【読書感想文13】「起業家」人生の一次資料。【渋谷ではたらく社長の告白】読書感想ブログ。
今日は久しぶりに、読書感想文を書いてみようと思う。今回紹介したいのは、再読回数も既に3~4回になっている、藤田晋さんの『渋谷ではたらく社長の告白』だ。

サイバーエージェントを創業した藤田さん自身が、会社を立ち上げ、成長させていく過程を振り返った、いわば自叙伝のような本である。
僕と同世代くらいであれば、2000年代初頭のITバブル周辺の空気を、なんとなく記憶している人もいると思う。そして今やサイバーエージェントといえば、かなり有名な会社になったのみならず、藤田氏は会長に就任し、新しい人が社長になるという注目の人事があったばかりだ。
ただ、当然ながら最初から今の姿だったわけではない。この本では、その会社がどうやって生まれ、何が起き、そのとき藤田さん自身は何を考えていたのか、創業者本人の視点から、かなり生々しく書かれている。
そういう意味ではもはや一次資料だと言っても良い。そんな感想文を以下したためたい。
「社長になりました。つまり私は成功者です」‥では、全然ない。

起業という言葉だけ聞けば、なんとなく夢のある話にも聞こえる。自分で会社を作り、自分の考えでビジネスを動かし、会社を成長させ、大きなお金を動かしていく。聞こえだけなら、なんとも華々しい。
ところが当然、この本に書かれているのはそんな面ばかりではない。会社が注目されれば、ありもしないことをマスコミに書かれる。信頼していた人間との関係が壊れる。会社そのものが危機に陥る。自分自身も精神的に追い込まれる。そうした紆余曲折の中で、何を考え、どう仕事と向き合い、絶望を乗り越えていったのか。それが本人の言葉でかなり赤裸々に書かれている。
だから読み物として、シンプルに面白い。「成功した経営者が、後から成功の秘訣を解説します」という感じではなく、その時々の迷いや感情まで含めて書かれているからこそ、変に編集された成功物語を読んでいる感じがあまりしない。
もちろん自伝なので、どこまでいっても藤田氏自身から見た物語ではある。それでも、一人の起業家が何を考えながら会社を作っていったのかを知る一次資料として、かなり面白い本だと思う。
・・・そして個人的に面白かったのが、ここまで大変な話を読んでも、「うわ、社長なんて絶対やりたくない」とは不思議と思わなかったことである。
本書の終盤で、藤田さんが書いていたことの中に、かなり印象に残ったものがある。どれだけネガティブな感情に取り巻かれることがあっても、それを全部足したものより、はるかに希望の方が上回っている。大意としては、そんな話だったと思う。
これを読んで、「起業家のマインドって、こういうところにあるのかな」と思った。もちろん、僕自身にそこまでの覚悟や野心があるのかは分からない。そもそも、そんなことを真剣に考えた経験すらほとんどない。だからこそ、「自分だったらどうなんだろう」と、今まであまり向けたことのない方向へ視線を向けるきっかけになった。それだけでも、この本を読んだ意味は結構あった気がする。
そしてもう一つ。これは塾で働いている人間として思ったことなのだが、生徒と将来の話をしていて、「自分でビジネスをやりたい」「会社を作って社長になりたい」という形で進路を考えている子には、ほとんど会ったことがない。
もちろんゼロではない。ただ、そういう子はそれこそ家が自営業だったり、親が経営者だったりと、身近にそういう世界が存在しているケースが多いように思う。それ以外でその発想に至る子は、やはり稀有だ。
考えてみれば、僕自身もそうだった。中学生や高校生の頃、「将来は自分で会社を作る」なんて選択肢を真面目に考えた記憶はない。会社員。公務員。医師。教師。弁護士。その他いろいろな職業。
そういうものと比べると、「自分で会社を作る」という選択肢は、知らなければそもそも進路の候補にすら入ってこない。だから、この本は意外と中高生が読んでも面白いんじゃないかと思った。
もちろん、内容を考えれば基本的にはビジネスパーソン向けの本だと思う。中学生には少し難しいところもあるだろう。それでも中学3年生くらいから高校生であれば、「世の中には、こういう生き方もあるんだ」と知るにはかなり面白い本だと思う。
別に読んだから起業家を目指してほしいわけではない。選択肢として知った上で、「いや、俺は絶対会社員の方がいいわ」と思うのも立派な発見である‥と思っている。
大事なのは、知らないまま選択肢から消えているものを、一度くらい覗いてみることなのだと思う。なので、この本はしばらく校舎に置いておこうと思う。
進路に悩んでいる子がいたら、「こういう世界もあるぞ」と、そっと渡してみたい。その子が何を感じるのかは分からないが、でも、自分の知らなかった生き方を一つ知る。そのくらいのアシストなら、塾の先生にもできると思う。
ではまた次の記事でお会いしましょう。
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