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📝 短編エッセイ1時間後のタイムトラベラー』

スマホが、小さく震えて通知音を鳴らす。

画面を見ると、Instagramのアイコン。楽しみにしているお気に入りのアカウントの新着投稿だった。

「あ、更新された。ちょっとこれだけ見よう」

そう思ってアプリを開いたはずだった。本当に、その1枚の美しい写真と、短い文章を読むためだけだった。なのに、気がつくと時計の針は1時間を進めていた。私はベッドの上で、あるいはソファの隅で、ただひたすらに画面を上へとスクロールし続けていた。

おすすめに表示されるリール動画、誰かの旅行の写真、便利グッズの紹介、見知らぬ人の日常のライフハック……。はっと我に返ったとき、指先には軽い疲労感が残り、頭の中は出どころのわからない焦燥感で満ちている。

「ああ、またやってしまった。この1時間で、本が読めたのに。お風呂に早く入れればよかったのに」

押し寄せてくるのは、小さくて重たい自己嫌悪。でもね、声を大にして言いたいのです。──大丈夫、やってしまったのは、あなただけじゃありません。

今これを書いている私も、世界中の何千、何万という人も、今夜まったく同じタイムトラベルをしている最中です。私たちの意志が弱いわけでも、怠け者なわけでもない。

スマホの向こう側には、世界中の天才たちが「どうすればもっとスクロールしたくなるか」を24時間研究して作った、強力な磁場があるのだから、吸い込まれてしまうのは仕方のないことです。だから、1時間スクロールしてしまった自分を、どうか責めないであげてください。

「今日も世界中の天才たちの罠に、見事にはまっちゃったな」

と、ちょっと苦笑いして終わり。大切なのは、我に返ったその瞬間。スマホを裏返して、パタンと机に置いたとき、あなたはちゃんと自分の時間に帰ってこられています。

現代を生きる私たちは、みんな等しく迷子になりやすい。だからこそ、「わかる、私もそれやった!」と言い合えるだけで、今日一日の失敗が、ちょっとだけ愛嬌のあるものに変わる気がするのです。


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