人参くんの嘆き ― 野菜たちの職場風景
人参。
栄養価の高いことでは、野菜界の中でもピーマンと双璧をなす。
人参の代名詞である「β-カロテン」は、体内でビタミンAに変わり、
視力維持・免疫力アップ・皮膚や粘膜の再生に欠かせない存在だ。
抗酸化パワーもすごい。
紫外線やストレスで増える活性酸素を抑え、肌の老化を防いでくれる。
そんな人参の日常を追ったらどうなるだろうか?
「カレーを作るって?!それは僕が必要だろう?
僕はアンサンブルの土台をしっかりと支える欠かせない存在だよ」
カレープロジェクトには一家言ある人参くんである。

ごぼうとパートナーを組む「きんぴらごぼう」も、彼の代表作のひとつだ。
「かなり前面に出て僕、活躍しているよな。みんな注目しているよ」
野菜炒めにおいては、彼のジェネラリストとしての適応性の高さを示す。
「周りと協調して、集団での強みを活かすキーとなる存在かな、僕は」
しかし、世間の評価は必ずしも彼の思い通りにはいかない。
栄養素の面でいえば、これだけの素養があるのに……。
カレーと言って、みんなが思い出すのは、
豚肉や牛肉はスターとして別格として、次に来るのはホクホクのジャガイモだろう。
このジャガイモ、プロジェクト外でも評価が高い。
ポテトのチーズ焼きは居酒屋業界でも高く評価されている。
さらに、彼はこども達からの支持も絶大だ。
フライドポテトの役割を務める彼に、太刀打ちできるものはいない。
きんぴらごぼうのパートナーであるごぼうは、
人の目など気にしない、我が道をいくタイプだ。
世間に迎合しようなんて考えてもいない。
頑固一徹である。
それでいて、きんぴら”ごぼう”と、料理の名前には、彼の名前が冠されている。
プロジェクトパートナーでありながら、人参の名前は冠されていない。
ジェネラリストとしての彼はどうだろう?
残念ながらそこも芳しくない。
野菜炒めには、ジェネラリストのプロ中のプロ、キャベツがいる。
彼は、さまざまな料理プロジェクトに顔を出し、
困ったときには決まってお呼びがかかる存在だ。
育ちが違うトンカツにさえ、友情参加を求められる始末である。

「な、なぜなんだ?
僕は素材として、その能力は他の野菜と比較しても頭ひとつ抜けているはずだ!」
「どこの現場でも、きちんと仕事をして、プロジェクトの土台を支えているはずだ!」
「なのに評価されないのはなぜなんだ?
なんで人気がないんだ?
こんなに人望がないのか?」
「ジャガイモがチヤホヤされて、
頑固一徹のごぼうが認められて、
キャベツが引っ張りだこだなんて……
世間はどうかしているよ」
そんな人参くんは、身を削って、サラダプロジェクトに向かいながら、
ひとりごちる。
「同期のピーマンよりは、人気があるはずだ……」
