海賊版は「見ない」のが正解だけど、親告罪のルールと相性が悪すぎない? ネット時代の困った矛盾の話
今日は著作権の「親告罪」と「海賊版対策」の間にあるもどかしい矛盾について、ちょっと考えた話を御一つ。
自分の作品が勝手に売られていたら、何ができるの?
「描いたイラストが、知らないうちにTシャツにされて売られていた」
「動画に加工されてサイトで勝手に拡散されていた」
こういうことが、残念ながら現実に起きています。そんなとき、権利者にはちゃんと法律上の救済手段が用意されているんですよね。
大きく分けると、こんな感じです。
まず「今すぐやめろ」と求める差止請求。これは故意かどうかに関係なく、「現行犯を止める」ようなイメージです。過去に遡って請求することはできませんが、まず被害を止める第一手として使えます。
次に損害賠償請求。「あなたのせいでこれだけ損した、払え」という話です。こちらは故意や過失(実質的な社会的被害)があることが前提になります。お気持ちでは裁判になりません。
そして不当利得返還請求。要するに「他人の作品で稼いだお金を返しなさい」ということです。ズルして得た利益を、本来の持ち主に取り戻す仕組みですね。言いがかりは禁止です。
あとは名誉挽回措置の請求。「やられたことを公に訂正しろ」ということです。加害者に対して謝罪広告や訂正記事の掲載などを求める事ができます。著作権人格権の侵害の場合に求められます。
ここまでが民事の話です。
これ、一年前に私もやられて文化庁の支援を受けて弁護士さんを雇い、削除申請しました。
— 黒星★チーコ/黑星ちい子@小説やイラストを書くアマチュアです。 (@KUROBOSHI_chiko) June 5, 2026
詳細はエッセイに書いています。https://t.co/xUnqy8kzOs
文化庁の支援事業相談はコチラです。https://t.co/9gB5Y2KWkZ
弁護士さんには個人情報全て開示&なろうの作者が自分であると証明が必要でした。 https://t.co/Zc51FEFi9Y
ただ非常に大変そうですよね。これ見る限り。
「商用目的+原本コピー+権利者への実害」が揃うと、話が変わります
著作権侵害は基本的に「親告罪」、つまり被害を受けた人が自分で訴えないと動かない仕組みです。
ただ、「商用目的である」「原本をそのままコピーしている」「権利者の利益が実際に損なわれている」という3つが揃うと、話が変わります。
この場合は、権利者が告訴しなくても、誰かがタレこんだら捜査機関が独自に動いて起訴できます(実際にするかどうかはまた別。警察はそれ専門で動いてない。基本知財関係は全部非親告らしいですが、特許庁はいちいち警察へ報告しない。非親告といえど、結局は困ってる権利者や見つけた第三者が侵害の現状を相談か報告して、初めて動くことが多い模様。非親告……とは)。
刑事罰は、拘禁(かつては懲役)なら最長10年、罰金は最高1,000万円です。
「牢屋くらい楽勝でしょ」という声をSNSで見かけることもあるんですが、正直それは甘いと思います。睡眠も食事もトイレも、本能的な事象すべての時間とタイミングを他人に管理される生活は、想像以上にきつい(Mなら楽しい)。その上で刑務所仲間との交流も制限されてスマホもゲームも取り上げられます。
中学生が自然学校数日間でヘトヘトになる感じ、あれが毎日続くと思ってください。まあ、辛いよ。ほんとに。慣れた頃には生気を失った廃人になる人もいるくらい。よほど胆力ないと厳しいですよ。シャバの方が楽しいですよ、きっと。
「見ない、行かない、案内しない」方針と親告罪の、困った相性の悪さ
さて、ここからが個人的にずっとひっかかっていることです。
海賊版への対策として「見ない、行かない、案内しない」という考え方があります。海賊版サイトへのアクセス自体を断つことで、被害の拡大を防ごう、という方針です。理屈としてはよくわかります。
でも著作権は「親告罪」が基本です。この件はまた今度。
つまり、権利者が「侵害されている」と気づいて、スルーするんじゃなくて訴える行動(訴訟など)して初めて罪として裁くための仕組みです。
ここで矛盾が生まれるのではないか、と。
権利者が海賊版サイトに近づかなければ、自分の作品がいつ、どこで、どんな形で使われているのか、まずわかりません。
非親告だろうと親告だろうと、裁く側が知らない事は動けないのです。
気づくのは「すでにTシャツやフィギュアが海賊版サイトから飛び出して、アマ〇ンやメル〇リで大量に売られて、かなりの被害が出てから」になりがちです。
かといって、確認のために著作権者が海賊版サイトを巡回するのも現実的ではありません。
アクセスした記録は残りますし、何十もあるサイトを個人が定期的にチェックし続ける労力は、現実的に無理があります。
言論の自由の話と少し似ていて、「悪口も、耳に入らなければ知らないのと同じ」という感覚で成り立っている部分があります。でも著作権侵害は、知らない間にどんどん広がっていくんですよね。黙ってたら止まるどころか、加速することすらある。
よくある事象としては、海賊版で売られた製品のクレームが、本来の権利者に入ってきて返金や保証を求められるケースとかね。知らんがな!
個人の力には、正直限界があります
正直なところを言うと、今の仕組みは「権利者が頑張って戦ってね」という構造になっています。
クリエイター個人が、広大なインターネットを巡回し、証拠を集め、法的手続きを踏む。
それが建前上の「自分の権利を守る」ということです。
でも、それが現実的にどれだけ大変かは、ちょっと想像してみればわかると思います。
とはいえ、仕組みを変えるのはクリエイター一人の力ではなかなか難しい。だからこそ、プラットフォームや権利団体、あるいは国レベルで、もう少し包括的な枠組みを作ってくれると助かるな、とは思うのです。
なかなか思想信条の自由(憲法19条)と言論の自由(憲法21条)に関わってくることなので、むずかしいとは思いますけどね。
権利を守ることが、こんなに骨の折れることであってほしくないな、というのが、正直な気持ちです。っていうか、倫理観を持って創作やろうぜ。
自分の作品を大切にしているクリエイターさんが、ちょっとでも「そうそう、それが言いたかった」と思ってもらえたなら嬉しいです。
※本記事は知的財産検定3級の学習記録をもとに、著作権法の条文と各社の調査報告書を参照してまとめたものです。
法的な判断・アドバイスを提供するものではありません。
いいなと思ったら応援しよう!
温かいサポートをいただき、本当にありがとうございます! いただいたお気持ちは、これからの執筆活動や新しい創作の糧として大切に活用させていただきます。