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ジェンダー史を読んだら、普通が少し怖くなった

「男だから」
「女だから」

そんな言葉を、わたしたちは自然に受け取って生きています。

料理が得意なほうがいい。
男は弱音を吐かないほうがいい。
母親なんだから。
一家の大黒柱なんだから。

でも、ある本を読んで、少し怖くなったのです。

もしかすると、
わたしたちが“自然”だと思っているものの多くは、
最初から自然だったわけではないのかもしれない、と。

『はじめての西洋ジェンダー史』は、「当たり前」の歴史を辿る本だった

今回読んだのは、
『はじめての西洋ジェンダー史』という本です。

この本は、西洋の歴史の中で、
「男らしさ」「女らしさ」が、
どのように作られてきたのかを辿っていく一冊です。

ただ、読んでいて面白かったのは、
単なるジェンダー論では終わらないこと。

むしろ、読み進めるほどに、
「そもそも、“男らしさ”“女らしさ”とは、誰が決めたのか?」
という問いが、私たちに返ってくるのです。

本書では、
家族史、女性史、男性史、軍事史。
さまざまな角度から、ジェンダーの歴史が描かれています。

そこで見えてくるのは、
“性差”そのものより、
社会がどんな秩序を望んだかによって、
役割が作られてきた、という歴史でした。

「普通」は、いつも後から作られる

特に印象的だったのは、家族の話です。

わたしたちは、
「父は働き、母は家庭を守る」という形を、
どこか“昔から自然にあったもの”のように感じています。

でも、本書によると、
そうした近代家族モデルは、
産業革命以降に強く形づくられていったものなのだそうです。

工場労働が広がり、家と職場が分かれていく。
すると、男性は外で働き、女性は家庭を守る、という役割分担が、
“理想の家族”として語られるようになっていった。

つまり、「性別」が先にあったのではなく、
社会の仕組みが変わったことで、
“男らしさ”“女らしさ”も再設計されていった、ということ。

ここを読んで、
わたしは怖く感じたのです。

私たちは、「自然だから従っている」のではない。

多くの場合、“何度も見せられたもの”を、
自然だと思い込んでいるのかもしれない。

「普通」は、空気のように存在しています。

だから、それが“誰かによって作られた”と気づいた瞬間、
少し怖い。

でも同時に、少しだけ自由になれる気もしたのです。


「男らしさ」もまた、社会が作った役割だった

この本は、“女性の歴史”だけを書いているわけではありません。
むしろ、かなり深く、「男性性」についても描かれています。

戦争。国家。労働。競争。

近代社会では、
「強く、理性的で、戦える男性」
という理想像が求められていきました。

男は泣くな。
弱音を吐くな。
家族を養え。

そういう価値観は、
個人の性格ではなく、
“社会が必要とした男性像”
でもあったのです。

ここを読んでいて、
ジェンダーの問題は、
「女性が抑圧されてきた」
という話だけではないのだと思いました。

男性もまた、“こうあるべき”に縛られてきた。
この本は、そのことも丁寧に描いているのです。

人は、自由になりたいのに、また新しい「型」を作る

この本を読んでいて、
一番不思議だったのは、
人間そのものです。

人は、役割から自由になりたい。
でも同時に、役割がないと不安になる。

だから時代が変わるたびに、
古い価値観を壊しながら、
また新しい“理想像”を作っていく。

今も、それは続いている気がします。

SNSを見ていると、

仕事も家庭も完璧な人。
丁寧に暮らす人。
いつも前向きな人。

そんな新しい“正しさ”が、次々に生まれています。

昔は共同体が、「こうあるべき」を作った。

今は、アルゴリズムが、
“理想の生き方”を学習させている、ではないでしょうか。

自由になろうとしているのに、
また別の「こうあるべき」が増えていく。

その姿は、
昔のジェンダー規範と、
どこか似ているようにも感じました。

歴史を知ると、「普通」が少し揺らぎ始める

この本は、
ジェンダーについて学ぶ本でありながら、

「人は、どうやって“普通”を作るのか」
を考える本でもありました。

歴史を知ると、今の常識が、絶対ではないとわかります。
そして、絶対ではないとわかると、
少しだけ呼吸がしやすくなる。

「男だから」
「女だから」

その言葉に、
安心する人もいる。

でも、苦しくなる人もいる。

だから大切なのは、
どちらが正しいかを決めることより、

「わたしはいま、どんな役割の中で生きているんだろう」と、
一度立ち止まって考えてみることなのかもしれません。

「男だから」
「女だから」

そう言われる前に、

わたしたちは、そもそも、
“誰の期待を生きているのだろう。”

この本は、そんな問いを、わたしたちに返してくる本でした。


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