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人生はプロジェクトなのか、それとも作品なのか

「人生を経営する」

その言葉を見た瞬間、わたしは少し身構えました。

人生まで効率化するのか。
人生まで最適化するのか。

そんな窮屈な話だったら、ちょっと嫌だなと思ったのです。

人生は思い通りになりません。
仕事もそう。
人間関係もそう。
子育ては、なおさらです。

だからこそ、「経営」という言葉に、管理やコントロールの匂いを感じていました。

でも、読み終わったあとに残ったのは、
まったく別の問いでした。

人生はプロジェクトなのか。
それとも作品なのか。

そんなことを考えさせられる一冊だったのです。


『人生の経営戦略』は何を伝えようとしているのか

今回読んだのは、山口周さんの
『人生の経営戦略 自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』です。

本書の特徴は、経営学の考え方を人生に応用していることです。

パーパス。
ポジショニング。
ブルーオーシャン戦略。
オプション価値。

企業経営で使われる概念を手がかりにしながら、
どう生きるか、何を選ぶか、どこで生きるか、
そんな人生の問題を考えていきます。

著者は、マネジメントとは
「思い通りにならないものを、とにかくなんとかすること」だと語ります。

人生もまた、思い通りにならない。

だからこそ、
自分の人生の責任者として
考え続ける必要があるのだと思います。

人生の目標は何かを問い直す

本書の最初のテーマはパーパスです。

企業が「何のために存在するのか」を問われるように、人もまた「何のために生きるのか」を考えなければならないと言います。

そのうえで著者は、
人生の目標をお金や出世ではなく、
「持続的なウェルビーイング」に置きます。

ここで印象的だったのは、
人生で本当にコントロールできる資源は
時間しかない、という考え方でした。

仕事に時間を使う。
家族に時間を使う。
趣味に時間を使う。
学びに時間を使う。

人生戦略とは、結局のところ
時間の配分を考えること、なんですよね。

能力よりも居場所を考えよ

本書の中で特に面白かったのが、ポジショニングの考え方です。

わたしたちは状況を変えたいと思うと、
もっと勉強しよう、もっと能力を高めよう、
もっと努力しよう、と考えがちです。

しかし著者は、
能力よりも先に居場所を見直せと言います。

どんな環境にいるのか。
どんな人たちと関わっているのか。
どんな市場の中にいるのか。

人生は、能力以上に立地の影響を受けるというのです。

これは読書にも似ています。

どんな本を読むか。
どんな人と対話するか。
どんな問いが飛び交う場所にいるか。

居場所が変わると、
見える景色も変わるのではないでしょうか?


それでも人生は最適化できない

ここまで読むと、本書は
人生を合理的に管理するための本に見えるかもしれません。

けれど、わたしはそうは感じませんでした。

なぜなら人生には、
効率では測れないものがあるからです。

恋愛、友情、子育て、芸術。

どれも費用対効果だけでは説明できません。

それでも人はそこに時間を使います。

むしろ、そうした非合理なものの中に
人生の意味を見出しているようにも思います。

だから人生は、
最適化だけを目指すものではないはずです。

人生はプロジェクトなのか、それとも作品なのか

振り返れば、わたしたちはずっと
プロジェクトとして生きる訓練を受けてきました。

学校に入り。
就職し。
昇進し。
資格を取り。
成果を出す。

目標を立て、達成を目指し、前へ進む。

それは確かに大切なことです。

けれど人生の終わりに残るのは、
達成率なのでしょうか?

それとも、その人にしか描けなかった
物語なのでしょうか?

プロジェクトなら、計画を立てて進めます。

作品なら、遠回りも失敗も含めて価値になります。

おそらく人生は、そのどちらかではありません。

プロジェクトであり、作品でもある。

山口周さんは、この本で
人生を考えるための優れた戦略をたくさん示してくれました。

でも読み終わったあと、心に残ったのは
戦略そのものではありませんでした。

戦略は必要です。

けれど戦略だけでは足りません。

描き直しながら進む自由があってこそ、人生は面白い。

この本を閉じたあと、
わたしは次の目標を考えるより先に、
いま描いている人生の一章を眺めたくなりました。


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