「ちゃんとしていない気がした日」に考えたこと
昨日、いつもより少しだけ、
自分に優しくしてみました。
急いで返していたメッセージを、
ほんの少しだけ置いてみる。
「まだできる」と思っていた仕事を、
「今日はここまで」にしてみる。
それだけなのに──
不思議と、呼吸が深くなった気がしました。
でも同時に、
「ちゃんとしていない」
そんな気持ちにもなってしまったのです。
優しさは「気持ち」ではなく「技術」
今回読んだのは
『スタンフォード式 自分をいたわる人がうまくいく』という一冊です。
この本が扱っているのは、「優しさ」です。
ただし、それは私たちが普段イメージするような
“いい人でいること”ではありません。
ここで語られる優しさは、
ストレスを軽減し、パフォーマンスを高めるための「技術」。
つまり──
優しさとは、
性格ではなくスキルであり、
後から身につけることができるものだと定義されています。
なぜ私たちは疲れ続けるのか
本書の前半では、まず
「なぜこんなに疲れてしまうのか」が丁寧に分解されています。
現代の私たちは、
終わらない通知や絶え間ない比較、
そして「もっとできるはず」という自己評価の中で生きています。
その結果、
意識がずっと外側に向き続けるのです。
外側に意識が向き続けると、
自分の感覚はどんどん鈍くなっていくもの。
すると、
「何がしたいのか」ではなく
「どう見られるか」で動くようになる。
これが、疲れの正体だったのではないか。
そう考えると、
自分の内側よりも、外側に引っ張られ続けることで、
「自分は何を感じているのか」
「何を大切にしたいのか」
という軸が、見えにくくなっていくのです。
この状態は、たとえるなら
ブレーキとアクセルを同時に踏んでいるようなもの。
進もうとしているのに、
同時に自分を止めている。
だから、前に進んでいるはずなのに、
どこかずっと疲れているのです。
スタンフォード大学で研究されている「思いやり」
この本の背景には、
スタンフォード大学の研究があります。
CCARE(思いやりと利他性の研究・教育センター)
the Center for Compassion and Altruism Research and Education
ここでは、
思いやり(コンパッション)が人の脳や行動にどんな影響を与えるのかが、
科学的に研究されているそうです。
興味深いのは、
優しさは「気質」ではなく「鍛えられるスキル」
だという点です。
実際に、トレーニングによって
・ストレス反応が和らぐ
・安心感が高まる
・行動が安定する
といった変化が確認されています。
つまり優しさとは、
気分ではなく、再現可能な「技術」なのです。
コンパッションとセルフ・コンパッション
ここで重要になるのが
「コンパッション」という概念です。
コンパッションとは、
苦しみに気づき、それを軽くするための行動を選ぶこと。
単に「わかる」では終わらない。
「どう動くか」まで含めて、コンパッションです。
そして、それを自分に向けたものが
セルフ・コンパッションです。
・苦しみに気づく
・否定せず受け止める
・小さくケアする行動を選ぶ
この流れを、自分自身に対して行う。
つまり、
自分を甘やかすことではなく、
自分を立て直すための技術なのです。
優しさのつもりで、自分を削っていた
ここまで読んで、
ひとつの違和感に気づきました。
もしかすると私は、
優しさのつもりで、自分を削っていたのではないか、と。
頼まれたら断らない。
迷惑をかけないようにする。
期待に応えようとする。
それは一見、正しいことのように思えますよね。
でも──
それを続けた先にあるのは、
消耗です。
本書でははっきりと、
優しさと自己犠牲は別物である、
と語られています。
回復することも「ちゃんと」である
そして、もうひとつ。
昨日感じた、あの違和感。
「ちゃんとしていない気がした」
というあの感覚の正体が、少しだけ見えた気がしました。
それは、
これまでの“ちゃんと”の定義から外れた
というだけだったのかもしれません。
こうも思ったのです。
もしかすると私たちは、
「軸がないから疲れる」のではなく、
「軸を感じられない状態にあるだけ」なのかもしれない、と。
だとしたら──
自分に優しくするという行為は、
「軸をつくること」ではなく、
「軸を思い出すこと」なのだと思います。
止まること。
休むこと。
少しだけ、自分を優先すること。
それらはすべて、
自分の内側の声を、もう一度聞くための時間でした。
あのとき感じた、
「ちゃんとしていない気がした」という違和感。
それは、間違っていたのではなく、
これまでの基準から外れただけだったのかもしれません。
もし今日、ほんの少しだけでも。
自分にとっての「ちゃんと」を、
ひとつ手放せるとしたら。
あなたは、何をやめますか?
