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のるか反るか、は“運”の話じゃない

身体がまっすぐな人から、流れは動き出す

──「伸るか反るか」を、身体から考える

「のるか、そるか。」

成功するか。

失敗するか。

成否は天に任せて、

思い切ってやってみる。

そんな意味で使われる言葉です。

漢字では、

「伸るか反るか」

と書くことがあります。

この言葉の由来には、

矢づくりに関係するという説があります。

矢に使う竹には、

わずかな曲がりや癖があります。

それを熱し、

調整しながら、

一本の矢として整えていく。

伸びるのか。

反るのか。

そのわずかな違いが、

矢の飛び方にも影響する。

そんな矢づくりの世界から、

「伸るか反るか」という言葉が生まれた、

という説です。



矢は、放つ前から始まっている

矢は、

放ってから突然、

矢になるわけではありません。

素材を選ぶ。

癖を見る。

熱を加える。

曲がりを整える。

重さやバランスを調整する。

そして、

弓につがえ、

構え、

狙い、

放つ。

飛んでいる時間だけを見れば、

ほんの一瞬です。

でも、

その一瞬の前には、

長い準備があります。

僕は、

身体もよく似ていると思っています。



身体もまた、一本の「矢」

姿勢。

呼吸。

重心。

身体の使い方。

一見、

それほど大きな違いがないように見えても、

ほんの少し、

力が入りすぎている。

どこか一か所だけ、

流れが途切れている。

本人は、

まっすぐ立っているつもりなのに、

身体の中では、

力の方向がずれている。

そんなことがあります。

外から見た形だけでは、

わからない。

大切なのは、

身体の中で、

力がどこへ向かっているかです。



「伸びる」と「反る」は、まったく違う

ここは、

身体を見るうえでも、

とても大切だと思っています。

伸びることと、

反ることは、

同じではありません。

胸を張る。

背筋を伸ばす。

姿勢を良くする。

そう言われると、

多くの人は、

身体を外側へ張ろうとします。

胸を突き出す。

腰を反る。

背中を固める。

一見すると、

姿勢は良くなったように見える。

でも、

それは「伸びた」のではなく、

「反った」だけかもしれません。



僕が感じる、

本当の“伸び”は、

どこか一か所を、

強く引っ張ることではありません。

足元から頭まで、

身体の中に、

ひとつの方向が生まれていく。

背骨を無理に伸ばしているわけでもない。

胸を張っているわけでもない。

それでも、

身体全体が、

静かに長くなっていく。

そこに呼吸が重なると、

さらに、

身体の中のつながりが見えてきます。



試しに、

いま。

息をゆっくり吐きながら、

背骨を、

無理に伸ばそうとせず、

頭と足元が、

少しずつ遠ざかっていくような感覚を、

待ってみてください。

反らずに。

頑張らずに。

ただ、

上下がつながっていくのを感じる。

人によっては、

呼吸の入り方が変わったり、

視線が楽になったり、

立ち方の感覚が変わったりするかもしれません。

変化を起こそうとする必要はありません。

何が起きるのかを、

ただ観てみる。

それだけで十分です。



「運」は、運ばれていく

「運」という字を見ると、

僕は、

少し面白いことを考えます。

運ぶ。

運動。

運。

もちろん、

これらの言葉が、

同じ意味だという話ではありません。

でも、

身体を長く見ていると、

人の流れと、

身体の動きは、

まったく無関係でもないように感じます。

どう立つのか。

どう歩くのか。

どう呼吸するのか。

どこで力み、

どこで力を抜くのか。

その小さな違いは、

その人の行動にも、

選択にも、

少しずつ現れていきます。

身体が変われば、

必ず運が良くなる。

そんな話ではありません。

ただ、

身体の状態が変われば、

見えるものや、

動き出すタイミング、

人との関わり方が、

変わることはあります。

その積み重ねによって、

結果として、

人生の流れが変わることもある。

僕は、

そんなふうに考えています。



放つ前から、未来は動いている

矢は、

放たれた瞬間だけで、

行き先が決まるわけではありません。

その前に、

どんな矢をつくったのか。

どう構えたのか。

どう狙ったのか。

どう弦を引いたのか。

そして、

どんな状態で、

手を離したのか。

放たれる前から、

すでに、

その先につながる条件は、

積み重なっています。

人も、

同じなのかもしれません。

未来は、

ある日突然、

目の前に現れるのではなく、

今日の姿勢。

今日の呼吸。

今日の選択。

そんな、

誰にも見えない小さなものから、

少しずつ動きはじめている。



まっすぐに伸びた矢が、

静かに放たれていくように。

身体も、

無理にまっすぐにする必要はありません。

反らせず。

固めず。

形だけを整えず。

自分の中にある方向を、

静かに見つけていく。

運は、待つだけのものではなく、
自分の身体とともに、
少しずつ運んでいくものでもある。

「伸るか、反るか。」

その違いは、

大きな決断の瞬間ではなく、

案外、

そのずっと前から、

身体の中に現れているのかもしれません。



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