この人がいる世界、なくならないでほしい
最近、
「この人から買いたい」
と思うことが増えました。
安いからじゃない。
便利だからでもない。
気づくと、同じカフェに通っている。
同じ人のnoteを読んでいる。
本屋も、“あの店員さん”がいるレジに並んでしまう。
昔のわたしは、これを単なる「好み」だと思っていました。
でも最近、少し違う気がしています。
人は、モノを買っているというより、
「この人がいる世界、なくならないでほしい」
に、お金を払っているのかもしれない。
そんなことを考えさせられたのが、
『推しビジネス!』という一冊でした。
『推しビジネス!』は、「売り方」の本ではなかった
今回読んだのは、
『推しビジネス! 顧客をファンに変える「感情経済」の経営戦略』という本です。
タイトルだけを見ると、SNS時代のマーケティング論や、ファンづくりの本に見えるかもしれません。
でも、読みながら、わたしの中に残り続けていたのは、もっと別の問いでした。
人は、なぜそこまで、誰かを応援したくなるのか。
なぜ、時間もお金も使うのか。
著者は、ライブ配信やリアル店舗、コミュニティ運営の現場を通して、「人の心が動いた瞬間に、経済は動き始める」と語ります。
それが、この本でいう「感情経済」という考え方でした。
「顧客満足」から「顧客熱狂」へ。
ただ満足してもらうだけではなく、「またこの人から買いたい」「この場所を応援したい」と思ってもらえるか。
そこが、これからの時代の分岐点だと語られていました。
人は、「機能」ではなく「誰の世界を信じたいか」で動いている
本の中では、価格や機能ではなく、
「感情」が経済を動かす時代だと語られます。
でも、わたしが惹かれたのは、もっと小さな場面でした。
たとえば、
カフェでいつも頼むメニューを、
店員さんが先に覚えてくれていたこと。
美容室で、髪型の話より先に、
「前回、出張って言ってましたよね」と、覚えてくれていたこと。
そういう瞬間に、わたしたちは、
“サービス”以上の何かを受け取っている。
応援したいから、その人の商品を選ぶ。
内容を見る前に、新刊を予約してしまう。
昔のわたしは、消費って、もっと合理的なものだと思っていました。
でも実際は違った。
人は、機能だけでは動かない。
むしろ、「この人が見ている景色を、わたしも見てみたい」で、動いているのかもしれません。
「推し」は、未来への参加なのかもしれない
アイドルでも、ブランドでも、経営者でも、作家でも同じ。
人は、その存在の向こう側にある“世界観”に惹かれている。
じゃあ、わたしたちは
本当に“人”を推しているんだろうか。
それとも、「そうありたい自分」を推しているんだろうか。
その答えは、まだわかりません。
でも、
「この人がいる世界、なくならないでほしい」
と思う感情は、
確かに存在していると思うのです。
「感情経済」の時代は、少し危うい
この本の面白さは、
単なる「推し礼賛」で終わっていないところにもあります。
感情が価値になる。
それは、すごく希望のある話です。
小さなお店でも、個人でも、誰かの心を動かせれば、選ばれる可能性がある。
でも同時に、少し怖さもある。
人は、正しいものより、“感情を動かしてくれるもの”に集まりやすいからです。
だからこそ、これからの時代に必要なのは、影響力の強さだけじゃない。
「どんな孤独を救うのか」なのかもしれません。
人の不安を煽ることで、熱狂を集めることもできる。
でも、安心して戻ってこられる場所を作ることもできる。
同じ“感情を動かす”でも、その先にある世界は、まったく違う。
だから、これからは、
何を売るか以上に、
「どんな世界を増やしたいのか」が、
問われていく気がしています。
人は、「ここにいていい」を確認したくて集まっている
この本では、コミュニティは、
単なる集客ではなく、“資産”だと語られます。
その言葉を読んだとき、
わたしは、最近の読書会のことを思い出していました。
本の話をしているはずなのに、気づくと、人生の話になっている。
「最近、少し疲れていて」
「なんだか立ち止まっていて」
そんな言葉が、ぽつりぽつりと出てくる。
たぶん人は、知識だけを求めて集まっているわけじゃない。
「ここにいていい」を確認したくて、集まっている。
だから、
“推し”がここまで大きな存在になったのは、
現代人が弱くなったからではなく、
孤独を抱えたまま、
それでも誰かを信じたかったからなのかもしれません。
わたしたちは、どんな世界を推して生きているんだろう
この本の中に、印象的な言葉がありました。
“推される人になるには、まず誰かを推せる人になること”
これ、すごく本質だと思ったんです。
結局、人は、自分を見つけてくれた人を好きになる。
努力を見つけてくれた人。
名前を覚えてくれた人。
ちゃんと「ありがとう」を返してくれた人。
そういう人を、応援したくなる。
そう考えると、
“推し活”って、消費というより、
祈りに近いのかもしれません。
