人を動かすには「ちょうどぴったり」がよい
人を動かすというとおこがましいですが、サービスを使ってもらう、契約してもらう、商品を買ってもらう‥というように、誰かに何かをしてもらうことがビジネスには必要です。
以前とある機能をリリースした際、ちゃんと考えればほとんどのユーザーにとっては不利益のない、むしろちょっと利便性が上がりメリットのあるものだったのですが、なかなか思ったような反応が得られないということがありました。
ユーザーインタビューをしてみると、わかりやすいよう丁寧に機能の説明をしたことが、かえってなんだか難しそうで使いにくい、自分とは関係ないものと感じられたことが一番大きな原因でした。
人は自分にとって自然な因果的な説明がないと納得できず魅力を感じないが、説明が多すぎてもそっぽを向く。
説明は簡単すぎても、くどすぎてもいけないようです。
「なるほど」には、ちょうどよい量がある
『知ってるつもり:無知の科学』という本に、これをよく表した実験が紹介されています。
バンドエイドを買いに行ったところ、店頭の商品がすばらしい新機能をうたっていた。
パッドの気泡が傷を早く治す
このバンドエイドを割高でも買おうと思うだろうか。思う人もいるかもしれないが、こんな疑問を抱くのでないか。「どんな仕組みなのか」と。
当初の宣伝文に次の説明を加えると、バンドエイドを買いたいと思う人が増えた。
気泡によって傷周辺の空気の循環が良くなり、細菌が死滅するため、傷が早く治る。
われわれはさらに詳細な説明を追加してみた。
気泡でパッドが押し上げられて傷とのあいだに隙間ができ、空気が循環する。空気中の酸素が多くの細菌の代謝プロセスを妨げ、細菌が死ぬため、傷は早く治る。
すると、製品に対するほとんどの人の評価はむしろ悪化した。因果的説明が多すぎると、消費者はそっぽを向くのだ。
人が求めているのは「できるだけ詳しい説明」ではありません。
自分の中で話がつながるだけの、ちょうどよい説明なのだと思います。
人が動くまでの「3つの納得」
では、実際にサービスを使ってもらったり、商品を買ってもらったりするには、何が必要なのでしょうか。
自分の経験も踏まえて考えると、人が行動するまでには、大きく3つの「納得」があるように思います。
Whatの納得ー何がよいのか:根拠・事実 (Fact)
Whyの納得ーなぜよいのか/なぜそうなるか:因果的説明
Why me / Why nowの納得 ー なぜ自分が今やるのか:行動文脈
の3つが必要。かつ、それらがちょうどよい塩梅であることが重要だと思います。

Whatの納得 ── 何がいいのか(Factの壁)
まず必要なのは、事実・根拠です。それがないと何がよいのか、どういう価値があるかがわからない(傷が早く治るという事実が必要)。
何が変わるのか。
何が便利になるのか。
どんなメリットがあるのか。
ここがなければ、そもそも判断できません。
ただ、数字や機能をたくさん並べればいいわけでもない。
情報が増えすぎると、今度は「結局、何が大事なのか」が見えなくなります。
Whyの納得 ── なぜそうなるのか(因果の壁)
次に必要なのが、因果です。
「この機能があります」、「これだけお得になります」だけではなく、
なぜ、それによって自分にとって良いことが起きるのか。
そのつながりが見えて初めて、「なるほど」と思える。
バンドエイドの実験が示しているのは、まさにここです。(気泡によって細菌が死滅するというメカニズムの納得が必要)。
ただし、因果関係も詳しく説明しすぎると、かえってわかりにくくなる。
必要なのは、すべてを説明することではなく、腑に落ちるところまで、必要十分な説明をすることです。
Why me / Why nowの納得 ── なぜ自分が今やるのか(文脈の壁)
行動に移すには「いま、私が行動する理由(場合によっては、自分への言い訳)」が必要。
「良さそうだ」と思うことと、実際に行動することの間には、もう一段あります。
なぜ、自分にとって必要か。なぜいまそれが必要か。
そこまで自分の状況とつながって初めて、行動する理由になります。
人は元来めんどくさがりで変化を嫌うので、いまやる理由、自分がやる理由、行動してしまってもよい理由や言い訳(今日は運動したから甘いものを買ってもいいんだ!とか)が最後の一押しに必要です。
人を動かすには、商品やサービスの話だけではなく、その人自身の文脈で伝える必要があるのだと思います。
最後に、「情報」を「ちょうどよく」つなぎ「ストーリー」をつくる
オンラインでもオフラインでも、何か情報を伝える場合には一次元で一つ一つの情報を繋いでいく必要があります。
僕たちが世界を認知するとき、それらすべての情報が一度にやってくる。僕の脳には一度にやってくるのに、文章で表現するときは順番に描いていかなければならない。 視覚、聴覚、嗅覚などの五感、それに加えて、頭の中で考えたことや、過去の思い出などを、すべて同じ次元でリニアに、一次元的に表現しなければならないのが小説という表現技法だ。
これは小説に限った話ではなく、誰かに何かを伝える時には共通することではないかと思います。
どの情報をどういう順番で伝え、3つの納得を作っていくのか。
それは伝える内容にも、相手にも、状況にもよって異なります。
その時、その場所でその相手に対してちょうど良いストーリーになるように情報を編集することで、納得・共感が生まれ、行動につなげることができるのだと思います。
事実をもとに、ちょうどよい因果関係を示し、行動の理由づくりをしてあげることが大事なのだな、とあらためて感じたというお話でした。
※この記事は過去の自信の記事を再編集・一部更新して投稿しています
