【二十四節気/夏至】一年でいちばん長い昼に、光を見る。夏至の色と、日本人が「白」に込めてきたこと
二十四節気 ―夏至(げし)― 2026年6月21日(日)〜7月6日頃
一年でいちばん、昼が長い日です。
夏至——太陽が最も高く昇り、地平線に沈む時刻が最も遅い日。
暦便覧には「陽熱至極しまた、日の長きのいたりなるを以てなり」と記されています。光が、極まる日です。
2026年の夏至は6月21日。
日本列島がまだ梅雨のただ中にある頃、暦の上では夏がひとつの頂点を迎えます。空は曇っていても、雨が降っていても、太陽はこの日に最も長く天空を渡っています。見えない場所で、光は極まっている。
この節気には、もうひとつ大切な日があります。6月30日の「夏越の祓(なごしのはらえ)」です。
一年の前半に積み重なった穢れを祓い、残りの半年の無病息災を祈る神事。全国の神社で茅の輪くぐりが行われるこの日は、暮らしと信仰が最も近づく夏至の頃の節目です。
白という色の、奥深さ
夏至の色を語るとき、まず取り上げたいのが「白」です。
日本の伝統色において、白は単純な色ではありません。素材によって、光の当たり方によって、白にはいくつもの顔があります。
白橡(しろつるばみ)

白橡(しろつるばみ)は、クヌギやナラの実(どんぐり)の殻を煎じた汁で染めた、わずかに黄みを帯びた白色です。
「橡(つるばみ)」は黒橡・黄橡・白橡と深さによって呼び名が変わります。白橡は最も淡い段階の染めで、白と言いながらも確かに色が宿っている——その曖昧な美しさが、日本の美意識の核心に触れます。
夏至の頃の空、雨雲が薄くなった瞬間の白い光。あの色に近いのが、この白橡かもしれません。
月白(つきしろ)

月白(つきしろ)は、月が昇る前の、東の空が薄く青みを帯びる現象——その空の色です。
白に、かすかな青が混じっている。夏至は昼が最も長いということは、夜が最も短いということでもあります。
短夜のわずかな闇の中に、月白という色の時間がある——そう思うと、夏至の夜はより豊かに感じられます。
夏至の青——水と空の色
夏至の頃には、青の系統の色も美しく映えます。
水色(みずいろ)

水色(みずいろ)は、澄んだ水を透かして見たような淡い青。
「水色」という言葉自体は現代でも使われていますが、伝統色としての水色は、もっと透明で涼やかな印象を持ちます。
夏至を過ぎ、梅雨が明けた後の透き通った空——それが水色の原点です。
薄藍(うすあい)

薄藍(うすあい)は、藍染めの最も薄い段階の青。
藍は染めを重ねるほど色が深くなっていきますが、一回か二回しか染めていない薄藍には、青の始まりのような清潔さがあります。
夏至の夜明け、空が白むより少し前の色に近い青です。
花色(はないろ)

花色(はないろ)は、露草の花から取った青——
「花」とだけ言えば露草の花を指した時代があったほど、この青はかつての日本人に親しまれていた色です。
梅雨の隙間に咲く露草の、一日しか咲かない鮮やかな青。朝に開いて昼には閉じる、その儚さも含めて、夏至の頃の青にふさわしい色です。
夏越の祓と、茅の輪の色
6月30日の夏越の祓に欠かせないのが、茅の輪(ちのわ)です。
茅(ちがや)という草で編まれた大きな輪をくぐることで、半年の穢れが祓われるとされています。
その茅の青みがかった緑色——これも夏至の色のひとつです。
青竹色(あおたけいろ)

青竹色(あおたけいろ)は、切りたての竹のような鮮やかな青みの緑。
緑の中でも特に清潔で、生命力の強さを感じさせます。茅の輪をくぐる際に感じる、草の青い匂い——その感覚に近い色です。
夏越の祓には、和菓子の「水無月(みなづき)」を食べる風習もあります。
白いういろうの上に小豆をのせたこの菓子の白——それもまた、夏至の色のひとつかもしれません。
光が「極まる」ということ

夏至という節気を、ただ「昼が長い日」として通り過ぎてしまうのは、もったいないことだと思います。
光が一年の頂点に達するこの日、日本人はそれをどう受け取ってきたか。
「陽熱至極」という言葉には、喜びと同時に、ここからは光が少しずつ短くなっていくという予感も込められています。極まることの、静かな寂しさ。
白橡という色の、白でありながら確かに色が宿っているその曖昧さ。月白という色の、昼でも夜でもない境界の空の色——夏至の伝統色には、「極まった場所の、静けさ」があります。
夏至の頃の、京都洛柿庵の作品たち
光が極まるこの季節に、白や淡い青を持つ作品が空間にやわらかな清潔さをもたらします。

山法師(やまぼうし)——初夏の白い花を描いたのれんや細タペは、白橡に近いやさしい白を持っています。
光を受けるとほのかに輝く、麻ならではの透け感が、夏至の光の質に重なります。

koyomiフレーム「カワセミ」——翡翠色(ひすいいろ)と花色の青が混ざり合うような、初夏の水辺の色を映した作品です。
夏至の頃の、水と光と空気を小さな作品の中に閉じ込めています。

絵麻(ema)の「青もみじ(小満)」——青もみじが持つ青みのある緑は、夏至の頃の木々の色と響き合います。
節気ごとに差し替えながら、光の変化を暮らしの中に映していく楽しみがあります。
白に名前をつけること

日本には「白」という一言では済まない、たくさんの白の名前があります。白橡・月白・胡粉色・素色・生成色・乳白色……。
それぞれが異なる素材から生まれ、異なる光の質を持っています。「白」をそこまで細かく見ていたということは、日本人が光そのものを、そこまで繊細に感じていたということでもあります。
夏至という、光が極まる日に、白という色の豊かさを思う。それもまた、「感性がひらく」ということの、一つの形です。
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