📝 短編エッセイ『笑顔の反則技』
『笑顔の反則技』
待ち合わせは、いつもの場所。
案の定、彼女から「ごめん、ちょっと遅れる!」と連絡が入る。
普段なら「もう、またかよ」と少し尖った気持ちになるところなのに、なぜか今日は、イライラがやってこない。スマホを眺めたり、行き交う人波を眺めたり。彼女を待っているその時間すらも、なんだか楽しい。
「お待たせ!」
息を切らせて、全力の笑顔で駆け寄ってくる彼女。
その顔を見た瞬間、完全にノックアウトされてしまう。
「遅いよ」なんて、一言も口から出てこない。用意していたはずの小言も、突っ込みたい気持ちも、彼女の笑顔を見た瞬間に全部どこかへ吹き飛んでしまった。
笑顔の反則技には、どんな正論も敵わない。
バカだなあ、俺。こんな笑顔を見せられたら、もう何も言えるわけがないじゃないか。
でも、待っているあの時間も楽しかったのだから、すべて良しとしよう。
「行こうか」
そう言って歩き出す。
計画通りにいかないからこそ、愛おしい。そんな不完全なデートの始まりが、私はたまらなく好きなのです。

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