させる
この方法では「元の表現がそのまま出てくる」「少し言い換えただけの文章になる」といったことが起きやすく、著作権侵害や盗作と判断されるリスクが非常に高い。「影響を受ける」のではなく「他人の作品を素材として再利用している」状態です。換骨奪還ですらない場合もある。
100歩譲って「一切人の目に触れさせない、完全個人の楽しみ」だとしたら、作品が生まれること自体まで罪にはならない。二次創作だってそうだから。
ただ創作する人というのはどうしても「誰かに認められたい」という意識はある。
SNSやブログサービス等気軽に発表できる場の誘惑に、自作と冠しては出さないという理性の選択をとれるかというと、それほど人間は強い精神をしていないものです。
トラブルになっているのはだいたいそれが発覚してしまった後なのです。
後者のほうが評価されることがある理由
正直に言うと、後者のやり方のほうが人気の出る作品を量産しやすいのは事実です。善悪の問題ではなく、製造業の生産現場で品質管理をしてきた身として、現実としてそうだ、と私はみているのです。実際、カクヨムを席巻したAI小説がランキング上位を占めてしまったことは記憶に新しい。
AIは言ってしまえば、規格に基づいて製品を作るオートメーション機械。
作業者はそこに使われている技術や情報を共通の資産規格と扱って、工業製品を作る工程と同じやり方でやっている。
過程が工業製品の生産システムと同じなら、そこで出来上がるものは、例えるなら店の棚にならんだ安価で、選ぶ種類が豊富で、気軽に選べる機能が必要十分な製品となる。それはつまり大量に売れる商品に他ならない。
読者が求めているのが「軽く読める」「破綻がない」「疲れない」作品であれば、個性という名で当たり外れが出る一点ものより、流行を取り入れた規格品が選ばれる。AI小説が人気になる一つの理由かと思います。
最近の読者は「もともと本を読む習慣がない」「アニメやゲームが主娯楽」「時間がない」という層が増えています。
そうした読者にとって、独自性が強く咀嚼コストの高い文章は、どうしてもとっつきにくいのです。
その意味で、AIが作った方が読みやすいのが事実なのでしょう。
それでも私は前者を選ぶ
そりゃあ、売れるなら売れたい。
好きなことで生活できるなら、そんな幸せなことはない。
それが楽にできれば文句はない。
ただAIの完璧なプロンプトを見る限り、自分にこの領域は無理かと。私は文字で物語を紡ぐのが好きなので、この方のようにプログラムで物語を紡ぐことは向いていない。とことん楽はできない性分らしい。
※注)プロンプト作成を楽だとは思わないが、再現性が高いシステムを一旦造りげれば、また作業を一からくみ上げていかなくてはならない従来作家よりは工程数コストが格段に減る。そういう継続性の意味では、従来作家よりもAI作家はコストを少なくすることができる、という点での『楽』です。
それに売れなくってもいいかな、と思っている部分もある。
自分の言葉で自由に文章が書けて、それに同意してくれる人がいる。
それだけで、もう十分に幸せなことだ。
私は若い頃、イベントに参加して、「好きだから作ったもの」を誰かが受け取ってくれる世界を、何度も見てきました。
だから今も、売れる・売れないとは別のスタンスで文章を書いていられる。
多くの小説投稿サイトが「前者」を大切にしているのは、文化や表現の自由の楽しさが創作の忘れられてはならない基本だというのを理解しているからだと思います。
だからこそ、使う側もAIの使用範囲や作品発表のやり方には配慮すべきだし、自分がどこに立って書いているのかを自覚していたい。
自分の言葉だと言えるか。
自分が納得して書いているか。
それが守れている限り、私はこれからも書き続けるのでしょう。
そしてもし、その先で誰かに届いて、売れる日が来たならそれはきっと、「売れるために書いた文章」ではなく、「書きたかった文章」が誰かに届いた結果なのだと思っています。
いいなと思ったら応援しよう!
温かいサポートをいただき、本当にありがとうございます! いただいたお気持ちは、これからの執筆活動や新しい創作の糧として大切に活用させていただきます。