EOS R8 mark II
小型・軽量フルサイズミラーレスの最新モデルとして「EOS R8 Mark II」が発表された。
手ブレ補正機構(IBIS)の搭載やデザインの刷新など、先代と見比べると意欲的なアップデートが図られている。
一方で、ライバル機の存在感や仕様のバランスにおいて、いくつかの興味深いトピックが浮かび上がってくる。
ここでEOS R8 Mark IIを巡る4つの論点について整理する。
SONYの定番機に通じる立ち位置とコンセプト
EOS R8 Mark IIは、フルサイズ機として多くのユーザーが手に取りやすい価格帯と仕様を狙ったモデルである。その実用性を検証すると、SONYが2014年に発売したα7IIや、そのブラッシュアップでロングセラーとなった2018年のα7IIIが担ってきた、いわばベーシック・フルサイズのポジションに強く接近している。なによりデザインが丸パクリである。
実用的なボディサイズに必要十分な機能を凝縮したスタイルは非常に堅実である一方、他社の定番モデルに対して、どこまで独自性を打ち出せるのか、あるいは独自性はそもそも捨てた「ウチにもあります」作戦なのか、がプロモーションを含めた見どころである。
ミラーレス参入の遅れが響く、エントリー層の中古市場の差
フルサイズミラーレス市場への本格参入のタイミングにおいて後塵を拝したCanonは、RFマウントのレンズラインナップ拡充で攻勢をかけたものの、依然として「エントリーとなる潤沢な中古市場」の厚みという点でSONY&Eマウントに遅れをとっている。
SONYのEマウント機であれば、中古を視野に入れ予算を抑えたい初心者がα7IIやα7IIIといったボディに加え、数万円台の豊富なサードパーティ製レンズも含めてローコストにシステムを構築し、ステップアップするというエコ・システムが極めて強力に機能している。
Canonで価格帯が競合しているのは一眼レフ機で「いまさら感」があり、ミラーレスのエントリー〜ミドル帯では、価格がこなれた中古のタマ数がSONYほど豊富とは言えず、なにより機能的な見劣りもある。これが新規ユーザーを取り込む際の大きな壁として横たわっている。
これがCanonを悩ませている「取り返しがつかない5年間」。
単年のシェアでは追いつき凌駕出来ても、過去に遡って蓄積をひっくり返すのは厄介である。
製品発表で語られている「中の人」の談によると、「若年層の提案」という接頭語が目につく。お金がない若年層が中古も視野に入れた場合、SONYを意識しないということはないだろう。「取り返しがつかない5年間」は自分のせいじゃないと思うからこそ、平気で隣の芝生の青さの話をするのは当然である。
相変わらずメカ先幕非搭載
メカニカル先幕シャッターが非搭載となった仕様面においては議論が分かれるポイントだろう。「電子シャッターのスキャン速度は1/68秒」というのは、先代R8もR6IIとも変わっていないらしい。シンクロ速度は1/200秒であるが、電子先幕(メカ後幕)限定である。
電子先幕はメカ先幕並に高速で動くが、電子後幕はデータの読み出しを伴うため、1/68秒かかるという仕組み。電子シャッター時には先幕の速度を遅い電子後幕の速度に合わせるのでローリング歪が出る。
電子先幕(メカ後幕)で問題なるのはボケ欠け。若年層の提案によりRF45mmF1.2とのキットもあるらしいが…ハイスピードシンクロでぼかしたい時は欠ける(解ってるか?Canonの若年層)。
ベーシックモデルであるが故に、こういう厄介ごとが起きないようにしてもらいたかったという印象。
画素数は据え置き
SONYがベーシック・モデルの画素数を3300万画素に底上げしたのに対し、R8IIは2400万画素で据え置き。
出力される写真の視覚応答を根拠にすれば2400万画素は充分に妥当性がある。
SONYを追いかけて3250万画素になったR6IIIの登場後も2400万画素のR6IIが併売されていて、事実上R8IIがそのR6IIの後釜というヒエラルキー。R5系が多画素機(5Ds相当)、R6系がミッドレンジ(5D4相当)、R8系がベーシック(6D相当)と整理された。
α7Vとの競合にR6III、Z5II他との競合にR8IIと戦略を分離した形ではあるが、後者はLUMIX S5IIも含めて「ジェネリックα7II/α7III」であり、Canonもそこに明確な線を引いたという流れ。
当のSONYは、2400万画素のベーシック・モデルが空白という不思議な構図ではある。
あわよくばSONYが心を入れ替えてベーシックモデルを新造する羽目になったら面白いのだが。
まとめ
EOS R8 Mark IIは、キヤノンの軽量フルサイズとしての機動力をさらに高めた一台であることは違いない。その一方で、ソニーが築いた強固な中古カメラ&レンズのエコシステムとの競合や自社ブランド内でのヒエラルキー整理など、市場構造に応じた戦略の変化も同時に浮き彫りにしている。実機レビューや市場での受け入れ評価が非常に楽しみではある。
