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考えすぎて動けない日に、筋肉の話をしよう

読書会で、
ある方がこんな言葉を話してくれました。

「歳を取ったら、体力の温存は老化につながる」

その瞬間、わたしは妙に黙り込んでしまいました。
…図星だったからです。

疲れないように、傷つかないように、無理しないように生きる。
それ自体は悪いことではありません。

でも気づくと、
「消耗しないこと」を優先するあまり、

「生きている実感」まで、
少しずつ薄くなっている気がする。

最近のわたし自身、
考えれば考えるほど、
身体が動かなくなる感覚があります。

情報を集め、比較し、分析する。
でも、頭の中だけで人生を処理していると、
少しずつ世界との距離が遠くなるような気がしてしまう。

そんなときに出会ったのが、
『筋肉が全て』という一冊でした。

タイトルだけ見ると、
筋トレ本に見えるかもしれません。

でも、わたしにはこの本が
「どう鍛えるか」ではなく、
「人は何によって世界と繋がっているのか」を
問いかけているように思えたのです。

『筋肉が全て』は、「健康本」ではなかった

今回読んだのは、
ガブリエル・ライオン氏の
『筋肉が全て』です。

この本は、
健康やダイエットを語りながら、
その奥で、かなり根本的なことを言っています。

人間を支えているのは、
意志や根性だけではない。

身体そのものが、
生きる力を左右しているのだ、と。

問題は、
体重ではなく筋肉だった。

わたしたちは、ずっと
脂肪やカロリー、食欲を
「減らすこと」ばかり考えてきました。

でもこの本は、
真逆の方向を向いています。

まず増やせ、と言うのです。
筋肉を、回復力を、代謝を、生きる力を。

現代は、何かを削ることで人生を整えようと考えます。

でも、本当に人を支えるのは
「減らしたもの」ではなく
「育てたもの」なのかもしれません。

筋肉は、その象徴のように見えました。


著者は、
筋肉を単なる「運動器官」としてではなく、
「長寿のために働く臓器」
として捉えています。

筋肉量が落ちると、
代謝だけでなく、
免疫機能や認知機能にも影響が出る。

逆に、
筋力トレーニングによって筋肉が刺激されると、
マイオカインという物質が分泌され、
炎症を抑えたり、身体全体の働きを整えたりする。

つまり筋肉は、
見た目の問題ではなく、
「生きる機能そのもの」
に関わっているのです。

この視点は、
わたしにとってかなり新鮮でした。


人は、「使った可能性」でできていく


筋肉って、本当に不思議で、
使わないと減るけれど、使えば何歳からでも応えてくれる。

ここに、人間そのものが表れている気がしました。

人は、使った可能性だけが残る。
逆に言えば、使わなかった能力は少しずつ眠っていくのです。

これは筋肉だけではありません。

踏み込む力も、
人に会いに行く力も、
「もう一回やってみるか」と思う力も、
使わなければ少しずつ弱っていきます。

だから筋トレって、
単にダンベルを持ち上げることではなく、
「未来の自分」を少しずつ選び直している行為なのだと思います。


老化とは、「回復をやめること」なのかもしれない

本の中では「老化は30代から始まる」という話も出てきます。

最初は少し怖い言葉に感じましたが、
著者は絶望を語っているわけではありませんでした。

「始めるのに遅すぎることはない」と、何度も語りかけてくれます。

ここでいう老化とは、単なる年齢の問題ではないのでしょう。

人は、刺激への応答をやめると老いる。
驚かなくなり、挑戦しなくなり、回復しなくなる。
筋肉は、その事実を身体レベルで見せてくれます。

負荷をかける。
壊れる。
回復する。
少し強くなる。

これって、
人生そのものなんですよね。

苦しみが人を壊すわけじゃない。

“回復できない状態”が、少しずつ人を老けさせる。

だから本当に必要なのは、
無傷で生きることではなく、
回復できる身体を持つことなのだと思います。

メンタルは、「脳」だけでできていない

この本を読んで、一番ハッとしたのは、

メンタルは、
「脳」だけでできているわけじゃない、
という感覚でした。

現代人は、不安を「考え方」の問題として扱いすぎているのではないでしょうか。

もっと前向きに。
もっと自己肯定感を高く。
もっと効率的に。

でも、わたし自身、
ずっとSNSを見続けて、頭だけが疲れた日は、

世界との距離が、急に遠くなる感覚があります。

逆に、
少し歩いた日。
身体を動かした日。
ちゃんと眠れた日。

それだけで、
「まだ大丈夫かもしれない」
と思えたりする。

つまり、
意識って、脳だけで作られているわけじゃない。

身体ごと、世界を感じている。

だから最近の筋トレブームって、
単なる健康ブームではない気がしています。

みんな、
「ちゃんと生きている感覚」
を取り戻したいのかもしれない。

重さを感じたい。
踏ん張りたい。

「まだ世界に作用できる」と思い出したい。

筋トレ後に、少し前向きになれるのは、
単なる気分の問題ではなくて

「わたしはまだ動ける」

という感覚が、身体から戻ってくるからではないでしょうか。

筋肉とは、単なる肉体ではなく
「世界との接続装置」なのだと思います。

もし今、考えることばかり増えて動けなくなっているなら、
必要なのは新しい思考法ではなく
「身体を使って生き直すこと」なのかもしれません。

まずは、少し歩く。
ちゃんと眠る。
重いものを持つ。

それだけでも、
人は少しずつ、
「生きている感覚」を
取り戻していけるのだと思います。


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