映画「8番出口」で味わう地獄と煉獄
8番出口のゲームってジャンルとしてはホラーなんだけど、所謂怪談のような怖さはない。
出てくる「異変」もどちらかと言えばお化け屋敷的なびっくり要素強めでコミカルなものも多い。
怖いのは あの「空間」 なのだ
誰もいない地下道を気づけばひとりで歩いていた なんて日常でよくあることで、そこをあるかもしれない(無いかもしれない)「異変」に怯えながら歩くというシチュエーションが 実に日本的で美しいホラーゲームだと思う。
そんな「空間」を映画の予告で見せられたら、これはもう行くしかない!
そう、私はあの「空間」を再現した映像を観たいがために映画館に行った勢です!!!!
そんな私にとっては面白い映画でした。
が、これは好き嫌いが分かれそうなテーマをあの「空間」に持ってきたなあ というのが第一印象。
⚠️ここからは映画のネタバレあり!
まだ見てない人は すぐ引き返すこと⚠️
最初の始まり方がね、ゲームの画面みたいにプレイヤー目線で 本人は映らないの。
車窓に映る姿で観客にはそれが主人公・二宮和也だと判る。
ノイズキャンセルしている閉じた世界に響いてくる赤ん坊の泣き声も、電話の呼出音も、興味なさそうにスクロールしているいくつかの画像も 全部がこれから彼を追い詰める要素なのが凄い。
序盤から目が離せない
こちら側も異変を探すように映画を見なくては。
でね!!地下鉄から降りて ホームから階段を昇って 改札を出て 歩いていたら8番出口に迷い込むの!!!
これ!!!「8番のりば」の真エンディングと同じじゃん!!!!!!
「8番出口」のシリーズ作品「8番のりば」の稀に見ることができる真エンディングは「8番出口」に繋がっているんだよ!!!!
え?わざと??わざと???!!!
いや絶対わざとだよね!!!!!!!
「8番出口」に辿り着く前から大興奮の私(落ち着け)
そして「8番出口」のあの「空間」に。
あの「空間」での恐怖心を煽る大事な要素のひとつが「足音」
自分の足音に加えておじさんの足音が加わるとさらに怖い。
主人公「迷う男」は喘息という設定があって、呼吸音が過度のストレスや閉塞感を加速させている。
喘息持ちとしては「ああ!ニノ!そんなに吸引薬を多用すると心臓に負担がかかってしまうよ!!」「二宮和也の喘息芝居上手すぎる。風邪の咳と喘息の咳って違うよね!!!」ってハラハラしたり感心したり忙しい。
小説版によるとあの喘息は新型感染症の後遺症らしい。子供の頃から付き合いのある喘息ではない上に、そのせいで定職に就けずいるからこそニノは「煩わしくて仕方ない」という芝居をしているんだね
で、8番出口のお馴染みの異変が始まって「あーだいたい初見だと天井系の異変は見逃すよねー」などと微笑ましく見ていたのだけど、出てくる異変のほとんどが「迷う男」のためにカスタマイズされた異変なんだよね
彼女からかかってくる電話、ロッカーから聞こえる赤ん坊の泣き声、天井から垂れてくる血液(ゲームでは茶色の液体)、開いている従業員室のドアから見える車内の自分(ゲームではドアの中は暗闇)、サイレンからの津波(ゲームではサイレンは無く、ピンク色の水)、電車の中で見ていたスマホの画像(奇形動物、津波)
これは「迷う男」の精神世界。
彼のために 誂えられた異変。
「歩く男」はしんどかったな
これからゲームのおじさん見たら泣いちゃうじゃん
あのおじさんは無機質なあのおじさんのままでいてほしかったよ。
でもあのおじさんのおかげで8番出口の世界の構造が少しわかった。
あの通路には「歩く〇〇」が必ずセットになっているんだね。おじさんには女子高生。ニノにはおじさん。
間違った出口から外に出ると人間じゃなくなってしまう。女子高生はガラケーを持っていた。随分前に脱出失敗して「歩く女」になっていたのかもしれない。
おじさんの異変を見逃して0番に戻ってしまった時の絶望がつらかった
乱暴に看板を外して踏みつけながら「ガキに会いに行くのに」と叫んでいて、何年かぶりに子供に会いに行くという特別な約束があるなら 余計にここで迷っていることに焦燥感を感じているだろう
そこに現れる「ニセ出口」という異変、、、
意図あるだろ!これ!意地悪すぎるよ!!!
ここで「少年」より「これから会う我が子」を選ぶんだよおじさんは。無理もない。
おじさん、もしかしたら「父親に会ったことがない」と言っていたニノのお父さんだったのかな。
会いに行こうとしてた「ガキ」はニノだったのかもしれない。
「少年」はニノの子供、、彼女のお腹の中にいる赤ちゃんの未来の姿なんだろうなと思って見ていた。
津波がひいたあと、瓦礫の中でまるで胎児のような姿勢で横たわる少年を見て、これは子宮の中であの津波は羊水なのだな、と思った。
カスタマイズされた迷う男への異変は子供に纏わるものばかりだったし、彼の精神世界なのだとしたら そうなぞらえてもおかしくない。
小説版だと、友人を東日本大震災の津波で亡くしている。ニノと彼女と3人でバンド活動をしていた仲間だったのに、その友人には内緒で2人は付き合っていたという負い目がある。
その友人に対して何も出来なかった無力感を津波という異変から子供を助けることでひとつ払拭した 迷う男。
津波は胎内表現と罪悪感からの脱却というダブルミーニングだったのかもしれない。
にしても、津波っぽいなにか ではなくて完全に津波だった(サイレン、流れてくる自転車や船や瓦礫)ので、これは映画としてちゃんと注意書きを入れるべきじゃないかなあ。
少年は父親に会ったことがない、と言う。
少年がくれた巻き貝🐚の御守りは、未来(であろう)で親子3人が海に行って拾った時のもの。
この2点が矛盾しているのは、ここから迷う男が選ぶ道で未来が変わるからなのかな。
津波の異変で少年を救ったことで 巻き貝への未来に1歩近づいたんだと信じたい。
おじさんは少年の気づいた異変をスルーしてしまったけど、迷う男は立ち止まって少年の視線の先を追って異変に気づいた。
8番出口は結果的に、おじさんにとっては「地獄」で、迷う男にとっては罪を浄化するプロセスである「煉獄」だったのかもしれない。
少年と出会ってからの迷う男は過度のストレスから解放されたのか咳が出なくなり、顔色か良くなっていく。心情変化が可視化されていて、映像的にも良かった。
津波ではぐれてしまったけど少年はひとり出口に向かっていく。
そのあとに0番からまたスタートしたのであろうニノがやっと8番に到着する。
でね!!!ここなんですけど!!!
ゲームの8番出口の出口は、おじさんが昇って行ったあのフェイクの階段と同じで上にあがる階段なんだよね。
なのに、迷う男の前に現れたのは下っていく階段!!!!
え、絶対それ違うよ!!!!異変だよ!!!
しかもすれ違う人が喪服着てるじゃん!!!
そもそも8番出口のルールは

