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不幸が駆け足でやってきた

不幸が駆け足でやってきた

「不幸は、足音がしない。気配を消して近づき、気づいた時にはもう、背後に立っている」そんな風に言われることがあるが、私の場合は違った。

私の元にやってきた不幸は、気配を消すどころか、全力で、しかもものすごい猛ダッシュで、文字通り「駆け足」でやってきたのだ。それは、ある月曜日の朝のことだった。最初の小さな躓きは、目覚まし時計が鳴らなかったことだ。いや、正確には私が無意識に止めたのだろう。飛び起きた時点で、家を出るべき時間の15分前。

ここから、ドミノ倒しのような不幸の連鎖が始まった。パニックになりながらトーストを焼き、口に咥えた瞬間に、今度は手が滑ってコーヒーを丸ごとひっくり返した。お気に入りの白いシャツの真ん中に、見事な茶色のシミが広がる。着替える時間はない。上着を無理やり羽織ってボタンを閉め、家を飛び出した。

「まだ間に合う」

そう自分に言い聞かせながら駅へ向かって走っていると、空からポツリと冷たいものが降ってきた。天気予報は晴れだったはずだ。しかし、私の頭上だけを狙い澄ましたかのように、突然のゲリラ豪雨。

傘など持っているはずもない。駅に着いた頃には、白いシャツのシミを隠すための上着まで、中途半端にびしょ濡れになっていた。最悪の気分で改札にスマートフォンをかざす。

しかし、画面は真っ暗なまま反応しない。充電を忘れていたのだ。財布はカバンの奥底。慌てて荷物をひっくり返している間に、乗るべき電車のドアが目の前で閉まった。プシューという間の抜けた音が、まるで私を嘲笑っているかのようだった。結局、会社には大遅刻。

上司に平謝りし、席に着いてパソコンを開いた瞬間、画面に「重大なエラー」の文字が表示され、昨日まで徹夜で仕上げたプレゼン資料がすべて消え去った。この間、わずか数時間の出来事である。

不幸というものは、決して順番待ちをしてくれない。一列に並んで一人ずつやってくるのではなく、示し合わせたかのように、全員で徒競走をして我が家に突っ込んでくる。疲れ果てて帰宅し、濡れた服を脱ぎ捨ててベッドに倒れ込んだとき、不思議とおかしさが込み上げてきた。

ここまで綺麗に、隙なく、全力疾走で不幸に畳み掛けられると、もはや見事としか言いようがない。神様が書いた、質の悪いコメディの台本に無理やり出演させられたような気分だった。

「駆け足でやってきた」

ということは、それだけ早く通り過ぎていったということでもある。そう思わなければやっていられない。

翌朝、恐る恐る目を覚ますと、窓の外は抜けるような青天だった。目覚まし時計はけたたましく鳴り、コーヒーは温かく、スマートフォンは充電満タン。どうやら、あの猛スピードの侵入者たちは、私の部屋を嵐のように荒らすだけ荒らして、次の街へと走り去っていったらしい。

足元に残されたのは、少しの片付けと、こうして笑い話にできるエッセイのネタだけだった。



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