私は、何を持ち帰る人なのだろう― パラレルキャリアを「越境」という視点で考えてみた
「パラレルキャリア」は、わたしが新入社員の頃からずっと抱えてきた、大きなテーマでした。
大企業に勤めていたころ、何度も考えていたことがあります。
この会社がなくなったら、私に何が残るんだろう?
だから、パラレルキャリアを大事にしようと思いました。
本業を持ちながら、副業をする。
会社員をしながら、自分の活動を育てる。
一般的には、そんな生き方を指す言葉として使われています。
でも、ずっと少しだけ違和感がありました。
正確には、複数の仕事を持ちたいわけではなかったからです。
わたしが本当に欲しかったものは、
複数の仕事ではなく、複数の世界でした。
仕事の世界。
読書会の世界。
漫画や本の世界。
そして、言葉を届ける世界。
世界を広げたい。
そして、それが収入につながれば、さらに嬉しい。
できることや、未来の選択肢が増えるから。
これが、当時からの本音だったのだと思います。
それぞれの世界を行き来しながら、
そこで得たものを別の場所へ持ち帰る。
そんな生き方に、わたしは惹かれているのかもしれません。
そう考えたとき、『越境人材』という一冊は、ただのキャリア論には見えませんでした。
『越境人材』は、働き方の本ではない
『越境人材―個人の葛藤、組織の揺らぎを変革の力に変える』は、「越境」という考え方を通して、人と組織の成長について書かれた本です。
ここでいう越境とは、転職や副業だけを指すものではありません。
慣れ親しんだ環境を離れ、未知の世界へ行き、そこで得た経験を持ち帰る営みのことです。
この本が面白いのは、越境の目的を「外へ出ること」だけに置いていないことでした。
大切なのは、戻ってくること。
新しい場所で得た学びを、自分の居場所へ還元することなのです。
外へ出て、自分が一人ではなかったことに気づく
著者は、転職を経験したことで、
自分は周囲に生かされていたのだと気づいたと語っています。
わたしは、この言葉に立ち止まりました。
人は、自分の力だけで生きているように思えてしまいます。
でも、居場所を離れてみると、
仲間の存在、積み重ねてきた信頼、自分を理解してくれる環境が、どれほど支えになっていたかに気づくのです。
越境とは、新しい自分を探す旅である前に、
今の自分がどれだけ支えられていたのかを知る旅。
そんなふうに思えてなりません。
越境とは、自分の輪郭を知ること
ホームとは、自分が自分だと思っている世界。
アウェイとは、まだ知らない自分。
越境すると、これまで頼りにしていた肩書きや経験が通用しなくなることがあります。
すると、「自分は何者なのか」という問いが生まれます。
でも、それは自分が壊れることではなく、
自分の輪郭が見えてくる時間なのだと思います。
葛藤は、失敗のサインではありません。
新しい自分へ向かう途中で起きる、自然な揺らぎなのだと思いました。
パラレルキャリアとは、複数の世界を往復することなのかもしれない
この本を読みながら、
わたしの中でパラレルキャリアの意味も変わりました。
複数の仕事を持つことではなく、
複数の世界を行き来すること。
仕事で得た視点を読書会へ。
読書会で得た気づきを発信へ。
本で学んだことを、誰かとの対話へ。
そうやって世界と世界をつなぐ往復そのものが、わたしのパラレルキャリアなのかもしれません。
私は、何を持ち帰る人なのだろう
以前のわたしなら、「次はどこへ行こう」と考えていたかもしれません。
でも、この本を読んだあとに残ったのは、少し違う問いでした。
私は、どこへ行く人なのだろう。
ではなく、
私は、何を持ち帰る人なのだろう。
越境とは、居場所を捨てることではない。
一度外へ出て、自分の輪郭を知り、もう一度戻ってくるための旅。
その旅を繰り返しながら、人は少しずつ、
自分らしい生き方を育てていくのだと思います。
だから今、わたしはこう問い続けたい。
私は、何を持ち帰る人なのだろう。
