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【お題】このバイクに乗った少女の小説を書いてみてkindle出版向けてのプロット完成

 『逆光』── 夫が遺した手記と、一枚の写真


規模の目安
:KDP長編で読み応えを出すなら10万〜12万字。プロローグ+本編11章+エピローグの計13ブロック、本編1章あたり8千〜9千字前後で組むと収まります。

基本構造:現在(63歳、手記を読む妻)を額縁に、過去の年代記が流れる。各章は〔妻の当時の記憶=冷たさ〕→〔その夜の手記=正反対の真実と、不器用な自分への詫び〕の二重写し。同じ一日を、逆の温度で二度読ませます。真実の"型"は章ごとに散らして、読者に仕掛けを読み切らせません。

章立て(叩き台)

プロローグ|現在。四十九日の後、遺品からノートを見つける。最初のページに、忘れていた22歳の自分のバイク写真が挟まっている。読み始める。

第1章 出会い|〔記憶〕見知らぬ男から突然手紙が来て気味が悪かった/〔手記〕雑誌の写真に一目惚れ、写真家を訪ねて一枚をもらい、会う勇気が出ず手紙に逃げた。(文字で始まる恋)

第2章 結婚までの苦難|〔記憶〕プロポーズの言葉もなく、事務的に籍の話だけ/〔手記〕何百回練習しても言葉が出ず、指輪の金もなく別のものを用意していた。*苦難の中身は要決定(家の反対/夫側の事情/遠距離)

第3章 新婚・最初の喧嘩|〔記憶〕記念日を忘れる冷たさ/〔手記〕覚えていて内緒で何かしていた。(小さな真実の予告)

第4章 長男誕生の夜|〔記憶〕遅れて来て言葉もなく去った/〔手記〕仕事を片付け泥まみれで駆けつけ、妻の無事を見て廊下で泣いた。(犠牲・情熱型)

第5章 子育て・教育方針の対立|〔記憶〕子に厳しすぎ、味方してくれない/〔手記〕自分の父がそうだった。ここで夫を"話せない男"にした過去の傷を明かす。(傷型=人物が裏返る)

第6章 転勤・単身赴任|〔記憶〕家族より仕事を選んだ/〔手記〕妻も夫を、夫も妻の孤独を読み違えていた。(相互誤解型)

第7章 家計の危機・バイク売却|〔記憶〕思い出のバイクを勝手に売った/〔手記〕内緒で売り夜のバイトも増やした。「いつかまた、あの夕日の坂を二人で」。(犠牲型・最強の一発。中心章)

第8章 中年の危機・離婚寸前|〔記憶〕心が離れ、他に女がいるのではと疑った/〔手記〕真実は要決定(妻の親の借金を黙って肩代わり/自分の病の予兆を隠した、など)

第9章 妻の大病|〔記憶〕毎日来るが言葉少なにすぐ帰る/〔手記〕神社で自分の寿命を差し出すと祈った。滲んだ文字。

第10章 何でもない一日|妻が完全に忘れている、事件ですらない普通の日を、夫が宝物のように書いていた。大きな真実の連打の中で、この静かな一発が号泣の引き金になります。

第11章 夫の死|〔記憶〕最期の言葉すらそっけなかった/〔手記〕最後のページ=現在の病室。渡せなかった詫びと、生涯一番言いたかった一言。(手記を書き続けた理由=言えないから書いた、が明かされる)

エピローグ|号泣のあと、妻が坂へ。買い戻されていた一台、あるいは同型のバイクで夕日の坂を走る。冒頭の一枚の情景を、今度は63歳の彼女が。一人だが、約束は果たされる。


プロローグ

夫の椅子は、まだ夫のかたちにへこんでいた。

四十九日が過ぎても、その革の沈みだけは戻らなかった。彼女は毎朝そこを通り、毎晩そこを通った。座らないようにしていたわけではない。ただ、通り過ぎるたびに一度だけ目がそこへ落ちて、また前を向く。それを一日に何度も繰り返しているうちに、季節が変わっていた。

台所の水切りには、湯呑みが一つだけ伏せてある。二つ洗う手間がなくなったことに、彼女はまだ慣れない。慣れるとも思っていない。夕方になると、これまでなら聞こえていたはずの音が聞こえないので、家じゅうの時計の針が急に大きく鳴りはじめる。それだけのことで、日が暮れる。

遺品を片づけはじめたのは、誰かに急かされたからではなかった。息子夫婦は「まだいいよ」と言った。むしろ、そう言われたから始めたのかもしれない。まだいい、といつまでも言っていられるほど、この家は広くない。

夫の書斎は、生きていたときと同じままだった。無口な人だったから、部屋も無口だった。工具の箱、読みさしの文庫、老眼鏡。どれも触れば夫の手の位置にあって、彼女はいちいち息を止めた。

押し入れの奥の、段ボールの底に、それはあった。

大学ノートの束だった。輪ゴムがかかっている。輪ゴムは古くなって、指で触れるとぼろりと切れた。一冊を手に取って開くと、几帳面な字が並んでいた。右上に日付。行の頭がきれいに揃っている。あの、こちらが話しかけても新聞から顔を上げなかった人が、こんなに字を書く人だったのか。

一冊ではなかった。十冊、いや、もっとあった。日付は数十年ぶんにわたっていた。彼女はその場に座り込んだ。膝が畳につく音がやけに響いた。

なぜ、教えてくれなかったのだろう。

いちばん上のノートの、いちばん古い日付のものを膝にのせた。表紙をめくる。すると、ノートの間から一枚の写真が滑り出て、畳の上に落ちた。

拾い上げる。

古い写真だった。色が浅く、縁が少し反っている。若い女がバイクにまたがって、坂の上でこちらを見ていた。ヘルメットのゴーグルを額に押し上げ、風に髪を流して、笑っている。背後には夕日があった。桜が満開で、瓦屋根の家並みが坂の下へ折り重なり、そのずっと向こうに山の稜線が沈んでいた。光がすべてを橙に染めて、女の輪郭だけが、逆光の中で燃えるようにくっきりしていた。

誰だろう、と彼女は思った。

そう思ったことに、自分で驚いた。

これは私だ。二十二の、あの頃の私だ。頬の線も、笑うと右だけ深くなるえくぼも、間違いようがない。間違いようがないのに、彼女はこの写真を知らなかった。こんなふうに撮られた記憶がない。この坂で笑った覚えはある。けれど、そのとき誰かがカメラを構えていた覚えは、まるでなかった。

裏返した。日付も、名前もない。ただ、鉛筆でごく薄く、何かをこすったような跡だけがあった。読めなかった。

いつ、誰が、これを撮ったのか。

そして――なぜ夫が、四十年以上ものあいだ、この一枚を、いちばん古いノートのいちばん最初のページに、挟んでいたのか。

彼女は写真を膝に置き、ノートの最初の行に目を落とした。

夫の字だった。

《 この写真を、はじめて見た日のことを、書いておこうと思う。 》

――はじめて見た日。

彼女の指が、そこで止まった。この写真は私だ。私の写真を、この人は、はじめて見た日があったというのか。私より先に、この人がこれを見たというのか。

窓の外で、日が傾きはじめていた。橙の光が畳を這って、写真の中の夕日と、同じ色になった。

彼女はページをめくった。

つづく

#バイクに乗った少女



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