「やればできるのに動けない」は、わたしだけじゃなかった
やらなきゃと思っているのに、
気づけばスマホを見ている。
「5分だけ休もう」と
思ったはずなのに、
いつのまにか1時間。
返信しようと思って開いたSNSで、
なぜか関係ない動画を見続けている。
そんな自分を見て、
わたしはずっと思っていました。
「わたしは、
やればできるんだけど、
やるまでに時間がかかる人なんだ」と。
やり始めれば集中できる。
むしろ没頭する。
でも、
始めるまでが長い。
そのたびに、
「意志が弱いのかな」と、
どこかで自分を責めていました。
でも今思うと、
「やればできる」
という言葉は、少し不思議な言葉です。
希望でもある。
でも同時に、
まだ始めていない自分を、
ギリギリ守るための言葉でもあったのかもしれません。
できないわけじゃない。
本気を出していないだけ。
そう思うことで、
まだ可能性の中にいられる。
でも逆に言えば、
始めてしまった瞬間、
現実が始まってしまう。
だから、
動けなかったのかもしれない。
そんなことを考えていたとき、
ある本を読んで、
その見え方が少し変わったのです。
もしかすると、
動けなかったのは、
“わたしがダメだったから”ではなく──
人間そのものが、
そういう構造だったのかもしれない、と。
『すごい習慣大百科』は、「努力論」の本ではなかった
今回読んだのは、
『すごい習慣大百科』という本です。
タイトルだけ見ると、
「人生を変える習慣術」の本に見えます。
実際、
仕事、勉強、健康、コミュニケーションなど、
さまざまな習慣化テクニックが紹介されています。
でも、
わたしがこの本を読んで感じたのは、
「がんばり方」ではありませんでした。
むしろ逆です。
この本は、
“気合で変われ”とは言わない。
人間の脳や心は、
そもそも変化を嫌うようにできている。
だから、
続かないのは、
あなたの根性が足りないからではない。
そんな前提で書かれている本だったのです。
「まず動く、体が先、脳が後」に救われた
この本の中で、
わたしがいちばん救われた言葉があります。
「まず動く」
体が先、脳が後。
わたしたちは、
ついこう考えてしまいます。
やる気が出たら動こう。
気分が乗ったら始めよう。
でも本書では、
それは逆なのだと言います。
動き始めることで、
脳のやる気スイッチが入る。
つまり、
やる気を待っている限り、
人はずっと動けない。
ここを読んだとき、
少しホッとしたのです。
ああ、
わたしだけじゃなかったんだ、と。
「すぐ動けない自分」を、
ずっと性格の問題だと思っていました。
でも実際は、
人間みんな、
最初の一歩は重い。
そういう生き物だった。
だから必要なのは、
完璧な意志ではなく、
小さく動き始めることだったのです。
習慣とは、「どんな人間になるか」の話なのかもしれない
読んでいるうちに、
わたしは、
習慣本に対する見方そのものが変わっていきました。
習慣とは、
単なる「人生改善テクニック」ではない。
もっと深いところで、
“どんな人間になっていくか”
の話なのではないかと思ったのです。
古代ギリシャの哲学者・アリストテレスは、
「人は、繰り返す行為によって形成される」
と考えました。
つまり、
一回の行動ではなく、
“反復”が人格を作る。
だとしたら、
毎日の小さな習慣は、
未来のわたしたちを、
静かに形づくっていることになります。
しかも今の時代は、
SNSも、
動画も、
広告も、
「どうすれば無意識に繰り返してしまうか」
を研究しています。
だから本当に怖いのは、
悪い習慣ではない。
“無自覚な習慣”なのかもしれません。
自分で選んでいるつもりなのに、
いつのまにか、
誰かに設計された反復を生きている。
その瞬間、
人は少しずつ、
眠っていくのだと思います。
「勉強するのに遅すぎることはない」という言葉
もうひとつ、
この本で印象に残った言葉があります。
「勉強するのに遅すぎるということはない」
若い人たちと働いていると、
ふと感じることがあります。
あれ、
わたし、
衰えてきたのかな、と。
新しいツールを覚える速さ。
反応速度。
吸収力。
比べれば、焦る瞬間はある。
でも本書には、
こんな言葉がありました。
「年を取るということは衰えていることではなく、一歩先に進むことだと解釈してください。」
この言葉を読んだとき、
なんだか少し、
肩の力が抜けた気がしました。
ハーバード大学 大学などが行った共同研究によれば、
感情を目に見るだけで正しく認識する能力においては、50代の成績が最も良かったそうです。
また、語彙力のピークは、
60代後半から70代初めに達するという、驚きの結果も明らかになっています。
人は、若さだけで価値が決まるわけじゃない。
経験してきたこと。
失敗してきたこと。
悩んできたこと。
そういう時間の積み重ねによって、
育つものもある。
速さではなく、
深さとして育っていくものがある。
それを、
この本はちゃんと見ている気がしたのです。
習慣とは、「目覚め続ける技術」なのかもしれない
この本を読んで、
わたしの中で、
習慣の意味が少し変わりました。
習慣とは、
人生を効率化するためのものではなく、
「どんな自分で生きるか」を、
毎日の反復で選び続けることなのかもしれません。
そして、
本当に怖いのは、
悪い習慣ではない。
何も考えず、
無意識に繰り返している習慣です。
人は、
自分で選んでいない生き方を、
「これが自分だ」と思い始めた瞬間に、
眠ってしまう。
だからこそ、
小さくてもいい。
今日、
スマホを開く代わりに、
1ページだけ本を読む。
5分だけ歩く。
深呼吸してから、
作業を始める。
そんな小さな反復が、
いつか「自分そのもの」を
つくっていくのかもしれません。
