ひとりのススメ | あの夏の日の黒歴史
人間だもの、誰しも黒歴史のひとつやふたつはあるものだ。ってか、もっとある。
恥ずかし過ぎてそうそう他人には言えないが、思い出す度にひとりでバカウケしている、とっておきの話を、キミだけにひとつ授けよう。
絶対他人には言うなよ。
あれは大学一年生の夏、束の間の青春時代のことだった。
「大学生あるある」だが、自分には極めて稀であった「男女混合で遊びに行く」イベント。
いろんなフラグが立ったり、折れたりするヤツね。
年頃の男女が、これでも喰らえって勢いで、湘南の海岸エリアを疾走(ドライブ)するわけですよ。
「希望の轍」を聴きながら。
後半のトラウマが凄すぎて、あんまし覚えてないんだけど、どうせ、朝から鎌倉行ったりメシを食ったりして、親睦を深めたんでしょうよ。
で、夜になって。
ハイ、やっぱり出ました、夜の海辺。
いよっ、待ってました!
砂浜で裸足になって波を追ったり追われたりのキャッキャウフフ。
「待てぇーぇ、キャー、アハハハハ」みたいな。
焚き火を囲ってフォークダンスを踊り出さんばかり。
さて、周りのテンションが最高潮に達する中、反してぼくのテンションは駄々下がりつつあった。
ヤバい。これはヤバい気がする。
下手したら死人が出るぞ、と。
ほどなく、じゃれ合い疲れた我々は帰路に着き、夜通し呑むぞと皆で友人宅に車で向かう。
車内の密閉空間は夏の湿気ムンムンで逃げ場なし。
全ての条件は完璧に整っていた。
自分自身は当然のこと、その場の全員が既に気付いていた、はず。
そして遂に、この中で最も空気の読めないS君が結界を破った。
「なんか臭くない?」
ぼくですっ!それ、ぼくの足の匂いですっ!
炎天下で一日中、靴を履き続けた上の、トドメの砂浜。
ぼくの足はとうの昔に腐ったボロ雑巾のようであります!
20年も生きてますから、こうすりゃこうなることくらいは分かってた。
でも、こうするって知らなかったんだもん。
こんなことなら、代えの靴下持ってくれば良かった。うぇええぇん。
、、、と言いたかったが、
「ほ、ほ、ほ、ほんとだねー、なんだろねー」
誰も応えず空気が凍る中、うずくまったまま震える小声でトボケてみる。
苦しい。
これはいくらなんでも苦し過ぎる言い逃れだ。
寒くて凍え死にそうだ。
だが、空気が読めないS君も、さすがに「いや、おまえだろ」とは言えず、それ以上、追及することはしなかった。
ぼくを憐れんでの温情だったろう。
永遠とも思える気まずい空気と悪臭に、皆で心をひとつにしてひたすら耐え、ようやく友人宅に到着。
すると、この中で最も空気が読めるO君が、「汗かいたんで、シャワー浴びさせてよ」と言い出した。
マジ格好良すぎて好きになっちゃいそうだった。
心優しき男子たちが、「おれもおれも」と援護射撃をし、全員順番にシャワーを浴びることになった。
あれは絶対、ぼくのために言ってくれたんだと思ってる。
O君、元気ですか?
ぼくは、この教訓を深く深く胸に刻み込み、夏には下駄を履くようにしていますし、旅行の際には「こんなには、いらんだろ」ってくらい代えの靴下を持参しています。
安心してください。