「8番出口から外に出ること」
ニノ!そっちは外じゃないよ!!
やっぱり異変だよ!!!
土壇場でバッドエンドかよ、、
そして地下鉄に乗る
またオープニングと同じ光景。
泣いてる赤ちゃんを抱くママンと怒鳴るサラリーマン。誰も助けない。
同じ光景。
そうか!!!異変はここから始まっているんだ!
8番のりば から繋がる8番出口だから この異変を回収しないと先に進めないのか!!!
「異変を見逃さないこと」
ニノがイヤホンを外して赤ちゃんとママンとサラリーマンがいる方に顔を向けた、、、
映画はここで、幕。
うわーーー結末をこっち(観客)に委ねてきた!
余白たっぷりのラストシーン
ハッピーエンドにも、バッドエンドにもなり得る展開。
あなたはどっちだと思った?
私はね、海辺で奥さんに「あの子はあなたを助けるし、あなたはあの子を助けるわ」って言われて、涙しながら少年(我が子)を抱きしめるニノは全部記憶を持ったままなんだと思う。
車内の泣いてる赤ちゃんを抱いているママンはちょっと小松菜奈ちゃんぽいんだよね。
きっと車内であの母子を救った後、8番出口から「外」に出て、あの海辺の未来に繋がる。そんな終わり方だったんじゃないかと思いました。
面白かったなあ
あ、新宿バルト9のエレベーターが凄かったから見てほしい!



エレベーターはニノバージョンもあったよ
入口も凝ってた!!!



異変!!!!

おわかりいただけただろうか
「異変を見つけたら、すぐに引き返すこと」
バルト9の正面玄関からは永遠入れないループ
♾
