「いただきます」の手前にあった、一年
「めっちゃ、ほくほく。もちもちしてる!」
そう言いながらごはんを頬張る息子の横で、私は去年の田んぼを思い出していました。
精米器の音を聞くたびに、あの田んぼの感触が、ふっとよみがえります。
これまでも、田植えや稲刈りに参加したことはありました。
けれど、どこか「体験した」という感覚のまま、終わっていました。
一度、最初から最後まで。
途中の手入れも含めて、ちゃんと自分たちの手で育ててみたい。
そう思った背景には、お米騒動をきっかけに、
当たり前にあるものを当たり前と思わなくなったこと、
そして、この時間を親子で経験してみたかった気持ちがありました。
田植え|土に足を入れた日
田植えの前には、オンラインでの座学が4回。
品種のこと、水の管理、田んぼの1年。
知識というより、田んぼと向き合うための、予習の時間でした。

迎えた田植え当日。
「サンダル持参」と案内にはあったけれど、私は裸足でじゃぼんと田んぼに入りました。
ひんやりした水と、やわらかな土。
アーシングが、気持ちいい!

農家さんに教えてもらいながら、苗を数本ずつ、指でつまんで植えていきます。
まっすぐ立てるだけなのに、意外と難しく、自然と無言になっていました。

気づけば田んぼに、きれいな(?)列ができていきます。
4家族で手分けして作業すると、思っていたより、ずっとあっという間。
家に帰ってからも、足の裏には、田んぼの感触が残っていました。
夏|見守る時間、手を入れる時間
田植えから2週間ほど経つと、苗はしっかりと根付いていました。
この状態を「活着(かっちゃく)」というそうです。

たいへんな水管理はすべて、ありがたいことに農家さんがやってくださいます。
次は、草取り作業。
6月に2回、田植えのときと同じように裸足で田んぼに入りました。
もう暑くなり始めていた時期で、正直、なかなか大変な作業でした。

それでも、顔を上げると、青い夏の空が広がっています。
田んぼを渡る風が心地よく、不思議と気分は清々しくなりました。
やっぱり、土を触るのって気持ちいい。
そんなことを、体で実感していました。

夏のあいだは、交代で田んぼの様子を見に行きました。
写真を撮っては送り合い、「順調そう」「だいぶ伸びてきたね」と、ホウレンソウのように近況を共有します。
9月には、ヒエ取り作業をしました。
ヒエは稲とよく似た雑草で、そのままにしておくと、養分や日光を奪ってしまうのだそうです。

大切に育てたお米がダメになってしまっては……と、真剣に一本一本、見分けながら抜いていきました。
稲刈り|黄金色の田んぼで
10月。田んぼは、神々しいほど黄金色になっていました。

いよいよ、稲刈り。
雨でリスケもありましたが、無事にこの日を迎えることができました。

農家さんにコツを教えてもらいながら、刈る組と、束ねる組に分かれて作業を進めます。

中腰の体勢は、なかなか身体にこたえます。
それでも、鎌で稲を刈り取るときの「バサっ」という音と、手に伝わる感触が心地よく、気づけば、その作業がやみつきになっていました。
一本、また一本。
春に植えた苗が、しっかりと実り、刈られていきます。
はさ掛けまで終えたとき、身体はくたくたでしたが、心は不思議と軽くなっていました。

達成感、という言葉がぴったりでした。
新米と食卓|「いただきます」の深さ
農家さんにもみ摺りの作業をしていただいたあと、新米が手元に届きました。

精米しても、ところどころにもみが混ざっているのは、手作業で育てたお米の証。
少し不揃いなところも、なんだか愛おしく感じました。

私たち4家族で育てたお米は、全部で50キロ。
ひと家族あたり、12.5キロになります。
手間暇を考えると、決して多くはない量。
それでも、この一膳の中には、田植えの泥の感触も、夏の青い空も、雨を気にした稲刈りの日も、1年分の思い出が詰まっています。

一膳のごはんの向こう側に、こんなにも長い時間があったこと。
そして、その時間を親子で一緒に味わえたことを、これからも忘れずに、感謝しながら、ごはんをいただこうと思います。
今年もまた、やりたいな^^
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